女性飛行士たちの宇宙生活
この物語は、もしも
「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」
というシチュエーションでのシミュレーション小説です。
2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、
個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、
あくまでも架空の物語として読んで下さい。
今回の女性飛行士だけの短期滞在は、二週間程度である。
松本飛行士の宇宙医療の下調べは、正直おまけ的な任務である。
以前の農業ユニットで異常(生育障害)が起きている為、急いで調査する、といった差し迫った用事ではない。
折笠、為末両宇宙飛行士の訓練は、それなりにキツイが、「絶対にしないとならない《マスト》」な任務でもない。
故に、二週間の滞在期間、熱心に調査や訓練をしつつも、疲れないよう楽しむように宇宙生活を送っていた。
「風呂入る人!」
「はーい!」
「よし、先に入って。
私は外で野郎どもが覗かんよう見張ってる」
「了解っす、先輩!」
「……女子校って、あんなノリですか?」
「公立はあんな感じっぽいと聞く。
私立はもっとお嬢様っぽい……」
「それも男子の偏見ですよ。
全部ひとまとめにして分かったふりするのは、男子の悪い癖です」
「男子って……。
我々は結構なオッサンなのだが……」
こんな感じで打ち解けて来た。
アメリカの映画のように、男性と女性が……というのは、どうやら起こりそうにない。
まあ、トイレと個室内以外は監視モニターがあり、さらに宇宙滞在中の身体情報は記録されている中、アメリカ映画の死亡フラグ(特にホラー映画)を立てるような行為はする気になれないだろう。
「第1回!
宇宙バドミントン混合ダブルス!」
「ドンドンドン、パフパフ!」
「……なにそのノリ」
「いいから、あんたたちも盛り上がって!
この拡張与圧室の中央に張ったネットを超えてはいけません。
この外側の開いているところから、羽根を相手の後ろの壁、またはネットに当てたら得点。
ただ、有効範囲があって、その外側に着弾させたらアウトで相手の得点です」
「着弾って……」
「はい、先輩、質問っす!
ネットに当たったらどうしますか?」
「跳ね返って来たのを打ち返して良し。
ただし、同じ人が二回連続でシャトルを打ったら、ドリブルで反則、相手に1点」
「つまり、ネットに当ててしまった場合、パートナーがフォローしないと相手の得点って事か」
「その通り!
あとはバドミントンのルールと一緒って事で」
「よし、お前ら覚悟しろよ。
こっちが勝つ!
こっちは運動神経抜群のメスゴリラがパートナーだから……」
「今、何っつった?」
「先輩、やってしまえ!!」
「ギブ、ギブ! マジ強い、ヤバイ」
「さて、あっちは仲間割れしたから、こっちはチームワークでいくよ、モジャモジャ頭」
「ちょっと、その呼び方やめてくれませんか?」
「あー、仲良くやってるねえ」
「どこからあんな元気出て来るんだ?」
船長、副船長が競技場と化した拡張与圧室を眺めながら呟く。
「あそこの部屋、以前はプロレスやった人もいたそうで」
「まあ、やれん事は無いですな。
ん?
どこがマットですか?
カウントスリーはどうしたんですか?」
「3カウントピンフォールは無かったそうだ。
ギブアップオンリー」
「なんですか、そのストロングルールは……」
「空中殺法は自由自在にやりまくれたそうだ。
ただ、無重力だから技に威力が無い。
結局、関節技でギブアップを奪ったとか」
「……そうなりますよね」
他にもこの部屋は、スカッシュをしたり、キャッチボールをしたり、スポーツチャンバラをしたりと色々スポーツをしていた。
「あー、体動かしたらお腹減ったわ~」
「先輩、流石はレスリングの選手だけありますね。
動きが凄かったです。
こっちは男が足手まといで」
「疲れた……」
「体痛え……、競技よりメスゴ……あの人に痛めつけられた方がヤベえわ」
「松本さん、君はスポーツしなくていいの?」
「日々の筋トレだけで十分です。
これだってノルマが無ければ、絶対にしませんから……」
「徹底的に文系なんですね」
「だから、そうやって人をひとまとめにした分類するのは、悪い癖ですってば」
「今日は何ですか?」
「ステーキとジャガイモと中東風麦のスープです」
「お、肉!」
「体力回復しそう!」
若い人は嬉しそうであった。
「ニンニクとか唐辛子とかは禁止なんですよね?」
折笠飛行士が牧田料理長に聞く。
「禁止、ではないですが臭いが出ないように料理するよう注意されています。
唐辛子は、炒めたりすると刺激物質が出て、目が痛くなりますから、それも厳禁です。
ニンニクと辛いの、お望みですか?」
「四川料理好きなんで」
「頑張ってみましょう」
「頼みます!」
「キムチとかチゲ鍋とか出来ます?」
「キムチは持ち込み禁止なんですよ。
細菌の問題で。
ただ、キムチ風の漬物を宇宙で作る事は可能です。
あと、モツは今は無いですね。
それっぽいスープで良いですか?」
「仕方ないです。
本物は地球に戻ってから食べますが、良ければそれっぽいスープもお願いします」
「お二方とも、自分で作ったりはします?
やってみませんか?」
「遠慮します!」
「遠慮しときます!」
「食べる方専門なので!」
「折角プロがいらっしゃるのに、私たち如きが料理しても良い事ありません」
「やっぱり体育会系女子は料理が出来ないか……」
「だ~か~ら~、そうやって人をひとまとめにするのはやめましょうよ」
「そういう松本さんは料理出来るの?」
「出来ますよ。
やってみましょうか?」
「牧田料理長、良いですか?」
「まあ良いです。
看護士さんですし、衛生面でも気を使ってくれると思いますので」
翌日、松本飛行士が夕食を作った。
中々のものが出来上がった。
しかし
「柔らかい……」
「味が薄い……」
「肉が少ない、脂が無い」
「栄養バランスは取れてる感じ」
病院食っぽかった……。




