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春節・宇宙で粽を食べよう

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

(ちまき)とは、もち米を笹の葉などで包み、蒸し上げたものを、葉を剥いて食べる料理である。

中国では春秋戦国時代の屈原の故事から、端午の節句に食べるものと言われている。

まあ由来については後代の作り話っぽいが、それでも節句の時に食べられる料理の1つではある。

節句は1月の「七草の節句」、3月の「桃の節句」、5月の「菖蒲の節句」(端午の節句)、7月の「笹の節句」(七夕)、そして9月の「菊の節句」(重陽の節句)であり、それぞれに食べる料理が決まっている。

七草の節句は七草粥。

桃の節句は菱餅。

菖蒲の節句は粽。

七夕節会には素麵。

そして菊の節句には菊酒であった。

日本では。


中国では旧正月の時も粽を食べる習慣がある。

そういう地方もある。

日本では、売れる為、春節の際は中華街で大々的に売られる。

そんな事もあり、南原厨師長も宇宙ステーションでの春節で、粽を作る事にした。


干し肉、干し椎茸、干しアワビなど、乾燥食材は餃子でも使えるし、あらゆる料理で共通して使用出来る為、持参したものをそのまま使用した。

もち米は、結構古くなっているが、ストックがある。

昨年の第二次長期隊の時、宇宙でも正月を祝えともち米も持たされたのだが、正直宇宙で餅つきとか正気の沙汰ではないので、加工済みの餅が使用された。


何故宇宙で餅つきが正気の沙汰ではないか?

臼と杵なんてデカい荷物を、重量制限・容量制限がある宇宙船に持ち込む意味が分からない。

正月以外使用する事も無いのだし。

次に、宇宙ステーションで使用している蒸し器はそれ程大きくは無い。

大量のもち米を蒸す事は出来ない。

少量ずつ蒸して、それを臼に移動していくと、最初の方に蒸したものはもう冷めてしまうだろう。

そして、重量級鈍器である杵を、無重力で扱うのは危険極まりない。

振り回されてしまうし、それで制御を失って計器にぶつけたら大変だ。

仮に足を固定して、杵を使ったとする。

強烈な叩き込みを、建物で言えば壁面に行う為、如何に強度計算をして作られていたとしても好ましくは無い。

そんなわけで、昨年も粽やおこわを作ったりはしたが、全部使い切る事も無く、まだ余っていた。

地球より乾燥しているし、低温の宇宙ステーションの倉庫では長持ちするが、それでももう古米になっている。

古古米にまでするのは、日本人としては忍び難い。

いくら待っても、自分以外にもち米を積極的に使う料理人は来ないだろう。

だったら使い切って、今後も必要なら補給して貰うとしよう。


こうしてもち米と具材は確保された。

笹の葉は?

竹の皮は?

そんなものは使わず、ラップで良い。

抗菌とかで昔の人は笹を使った可能性はある。

しかし、そもそもが無菌室の宇宙ステーションで調理し、長期保存やどこかに持って行く事もなく、その場で食べるのならあえて昔の方法にこだわる事もないだろう。

それにラップの方が、食材から出る水蒸気をしっかり閉じ込められる。

もち米を炊くのは炊飯器、食材と混ぜての最終調理はレンジでも出来る。


「という訳で、日本と中華圏の折衷。

 古来と近代の融合で作った粽です」

「日本でもよく売られているから粽を作りたかった。

 料理自体は古くからあるが、環境に合わせて近代の調理器具で作った、そういう訳ですね」

まあ、食えればそれで良いのだ。

味も細かい事は言わない。

美味しいという事さえ分かれば、それで問題無い。


「ご馳走様でした。

 粽とか、そんなに何個も食べるものじゃないですし、もう十分です」

「まあ、そう仰るとは分かっていました。

 明日はアレンジして出しますので、ご安心を」


というわけで翌日、中華おこわのおにぎりが昼食で提供された。

朝は普通の白飯、希望者はお粥である。

粽もおこわも、仕上げ以外は大して変わらない。

何かに包んで、水分多めでねっとりと仕上げたら粽になる。

包まず、少し固めにしたなら、おこわ=お強飯(こわめし)となる。

朝には既に炊飯器は白飯を炊いていた。

おこわは昨日の内に作られていたのだ。

正直、粘り気が多い粽の中身を、もう少しだけ加熱して水分を飛ばし、それをおにぎりして一晩置けば丁度良い塩梅になる。


「それより、この大根の漬物が美味い!」

「このおにぎりとの組み合わせが実に良い」

「これが和と中華の組み合わせってやつかな」

昨晩は、熱々の粽を少量食べた。

味も、口の中に拡がる匂いも鮮烈だ。

その他に水餃子も主食としてあった。

餃子入りのスープもあった。

中華風の酢漬け大根は出たが、塩味のポリポリ大根漬けは出る幕が無かった。

だが今の中華おこわのおにぎりは、冷めていて量も多い。

熱によって立ち上がる匂いも、出来たての個性的な味も薄れている。

どちらかというと、普段食べる淡泊な味わいに落ち着いて来た。

これとの組み合わせなら、塩味の大根が良いアクセントになる。


「いやあ、美味しかった。

 さて、仕事に戻ります」

「良かったです。

 では、自分も仕事に戻ります」

南原厨師長も、厨房モジュールに入って下準備を始める。

「えーと、今日も気合入った夕食ですか?」

「勿論!

 春節は大体7日間は続きますので」

そう、まだまだ終わらない。

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― 新着の感想 ―
[一言]  食べ物ネタが続いているので、フト思った。    南極料理人ならぬ宇宙料理人が、リクエストを出されて料理人として『燃える』料理とは何だろう?  ………  思いつかない^^;  発想の逆転を…
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