日米対立
この物語は、もしも
「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」
というシチュエーションでのシミュレーション小説です。
2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、
個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、
あくまでも架空の物語として読んで下さい。
第六次長期隊は全員が「こうのす」に移乗した。
これから約3ヶ月の宇宙滞在となる。
既に述べたように、特に目立った滞在テーマもない。
強いて言うなら、第七次隊からは半年滞在になるし、短期滞在隊もサイクルを早めて多数回滞在させる為、それに合わせた宇宙ステーション内の整理整頓が任務となろう。
第六次長期隊が今までとは違った点、それは最後に選出されたアメリカ人料理人と、他の5人が共に訓練をうけた事である。
従って、この長期滞在で仲を良くしていく必要があった。
だが宇宙滞在初日にして日米対立が起こる。
事の発端は、当直の飛行士が座る席に付けられた「艦長席 Captain」のプレートであった。
アメリカ人のノートン料理長は、
「オー!
艦長席ですか!
ワンダフル。
私も順番が来たらここに座るのですね。
そう、最高の艦長ジャン・リュック・ピ〇ード艦長のように」
と喜んでいた。
これに土壌農業モジュール担当のミッションスペシャリスト・飯田橋飛行士(某企業の農業担当者)が噛みついた。
「最高の艦長は、沖〇艦長だよ。
日本人としてそれは譲れないね」
まあ、この程度では喧嘩にはならない。
アメリカ人もスターブレーザーというアニメは知っているのだから。
問題は次である。
「しかし、アメリカ人なら先日実際に宇宙に行ったカ〇ク艦長かと思った。
ピ〇ード艦長の方を選ぶとは面白い」
それに対しノートン料理長は
「彼は独断専行が多いので。
ルールを無視するのは良くない事です」
そう言った為に、カ〇ク艦長派の水耕モジュール担当・白石飛行士を刺激してしまった。
なお白石飛行士は大学の技官で、若いが古典的なSF作品のマニアである。
「ああいう無茶があってこそ、宇宙の冒険ドラマが成立するんじゃないか?
自分からすれば、あのハゲ艦長は冷静過ぎて面白くない」
これにノートン料理長がカチンと来る。
髪の毛について言えば、彼の頭髪も……その……まあ、なんだ……。
「彼の偉大さを分からないのは幼稚だ。
彼は偉大な冒険家でもあるし、チャレンジ精神も持っている。
それと無謀で命令違反をするのとは話が違う。
そう言えば、確かに沖〇艦長は優れた艦長だと私も思う。
しかし彼の後継者は、敵を跡形も無く滅亡させた後に愛を語る若者だったな。
確か星間国家2つに、本国の承認も無いまま先制攻撃を仕掛けたよな。
そういう艦長だと困るのだよ」
(なんでこいつ、そんな事まで知っているんだ?)
「こうのす」船長の古関飛行士と副船長の森田飛行士が妙なところで感心する。
だがノートン料理長と白石飛行士の口論はヒートアップし、ついに
「どっちが宇宙の戦士として相応しいか、勝負だ!」
「良いだろう。
何で戦う?」
という事態に発展する。
「おいおい、待て!
喧嘩とかするなよ!」
そう止める森田副船長に、2人とも
「いや、喧嘩なんかしませんよ。
我々も大人ですからね」
「イエース。
チームワーク大事ネ。
でも、たまにはファイトするのも良い事デス」
と本気でないと話す。
船長も副船長も一安心。
これから長期滞在するのに、関係が悪くなったら困っていただろう。
どうやらじゃれ合いの延長線上であるようだし、大目に見るとするか。
もっとも
「男は拳で会話するもの」
「右の頬を叩かれたら、デンプシーロールでお返しシナサイ、と主は言われマシタ」
と物騒な事を言い合っているが。
「で、何で勝負するんだ?」
「剣でどうだ?」
「ほお。
僕は剣道習っていたんだ。
君はどうなんだ?
勝負になるかな?」
「フォースと共にあらん事を」
(お前、そんなもの持ち込んでいたのかよ!)
内心全員がツッコミを入れた、光る、ヴォンと音の鳴るプラスチックの玩具。
どうやらそれで戦うようだ。
「お前ら、あっちで戦え」
そうして軟式拡張モジュールの中に追いやられる2人。
そして決闘開始!
「暗黒面に堕ちた、私の剣をお前はかわせるか?」
「見える!
そこぉ!」
「フォーム2は剣技に特化したスタイル。
防ぎ切れるかな?」
「当たらなければどうと言う事はない」
お互い妙な事を叫び合っている。
第三者から見たら
「あれ、本物のビーム剣なら、既に致命傷だよな」
「防御も回避もボロボロじゃないか」
「攻撃の方もただ振り回すだけで、まるでなっていない」
「先読みどころか、当たりに行っているじゃないか」
「口ばっかりだな」
というお粗末な決闘であった。
「だったら貴方たちもやってみなさい!」
「そうデース。
無重力でソードバトル、とても難しいデース」
「……いや、我々は最初から戦う気無いから」
地に足が着いた戦いではない為、どうにも格好良くならないようだ。
それでも両者、思う存分チャンバラを楽しんだようで
「やるな」
「ユーもネ」
と妙な友情を芽生えさせて、一連の騒動は終わりを告げる。
どうもこいつら、肉体は言語、殴り愛、血反吐の付いた手で握手をする九州南方民族と同種なようだ。
その後夕食時に、再び「好きな宇宙戦士のキャラ」についての会話が行われた。
「カ〇ク艦長が好きでないのは分かったけど、あの耳長は?」
「オー!
ミスター・スポ〇クは大好きですよ。
常に沈着冷静で。
それと、ジャパンのスペースクルーザーの、あの青い矢印の服の、短髪で眉毛の無い技師長も大好きデス。
どんな時でも準備出来ている頼もしさと言ったら……」
「む!
『こんな事もあろうかと』
の素晴らしさを知っているとは、どうやら気が合いそうだな」
(さっきまで光る剣で戦い合っていた奴等がよく言うわ)
周囲はツッコム気にもなれなかった。
そんな中、古関船長は
(この事はなんか言わない方が良い気がする)
という秘密を抱え黙っていた。
それは
「僕の理想……ではなく好きで仕えてみたい艦長は、某ツインテールの電子の妖精さんなんだよなあ」
という事であった。
言えばまた変な盛り上がりになってしまい、そしてこう言われるだろう。
「バカばっか」と。




