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やって貰った以上、報告はしなければならない

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

国会の部会で法整備についてオブザーバー参加するのは「将来」の為である。

旅客業務は、今すぐ始めるわけではないし、現状日本ではその予定が無い。

しかし、アメリカが既に始めた以上、使用権を同じくする日本も準備はしておく。

仮にISSの方に行く予定が急遽取り止めになり、

「今、そっちの宇宙ステーション空いてるよね?

 急だけど受け容れて貰えない?」

とNASAから観光客宿泊を要望された場合、日本人だけの運用期間なら日本人が対応しなければならない。

この後、使用料についてNASAからJAXAに支払いが成されたら、それは商行為である。

その時がいつ来るか分からなくなった以上、先んじて準備をしておく。


……という大義名分の下、何故か野党議員の半分も乗り気で法整備が進められる。

反対派、あるいは「もっと福祉に」とか言う議員は、こちらの部会には来ない。

そして話を聞かない強硬論者は、審議拒否とか言って国会にも来ないのだが。


「将来」の事は勝手にやらせておく。

だが「結果」については報告の義務が秋山たちにはある。

それは国会だけの話ではない。

議員は口だけ出して、結果を聞いて成果が出ていればそれで特に問題はない。

宇宙船や宇宙ステーションの構造体に関わったメーカー、宇宙食を作った食品企業、宇宙服(船内着、船外作業着ともに)の繊維業者、内部で使用する機材を作った電機製造や内装業者への報告はしなければならない。

彼等とて慈善事業をしているわけではない。

代価を支払っているから、それ以上何もしなくて良いのではない。

これに関わる人的資源(リソース)を割いたのだし、継続案件である以上、それがどれだけ有意義だったのかを知っておかないと、事業計画に影響が出る。

問題があれば製造者責任を負わされるし、宇宙飛行という目立つ事に関わった以上、不具合は針小棒大に報道され、企業の名に傷を負わされるリスクだってある。


まあ一般論として、やってくれた以上、報告は必要であろう。


個々の報告は、都度行っていた。

その辺、半分以上官公庁なJAXAはきちんとしている。

それとは別に、取り敢えずの区切りとなった第三次長期隊までの約1年のスパンでの経緯を、結果報告として纏めて報告する。

資料作成に約1ヶ月掛かった。

それぞれは、有能な職員なら数日でしっかりした資料に出来るのだが、なにせ関わっている業界が多い。

多数の報告資料を作成し、担当者が違う以上、互いに矛盾する事を書いていないか読み合わせを行い、それから提出する。

提出後、その企業や研究機関と日程調整をして報告会を行う。

報告会はこのご時世、オンラインで行うが、だからといって何時でも良い事はない。

その日に合わせ、プレゼンテーションの勉強会が行われ、

「分かりやすく、重要な部分がはっきり伝わるように、出来るだけコンパクトな説明に」

「質問されたらきちんと答える。

 持ち帰るは禁物。

 想定される質問は全部潰しておこう」

「相手が一番知りたいのは、提供した技術が将来に活かせるか、である。

 それを期待し、もっと儲かる事業と天秤にかけて、こちらに協力してくれたのだ。

 先行投資の意味があるから、枯れた技術でなく新技術を使ってくれていたりする。

 だから、そこに関しては別資料にしたし、必要があるなら別な日程で、それだけの説明会をしよう。

 うちとしては、協力を続けて貰いたいのだから」


こうした打ち合わせは、夕方の時間に行われる。

宇宙ステーションは年中無休、24時間休み無く軌道を周回している。

これの運用監視は、軌道上に居る船長たち同様、地上でも3交代体制で行われている。

その他の業務については、昼勤と夜勤がいる。

通常業務は昼が主流になるが、アメリカやフランスとも関わっている以上、時差の事もあり夜番も必要だ。

最近は出勤しなくて良いのが助かる。

その昼と夜の引継ぎの合間、両方が揃っている時間帯にすり合わせのミーティングをする。

それ程長時間は時間を取れない。

「打ち合わせを長々としない!

 長引く原因となる細部への不毛な拘りをやめる。

 どうしてもそこが引っ掛かるなら、先に問題点を纏めた資料を作って送付しておく。

 その為にも、担当者は資料を2日前には全員に送る。

 疑義がある人はそれを前もって読んで、言いたい事があるなら、打ち合わせ1時間前までにその件をメールしておく。

 その手続き守れないなら、打ち合わせは無しね!」

 読みながらあーだこーだ言うから時間を無駄にする。

 言いたい事は文章にして纏めて、「文句がある」という事を示しておけ。

 それを読んで、打ち合わせ内で触れるべき話か、個別に話し合うものか判断する。

 言いたい事がある人も、その場で初めて出すとグダグダになりやすいから、一回文章に落とそう。

 そうすれば言いたい事が整理され、話がコンパクトになる。

 分かりやすいように伝えろというのは、発表者に限った話ではない。

 質問する人、意見を言う人も話題は纏めて、伝わりやすいようにしておけ。

 独りよがりにならないよう、誰かと相談するとか、一回読んで貰っておけ。

 他人の目に触れるとなると、色々考えるから。


 こうした方針で、短時間のミーティングを繰り返し、報告会に挑む。

 それでもこの人たちには不満があった。


 アメリカの小野は言う。

「アメリカ人にちゃんと伝えられるかどうかは別問題ですけどね。

 まあ、あの人たちは理解しようとしますが」

 小野同様、フランスやイタリアに派遣されている職員も居る。

 彼等は小野に対し

「君のとこは英語だからずっとマシだよ。

 うちら、細かいとこは現地語だよ。

 そして彼ら、長話が好きなんだ。

 必要とあれば短く出来る癖に、会話と議論(ディベート)を楽しんでる節がある。

 面倒臭いんだよぉぉぉぉ!」

 彼等はシアトルから太平洋に向かって吠えている小野同様、

 ローヌ川とかティレニア海に向かってたまに

「お前ら、面倒臭えぇぇぇぇぇ!!!!」

 と吠えて感情を吐き出さないとやっていけない日々を送っていたのだった。

そういや10月1日は年度における下半期の開始日だったなと思い、

9月末〆の諸々あったなと思い出し、この回を作成しました。

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