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根も葉もFoodだ

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

カブというのは実に無駄が無い野菜だ。

茎と葉、そして根と言われる胚軸の部分が食べられるし、美味しい。

(胚軸は正確には茎で、本当の根はその下のひげ状のもの)

皮も別に剥かずに食べられる。


大根もそうだ。

スーパーで売られているのは、葉の部分がカットされているものが多い。

カブは葉つきで売られているのだから、大根の葉の方が需要が低いのだろう。

だが大根も葉は無駄無く食べられる。

漬物とか美味しい。


ニンニクも芽の部分を食べる事が出来る。

ニンニクは球根部分が分球して増えていく。

増えた球根部分も、生えた芽も食べられる、中々優秀な野菜だ。

ただ、宇宙ステーションではちょっと臭い的に問題かもしれない。


ワサビも根も葉も食べられる。

ただワサビは栽培が難しい。

ワサビ田には綺麗な水も必要である。

畑のワサビも水は豊富であった方が良い。

ワサビ田の沢ワサビは根の方を、畑ワサビは葉や茎の方を食べる傾向にある。

宇宙ステーションはともかく、将来の月や火星での栽培には適していないかもしれない。

(それに、無いと寂しく思うのは日本人だけだろう。

 他国の宇宙飛行士には、むしろ唐辛子の方が馴染みがある)


久保田飛行士はこういう野菜を育てられないか、実験を始めている。

これまでの野菜の選出基準は

・収穫までの期間が短い

・連作障害を起こしにくい

・あまり大量の肥料や水分を必要としない

・水耕モジュール用の水耕作物

・日常的に食べて飽きが来ない

というものであった。

研究しやすく、サイクルが早いのを優先的に選んでいた。


これからしたら、カブは連作障害が強く出る。

収穫物の優秀さは認めるが、スペースが限られている農耕モジュールで、連作障害が余り強過ぎるのも好まれない。

宇宙での連作障害については研究課題として挙げられている。

現在研究中である。

それは連作障害のメカニズムではなく、宇宙ではどのような形で出るかを調べているものだ。

無重力での養分の吸い上げ(上も下も無いから上げるというのもおかしな表現だが)について。

無菌や精々人工的に整えられた菌だけの環境で、どのような影響が出るかについて。

決して連作障害を出さなくする研究ではない。

そんな事、地上でだって出来ていないのだ。

結局連作障害を起こす作物の栽培は、地上と同じように輪作する事になる。

今回、久保田飛行士はカブと大根を育てている。

カブは種蒔きから45~60日で収穫出来る。

大根は春蒔きの条件なら50~60日で収穫可能だ。

久保田飛行士が滞在する約90日の間に、1回目は収穫可能である。

カブの方は、2回目の収穫が早ければ90日後になるから可能なように思えるが、実際には無理だ。

連作が出来ないからだ。

カブの方は収穫後に、別の作物を育てる事になる。

一方の大根の方は、連作可能なのだが、早くても100日後になる為、久保田飛行士が滞在中に2回目の収穫を迎える事は無いだろう。


カブの後に植える作物はネギと枝豆を選んだ。

余談だが、ネギの選定に当たり、白ネギ派と青ネギ派が対立し、一時騒然となっていた。

関東人が「白ネギじゃないと鍋や焼き鳥が美味くないだろ!」と言い。

関西人が「白ネギで美味いネギ焼きが作れんだろが!

 肉巻きにしても良し、壺漬けにしても良し、青ネギの方が有用やで!」と主張する。

関東人「だったら蕎麦の薬味はどうなんだよ!

 白ネギの輪切りだろ?」

関西人「は? 青ネギの刻んだのやで。

 何言うてんの。

 焼き茄子とかの上に、あんなごついネギの塊乗せてんのかいな」

関東人「それは白髪ねぎにするだろ」

関西人「なんやそれ、知らん単語並べんなよ」

関東人「ネギ焼きも、中身スッカスカの青ネギ焼くより、中までびっしり白いネギの方が良いだろ」

関西人「はあ? それはネギ焼きやのうて、焼きネギや。

 ネギ焼きちゅうのはな、お好み焼きと似て粉モンや」

関東人「だったらお好み焼きでいいだろ?

 そしてお好み焼きはキャベツだろ」

関西人「ゲロみたいなもんじゃ焼き言うもん食うとる関東のモンに、お好み焼きをどうこう言われとうないで!」

一触即発のこの状況は、ネギのアイドルがいる新潟県民が解決した。

「食う方にばかりこだわってますが、生育期間は青ネギの方が短いので、実験には青ネギの方が良いです。

 白ネギは土をかぶせるとか、作業が多いのも難点です。

 食の優劣はこの際置いて、どっちが良いかで考えて下さい」

こうして関東人、関西人とも引き下がった後、ボソッと

「応援用のライトだって、先端は緑色だしね」

と言っていたのは聞かなかった事にしておこう。


ネギの出番はまだ後になる。

ネギにも連作障害はあるが、大根同様2~3年は大丈夫だ。

3年もすれば、「こうのす」計画も終わっているだろうし。


ともあれ、久保田飛行士と牧田料理長は、カブの収穫を心待ちにしている。

「千枚漬け!千枚漬け!」

「それも良いが、葉の方も漬物にすれば美味しいですよ。

 あと、鷹の爪、唐辛子も研究とは別口で栽培していますよね」

「そうですよ。

 千枚漬け作る際は、保管を頼んでいる昆布と共に使うんです」

流石に昆布は宇宙ステーション内で養殖不可能であった。

地上から干した昆布を持って来て、倉庫に保存してある。

「そういえば、唐辛子も葉っぱは食べられますよ」

「お! そうなんですね。

 どんなものが作れるんですか?」

「主に煮て、佃煮にするのですが、他には味噌と混ぜたり、パスタの薬味にしたり」

「楽しみですねえ」

「楽しみです」

2人はその日を想像して笑顔になっていた。

きっと45日後はカブ三昧な日々になるであろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 我が家では大根の葉っぱ、蕪の葉っぱは油揚げと煮て卵を落して食べてます。大根葉は農家市で詰めホーダイで買っています。 蕪は赤かぶではダメなんでしょうか [一言] まさかココでNegiccoを…
[一言]  個人的には『松重豊』氏で宇宙孤独のグルメが希望☆  以下、脳内ナレーションでお読み下さい。 「カブか、カブは好きだ。しかしカブばかりとは、カブ祭りか。  おっダイコンも有るか、むっネギだ…
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