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病人発生??

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2022年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

第五次長期隊は、オッサンばかりとまでは言わないが、割と年齢がいった飛行士たちで構成されている。

大学でも助手から准教授になるのは、三十代以降の者がほとんどだ。

大学院の博士課程まで順調に終わって27歳。

大学に残って研究職に就くのは、その年齢以降となる。

そして第二次ベビーブーム世代が大学院を出た時、大学に助手から始めて残るのが、その人数の多さから大変であった。

定員は決まっている為、上の教授たちの退官待ちともなった。

その下の世代は、そこまで順番待ち、席が空くのを待つ状態ではないものの、やはり狭い枠を狙って研究員として三十代を迎えてしまう者も多数いる。

そして段々と、シャワーよりも湯舟が、段々温泉が気持ち良くなって来る。

そういう年代の日本人男性に、「こうのす」の住環境は合っている。


「こちら『こうのす』、本広飛行士が浴室で倒れました、送れ」

宇宙ステーションからそのような報告が届いた。

一瞬焦るのと、「のぼせたんだろ」という正常化バイアスが働く地上スタッフ。

万が一の事があるといけないので、「大丈夫だろう」という気分を押しやって、冷静に質問する。

『こちらつくば。

 事情を知らせていただきたし、送れ』

「こちら『こうのす』。

 本広飛行士が入浴し、1時間以上経っても出て来なかった。

 不審に思って中を見たら、ぐったりして反応が無かった。

 のぼせたと思ったのだが、回復が遅い。

 万が一の事を考え、意見を聞いた。

 送れ」

『こちらつくば。

 入浴中は濡らさないようバイタルセンサーを外してあるから、まずは着けて貰いたい。

 まずはそのデータを見てからとなる。

 送れ』

了解(アイ・コピー)

『あと、頭を揺さぶるのは問題外だが、とりあえず扇いでおけ、送れ』

了解(アイ・コピー)……」


頭を冷やしながら、外してあるバイタルセンサーを貼り付けていく。

地上スタッフは、宇宙飛行士用医務官(フライトサージオン)に送信されるデータを見てもらう。

フライトサージオンは難しい表情から一転、笑顔になるが、また真面目な表情に戻る。

『こちらフライトサージオンの狭間です。

 聞こえていますか?』

「こちら『こうのす』、聞こえています、送れ」

『宇宙ステーションでは対流が起こらないので、必死に扇いで下さい』

「こちら『こうのす』。

 要するに、のぼせていた、で良いのですか?

 送れ」

『いや、もう少し怖い熱中症です。

 状態としては軽いのですが、症状が結構出ています。

 それで冷やした方が良いのですが、頭の温度が下がっていない。

 つまりですね、冷気に触れて頭が冷やされるんですけど、対流が無いとずっと頭の所に熱気がある状態なんですよ。

 そして体全体が温まっているから、すぐには頭も体も冷えない。

 あと、多分ですけど体が熱い割に汗出てないでしょ?』

「こちら『こうのす』、汗は確かに少ないです、送れ」

『ちょっと脱水症状出てます。

 まだ深刻じゃないので、経口補水液飲ませて下さい。

 ただ、急に中から体を冷やさないように、キンキンに冷えたのはダメですよ』

了解(アイ・コピー)……」


その後、本広飛行士が回復したという報告が入り、地上も安堵する。

事情聴取をしてみると、衝撃の事実が明らかとなる。

彼はつい、真面目な人格の中の中二心を出してしまっていた。

簡易サウナ室を展開し、中を高温にする。

元々熱い湯、サウナが好きな人だったから、そこまでは良い。

ここで

「そういや、鉄仮面被って鎧着たた父親に反発したイギリス超人の仮面の奇行士が、

 サウナの中で逆立ち腕立て伏せをして特訓してたよな。

 普段なら絶対出来ないけど、無重力でなら出来るよな」

と、高温ミストの中で指立て伏せ紛いの事をしていたという。

適当なところで切り上げれば良かったものを、重力下では絶対に出来ない事が軽々と出来る事に調子に乗ってしまう。

そして、ただでさえ無重力で上下左右前後の感覚は無くなっているのに、さらにのぼせてしまって出口とか、緊急蒸気排出スイッチとか、SOSのボタンとかの位置を見失い、サウナ室の中でフワフワ漂ったままのぼせ続けてしまった。

簡易サウナ室だが、必要以上に高温にならないようリミッターが効いていた為、重篤な状態にはならなかったし、他の飛行士が目安となる時間を過ぎても一向に出て来ない事から、手順通り声掛け、ノックの後の大声での呼び掛け、緊急でのドア開放での中を確認という作業を行った。


『どうしてそんな事したんですか!?

 あれは超人が、内なる力を引き出す為にあえて自らをグロッキーにした特訓じゃないですか?』

「あれ、そうだっけ?

 パワーアップしたのは覚えてるんですけどね」

『あれは火事場のクソ力と同じで、追い込まれて発現する謎の力を……

 って、そんな細かい話はどうでも良いです。

 とにかく、サウナの中で運動とかしちゃダメです。

 運動はちゃんと、日々の生活の中にメニューとして組み込んでいますよね。

 筋トレをしっかりして下さい。

 未知なるパワーとか出すより、骨密度と筋繊維の劣化を防ぐ方に気を使って下さい』

「はい、すみませんでした。

 もう馬鹿な真似はしません……」


反省した本広飛行士であったが、当然これだけではすまされない。

彼の個人用アドレスに添付ファイル付きメールが着信する。

「これは……始末書?

 それと、もう二度とこんな事しませんという宣誓書。

 あと、始末書とは別にこういう症状になった事の報告書?」

病気とまでは言い切れないが、こういう症状を「出す」というのはレアケースなので、NASAにも報告する為に英語で詳細な説明を書かされたのだ。

ちょっとしたペナルティでもあった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ほうこうおんち様 いつも楽しく拝読しております<(_ _)>(*^-^*) 高温ミスと(←?)の中で指立て伏せ紛い・・・高温ミスト・・・でしょうか?<(_ _)>(*^-^*) [一…
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