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組織改編(内部調整)

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

「……という訳です」

秋山は総理官邸に呼び出されて話された内容を、上長たちに伝えた。

「……まあ、意図は理解出来る。

 合理的な判断だと思う。

 それでも、私たちに何の相談も無く進められたのは、良い気分ではないですね」

人間そんなものだ。

自分たちの頭越しに物事を進められると、不快に思ってしまうのだ。


「それはそうとして、宇宙飛行士の取り合いになるのは今後避けられますね。

 まあ今も、正規の飛行士には選抜されなかった人の引受先や、これから正規の飛行士を目指す人の訓練場所となっているから、取り合いって事にはなっていませんがね。

 今後、独自有人宇宙飛行部門が強くなれば、きっとそうも言ってられなかったでしょう」

ISS部門の統括責任者がそう呟く。

飛行士という人的資源は調整出来ていたが、職員は正直取り合いとなっていた。

部門的にISS部門の方が優位なので、優秀な人材はそちらに栄転となる。

一方で、採用人数は有人宇宙飛行部門の方が多い為、若手はそちらで抱えてしまう。

やはり一本化した方が、何かと便利であろう。


「それで、我々の部門は?」

有翼宇宙船部門が口を挟む。

「君たちは近年飛行予定のスクラムジェット機の開発に専念して下さい。

 アメリカじゃなく、ヨーロッパの方が待ってますんで」

「それは極超音速旅客機部門で、我々みたいなリフティングボディとかとは違ってまして……」

「協力しましょう!

 まずは目の前の課題から一個ずつ解決していきましょうよ。

 大丈夫、見捨てませんから、まずは超高空、極超音速からで」

日本とヨーロッパ、あるいは日本とオーストラリアを結ぶ極超音速旅客機、そちらの開発も大詰めに来ている。

この極超音速機のエンジン、耐熱素材、飛行制御はやがて水平離陸型有翼宇宙機の開発にも役立つであろう事疑い無い。

焦る必要はない。

地道に開発をしていけば良いのだ。



各部門との話し合いの後は、有人宇宙飛行部門での会合となる。

最初、統廃合の話を聞いた時、やはりメンバーは愕然としていた。

だが評価された上での発展的解消と分かり、落ち着く。

落ち着いて上で皆が口にしたのは

「もう今まで見たいに、好き勝手な開発は出来なくなりますね」

「結構こだわって、色んな物を作って来たんですけどね」

「ある意味、総理案件って事で自由にやらせて貰えたのは有り難かったと思います」

という事であった。

散々無茶ブリはされたが、フリーハンドを与えられたに近く、楽しかったのだ。

相当ハードな期間もあったが、趣味を仕事にしていたような感じでもあり、苦にはならなかった。

それで空気が緩かった部分もあり、有翼宇宙機部門や月面自動車開発部門と合わせて「サークル活動」なんて他部門から揶揄されたりもしていた。


有人宇宙飛行部門を高評価していたのは、むしろ外国の方だったりする。

彼等は「緊張して仕事するだけが能ではない、楽しんで仕事を出来るのも良い事だ」「与えられた仕事をこなすのは当たり前、それを更に発展させる者は優秀、新しく価値を創造出来る者こそ讃えられるべき」という価値観を持っている。

兎角、成果よりも労働時間、副次的な発明よりも仕様書通りの製品、真面目に不真面目よりも徹底的に真面目、というのを評価しがちな日本の企業体質というのを馬鹿にしている部分もある。

……その割には、「よく分からんが凄い研究だ」というイグノーベル賞の常連の一角が日本であるのは面白いところである。

有人宇宙飛行部門が行って来た「何としても宇宙で湯舟を作るぞ!」とか「美味いもの食べたいから厨房と専用料理人を常駐させ、料理人が使うに足る新鮮な食品を現場で生産するぞ」とか「ただトレーニングするだけって味気ないから、娯楽の要素を取り入れるぞ」とか、そういうのを、思いの外高く評価している。

アメリカも最初は「それ、無駄だろ」と否定的なのだが、結果を見て「これは使える」と評価を改め、そして「こういう事を考え、実践する者たちは素晴らしい」と言うのだ。

だからこそ、自分たちの制御下に置く、言葉を変えれば

「俺たちにも一丁噛ませろ!」

となったのだ。


「という訳だから、予算の枠という枷こそ付けられるが、求められているのは今まで通りの自由な発想ですよ」

秋山が説明すると

「その予算が一番問題じゃないですか!」

と皆は、笑い声を立て口元は笑いながらも、目は全く笑ってない表情で返答した。

「そうだね、予算は大事だね」

秋山は皆をじっと見る。

そして一番肝心な話を切り出した。

「予算の関係、定員の関係もあって、我々の部門もリストラする事になります。

 このリストラは、言葉を変えただけの解雇ではないですからね。

 再構築という方です。

 ISSに関係する『きぼう』や輸送機部門と一緒になるのは、この中の3分の1だけです」

「残り3分の2は?」

「NASAとJAXAの合同研究部門が設立されるので、そちらに移ります。

 半数は日本での生活となりますが、残り半数は渡米してあっちで研究して貰いますので。

 良かったですねえ、アメリカだと予算が今の我々に比べても倍以上着きますからね!」


部門の皆は目を見合わせた。

ISS部門に転属となる3分の1、日本で細々と研究・開発をする3分の1、異国に行く3分の1、果たしてどれが当たりくじなのだろうか?

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