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宇宙ロボトニクス

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

日本人の宇宙への関心は、結構な比率でアニメからのものがある。

アニメとアメリカの宇宙を舞台にした映画やテレビドラマに興味を持つ者は多い。

実際に行く気はなくても、語る人は多い。


日本の宇宙のアニメの特徴に、ロボットものが多い事が挙げられる。

最近ではリメイクアニメで、旧作には無かった人が乗るロボットが登場したりもする。

現実の宇宙におけるロボットは、アームとか観測用の移動する箱のようなものが主体で、人型は現在使われていない。

「こうのす」にも多数のロボットが稼働しているが、それは外壁を移動して損傷を調べるものだったり、人が居ない部屋を巡回するものだったり、土壌及び水耕モジュールにおけるアシスタントだったりと専門化し、判断能力を持った作業機械に過ぎない。


さて、今回急遽短期滞在をする事になったのは、人間が搭乗するロボットの技術者である。

ロボット、と呼んで良いかは微妙だが、本人はロボットの技術者と言っている。

タイプとしては強酸性の血を持つ寄生型宇宙生物との戦いを描いた映画に出て来た、パワーローダーが近い。

現実の技術としては、足腰の弱った老人の歩行補助や、重いものを持つ際のパワーアシストユニットであろう。

つまりは作業用。

某アニメの巨大人型ロボットも、作業用のワーカーから発展したという設定である。

別アニメではそういう作業用巨大人型ロボットが普及した為、それを使った犯罪取り締まりを描いた。

ロボットの語源がチェコ語の「強制労働(ロボッタ)」であり、作業用から研究が始まるのは自然なところであろう。

宇宙ではロボットアームによる操作がほとんどだが、時に船外作業の宇宙飛行士の手作業も起こり得る。

モニター越しでなく、指先の微妙な感覚を使った作業。

その為の補助装置なのだが、装着者の意思に沿ってアシストするような判断能力が装置にも求められる。

これを地上ではなく、宇宙即ち無重力で検証してみたい。


繰り返しになるが、この短期滞在は急遽予定を変更して募集された。

この研究者は応じる事が出来る時間的な余裕はあったが、持ち込む機材は間に合っていなかった。

本来ならば大規模なフレームだったり、そのフレームの動作をモニタリングするカメラや分析装置も持って来たかった。

急遽だった為、手に装着して重いものを運搬する外骨格と、その記録に使用するノートパソコンだけを持って来た。

本格的なフレームや計測装置は、狭いジェミニ改の4人乗り仕様では搭載不可能という事情もあったが。


この外骨格は、腰に頑丈なベルトを巻き、そこからサスペンダー状の支柱を付け、そこにはめ込むという結構大がかりなものだ。

腕の力が増しても、骨の強度が増すわけではない。

関節の耐重性が上がるわけではない。

その辺りは外骨格で強化するわけである。

これは重力がある地上での使用時に生かさせる機能で、果たして無重力でも必要かどうか。

重いのを筋肉だけで持ち上げようとすると、関節が耐えられなかったり、骨が折れ曲がったり、肩を脱臼したり、ギックリ腰になってしまう。

宇宙の場合、最初からそこに浮いている為、持ち上げる際に起こるそういう怪我は無いだろう。

しかし、重いというのは質量があるという事だ。

質量が大きいものを動かすには力が必要。

動き出したそれを静止させるにも力が必要。

だからパワーサポートは必要だが、果たして外骨格はどうだろう?

有って良いだろうが、余りに物々しいと不便ではないだろうか?

この辺を検証する。


物は最終的には手が掴む。

これを行うロボットの把持部分の操作は、装着した人間の指が行う。

このロボットの「手」に当たる部分だが、持つ物の形状や重量によって形が変わる。

大きくて重い頑丈な鉄骨を持つ場合と、重いには重いが迂闊な場所を持つと故障させてしまう機械を運ぶ場合で、手の形状は異なった方が良い。

よって、手の部分はアタッチメントで取り換えられる。

「なるほど、ライダー〇ン、結城〇二方式ですな、流石はデスト〇ンの天才科学者」

「いや、スー〇ー1の方かもしれないですね。

 あれはそもそも宇宙開発用の改造人間ですから」

「宇宙用といえば、〇ォーゼもですね。

 あれもスイッチで腕とか足を取り換えてましたね」

おっさんトークが飛び交う。

「なるほど、身体能力を高める装置を高めると、ラ〇ダーに行き着いてしまうのか」

「平成の方のですね。

 昭和の方は肉体そのものを改造しているから、コンプライアンス的にちょっと……」

「ですが、アタッチメントとかファイブアームってのは昭和ですよね。

 おお、時代を先取りしていたって事ですね」


真面目ながら、やはり幼少期に見たものが何処かに残っていて、宇宙に来てそれが目覚めつつ科学者たちの見守る中、パワーサポートアームのテストが行われた。

これは船外作業の必要はない。

拡張与圧室の中で、取り外し保管してある実験ラックを持ってみる。

一通り、持って、振り回して、静止させてみて分かる事。

「人体への負担は無いですね。

 しかし、やっぱり重い物の方に体が振り回されてしまいます。

 慣性モーメントってやつですよ。

 重い物の方に体を動かされないよう、足の方をどうにかしないとなりませんね」

この辺は地上で想定済みだったようだ。

機材とも言えない、何やら色々と取り付けた作業靴に履き替えた。

爪先に鉄が入った頑丈な靴で、固定用の紐やら、粘着テープやら、色々と取り付けて実験を行う。

この分野、まだまだ研究が始まったばかりであった。

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