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テレビ番組チームの日々

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

東京キー局の方の番組は、休養日も打ち合わせを綿密に行い、翌日からの番組撮影に備えていた。

船長・副船長も呼ばれ、どういう事が出来るか、どういう事は今は無理なのかを確認する。

更に、芸能人がやるより先に、スタッフがまず実行してみて、それで判断をしていた。


「おい、見たか?」

北海道チームは、連れて来た芸能人が不満を漏らすのを撮影するだけだから、打ち合わせも何も無い。

やたら充実しているコーヒーを飲みながら、芸能人がボヤいた。

「テレビ番組っていうのは、ああやって作るんだよ。

 まずスタッフがやってみて、それで大丈夫だったらタレントにやらせるんだ!

 なんだよ、いきなりぶっつけ本番ってやり方は」

「他所は他所、うちはうち」

「同じやり方だったら、個性が無くなるでしょ!」

これでバッサリ切られて、この話題終わり。


翌日からキー局の方は、農場モジュールに入り浸る。

本広飛行士が心配した、鋭い質問とかはして来なかった。

「手伝わせて下さい。

 どんな事でもしますので」

そういうスタンスである。

バイオハザード対策の土壌室には入れられないので、本広飛行士が入室している間のモニタ監視をして貰う。

思った以上にロボット操作が出来るので、サポートもして貰う。

水耕モジュールの方では、収穫と保存作業をして貰う。


「おめえも手伝って来いよ」

北海道チームのディレクターが芸能人に言う。

「それ、予定に入っていたかよ?」

「入ってねえな」

「じゃあやらねえ……」

この芸能人も、単に怠けたいだけではなく、あちらの番組で綿密に打ち合わせて決めた中に、思いつきで入っていっても迷惑なだけだろうという思いがあった。

一番大きいのは、このディレクターのテキトーな指示には従いたくない、というものだったが。


空き時間、キー局の番組スタッフはトレーニングルームに入る。

短期滞在では深刻な筋力や骨密度低下は起こらない。

それでも予防の意味もあって、筋トレは生活スケジュールに組み込まれている。

この番組のスタッフは筋力キャラであり、スケジュール内ではトレーニングマシーンを嫌がる事なく思いっ切り使用する。

それに飽き足らず、エキスパンダー等の器具も使い、隙さえあれば何らかの筋トレを行っていた。


「おい、デブ。

 おめえも行って来いよ」

北海道チームではまたこんなやり取りが始まっていた。

「おめえ、宇宙来たらむくんで一層丸くなってるだろ。

 おめえも体動かして来いよ」

「スケジュールに入っているから、その時に行きますよ。

 で、そちらはどうするんですか?」

「俺もその時やるよ」

「だったらそれでいいんじゃないですか?」

「おめえは追加でやれって言ってんだよ」

筋トレしろと言ってるのではなく、その実は単なるイヤミであった。


キー局の方では、船外活動のレクチャーを受けていた。

地上でも訓練はしている。

しかし、やはり現場に来てみないと分からない事もある。

無重力状態での脱着は、地上では再現出来ないのだ。

芸能人たちの船外活動に先だって、やはりスタッフが先に予行演習をする。


「あれ、やらせろよ」

北海道チームの芸能人が絡み出す。

「明後日やるよ」

「そうか……」

「だけど、おめえと社長、どっちが出るか決めておけよ」

「は?」

「すみません、私も今聞いたんですけど、どういう事ですか?」

「宇宙遊泳するのは2人までだ」

「じゃあ丁度良いじゃないですか」

「誰が撮影するんだよ」

「3人にすれば良いでしょ」

「インストラクターとして、ここの飛行士が一人サポートに着く。

 それと、何か有った時の為に待機要員が必要。

 だから同時に宇宙に出られるお客さんは2人までなんだ」

「つーかさぁ、なんでそういう重要な話を、いつも来てから言うんだ?

 打ち上げ前に聞いても、まあおいおいと、で済ませてたじゃねえか」

「行く前に教えたらつまんねえからな」

「そういうやり方がおかしいって言ってんだよ」

宇宙に来てまで口喧嘩。

この辺り、他の面々は忙しいから無視していた。


「あー----暇だ。

 俺、なんで宇宙にまで来てるんだ?

 俺の愚痴やボヤきを見たいだけなら、地球に居ても良かったんじゃないのか?」

キー局の方が動き回っているのを見て、自分たちが何もする事なく、ただ宇宙ステーション内でプカプカ浮いているのに嫌気が差したようだ。

「じゃあ、動物観察でもしますか?」

「おめえ馬鹿か!

 ここは宇宙ステーションだ!

 外に動物なんか居るわけねえだろ」

「誰が外に居るって言ったよ。

 この宇宙ステーションには、地球観測モジュールが在るんだよ。

 それで地球を見下ろすんだ。

 宇宙ステーションは90分で地球を一周するから、どの大陸でも行き放題なんだ」

「……だったらわざわざ宇宙に来ないで、直接アフリカなり中米なりに行った方が良かったんじゃないですか?

 90分で地球一周なんて、じっくり観測出来ないじゃないですか」

だが、何にせよ手持ち無沙汰なのは確かである。

地球観測モジュールの使用について打診をしてみた。


「ダメでした」

地球観測モジュール(兼天体観測モジュール)「ホルス」はアメリカ所有のモジュールである。

JAXAの一存では使用出来ない。

アメリカに使用申請を出さないとならない。

「……そういうのは最初に調べておけよ」

北海道チームが宇宙でもいつも通りの醜態を晒し続ける中、キー局の方は着実に予定を実行し、収録を行っていくのであった。

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