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テレビチームの帰還

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

芸能人が宇宙ステーションに滞在している。

しかし、今までだったら必ず有った、ある事が行われない。

それは総理との通信である。

今までは、変わった事があれば必ず宇宙飛行士に労いの言葉を掛けていた。

慣れて来たからテレビ中継はされない。

その様子はJAXAや官邸からの配信動画で見られるだけとなっていた。

それでも今回、人気アイドル(ただしオッサン)だから注目度は高い。

テレビ中継でも視聴率を取れただろう。


「だから、人気取りだと言われるのが嫌だそうだ」

それが今回、総理との交信が無くなった理由である。

まあ実際、現状の地球の情勢で浮かれた姿は見せられないだろう。


「テレビ放送はもっと後になりますので、リアルタイムさはそこまで重要じゃないですけどね」

テレビマンたちはそう言っていた。

バラエティ番組は、放送時間の10倍以上の時間の収録映像を元に、使える映像を厳選し、放送倫理上問題無いか確認し、きちんと伝わるようにギリギリまで編集して、上の確認も得てから放送するそうだ。

「リアルタイムだから筋書きが無く、そのまま流す報道とは違って、我々はきちんとした編集をしているのです!」

そう胸を張るが

(それはそれでどうなのだろう?)

と疑問を感じる他のミッションスペシャリストたちであった。


「帰還後の記者会見も、会場が変更になるという通信が来ていました。

 回収後は現場スタッフに任せておけば良いそうですが、最初に予定されていたものとは違うから、そこは連絡しておいて欲しいとの事でした」

よく、総理大臣なんて誰がやっても同じと言われる。

しかし、やはり違いは出て来る。

こういう時に派手に持ち上げてくれる人もいれば、実務重視でいく人もいる。

どちらが良いとかではない。

分かっているのは、どっちであっても「パフォーマンスが過ぎる」とか「地味でアピール力が無い」とかと批判されるという事だ。


そんな中、アピール力では最強レベルのアイドル(オッサン)は「持っている」人である。

滞在最終日にそれは起こった。

「NASAからの緊急通信。

 えーと、え?

 ガンマ線バーストの検知?」

「こうのす」にはアメリカの観測モジュール「ホルス」が接続されている。

このモジュールには各種計測機器が地球や深宇宙を向いていた。


ガンマ線バーストという宇宙でも最強クラスのエネルギー放射現象。

それは中性子星同士の衝突で生じるとか、太陽よりも40倍以上の質量の恒星の最期・極超新星爆発によって生じるとか様々に言われている。

天球上のランダムな位置で一日に数回発生する現象だが、数秒から長くても数時間の事で、上手く記録が出来ていない。

今回の報告は長い方である。

「こうのす」は90分かけて地球を一周するが、これから観測可能な面に突入しようとしていた。

そこで急遽、アメリカの飛行士の専任である「ホルス」を起動し、現在居るメンバーで観測をして欲しいという事だ。

急を要する。

「すみません。

 セットアップを手伝って頂きたいのですが」

「喜んで!」

そのアイドルは歓喜していた。

こういうハプニングは大歓迎。

如何に重機を操縦し、農業に秀でた人であっても、流石にロボットアームの操縦とかはさせられない。

しかしモニター監視とか、記録機器の動作確認とかでして貰う事はある。

また、許可が無い限り入れない「ホルス」への立ち入りと、そのセットアップ作業も手伝う。

連絡が来て、10分もすれば観測可能エリアに到達してしまう。

作業可能な者は総出で、観測態勢を整えていた。

テレビディレクターの一人も、臨時で船長席に座り通信やレーダー監視を行っている。

もう一人のディレクターは、そう言った様子をカメラに収めていた。


「……なあ、俺たち何もしなくて良いのかな?」

他方、北海道ローカル組はやる事が無い。

猫の手も借りたい程の忙しさだが、本当に猫を使う事は無い。

何を仕出かすか読めず、かえって仕事を増やしてしまうからだ。

「珍しい天体現象の記録なんだって。

 俺たちにやれる事はねえな」

「そうか。

 あの人凄いな、そんなレアな現象に出会えるなんて。

 まあ、俺たちにやれる事は無いんだが」

「私、さっき何か手伝いましょうかって聞いて来たんですよ。

 そうしたら、帰る準備をきちんとしておいて下さいって言われました。

 本当に私たち、やれる事無いんですよ」

「ああいうのを持ってる人って言うんですね。

 まあ、俺たちにゃあ関係ねえけど」


こうして最後の1日は思いもかけない多忙な作業となってしまった。

その1日が終わり、テレビチームは帰還の為に宇宙船に乗り込む。

撮影用のテレビカメラから解放され、ホッと一息する「こうのす」の宇宙飛行士たち。


「総理大臣との交信が無くなって、仕事が減ったかと思ったら、まさかのガンマ線バーストとは」

「でも、間に合って記録が取れたから良かったですよ」

「あの人が来ると、珍しい深海魚が取れるとか、絶滅危惧種が発見されるとか、物凄い学術的に貴重な事が起こるって噂でして」

「持ってるとか持ってないとか、科学的には有り得ない話ではあるが。

 それにしても統計的には凄い事ですなあ」

そしてこうも願った。

「あのレベルの幸運が、自分たちにもこれから続きますように!」


そして去ったと同時に北海道チームは話題に上がらなくなってしまった……。

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― 新着の感想 ―
[一言] いゃあ、達■だったら……■也だったら…… え?マ□アナ? ……それもアリですな。
[良い点] やっぱ、"持ってる"人は違う [一言] 試されるなあ、案の定……
[良い点] 流石T○KI○……持ってるなぁ。
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