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お客さん用の訓練マニュアル

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

アメリカは既に宇宙観光ビジネスを始めている。

観光客とはいえ、現在は数ヶ月単位での宇宙飛行士としての訓練を課している。

それは垂直発射のロケットで打ち上げられる場合だ。

将来的には滑空離陸し、航空機の延長として宇宙、といっても低軌道まで行く事も想定されている。

旅客機を操縦する者は厳しい訓練を経て資格を取るが、旅客機に乗る者はそんなの不要である。

エコノミークラス症候群の既往症とか無いかはチェックされるかもしれない。

宇宙飛行も、次第に旅客機同様、操縦者はともかく乗客に訓練は不要となる時代が来るかもしれない。

次第に宇宙へのハードルは下がっていくようだ。


現在、観光で宇宙に行ける者は限られている。

旅費が富豪でないと支払えないレベルだからである。

彼等は、宇宙に行く為ならそういう訓練もこなしてくれる。

そういう訓練に参加出来るだけで、他の人間とは異なるからである。

特別な待遇である以上、特別な訓練は喜んで受ける。

ではあるが、アメリカの関係機関は将来を見越し、今特別な存在しか宇宙に行けない段階から、より一般化した時の基準様式(フォーマット)を策定していた。


JAXA入所すぐの年からアメリカに派遣され、そのまま帰って来られない小野。

彼の肩書は「有人宇宙船部門次長」にまで上がっている。

給料も大学院修了後数年という若造の割に、相当な額を貰うようになっていた。

……アメリカにずっと置きっぱなしへの謝罪というか、申し訳なさ込みの額である。

……そして「これからもよろしくね」という謝礼が前払いされている。


彼はこの数ヶ月何をしていたか?

彼は法科大学院(ロースクール)に通っていた。

アメリカで既に考えられている民間宇宙旅行の一般化に向けての基準を、日本でも取り込みたい。

有人宇宙飛行計画は、正直アメリカそのままの基準で良い。

日本独自の企画を考えてはいるが、実現は大分先だろう。

ISSと「こうのす」計画は、アメリカのやり方をそっくり取り入れた上で、アメリカがやらない事を上乗せしている。

ISSの「きぼう」はともかく、「こうのす」はアメリカの方が民間宇宙旅行客を流す気満々である。

だから、様々な事をアメリカに合わせたい。


今回のテレビクルーやタレントが宇宙に行くのは「旅行」になる。

しかし、定期便とかそういうのではない。

チャーター便という扱いだ。

民間企業が特別に調達して、特定の場所に移動する。

なお、飛行機はその運行において飛行計画書を提出する。

ドローンのようなものでも、航空法が適用され、あるサイズ以上は小型航空機となる。

飛ばし方によっては飛行計画書を出さなければならない。

民間企業のチャーターによる宇宙飛行、これも計画書を提出させる事をアメリカ航空運輸委員会では決めた。

国だけが宇宙への道を独占していた時代は終わった。

ならば、軌道や打ち上げ進路等でかち合わないよう、しっかり調整しないと事故が起こる。

こういうものは、法律用語とかを知らないと翻訳も難しい。


「僕は技術系なんだ!

 法律を学べなんて、お門違いだ!!」

そう喚けど、アメリカから日本に声は届かない。

日本の宇宙計画は貧乏性である。

技術実証機に「ついでだから小惑星まで飛行してサンプルリターンをし、その後木星軌道まで行って」とか要求する。

人間についても同じだ。

使える人間は、技術系だろうが法律にも行政手続にも運用仕事にも関わらせる。

休日休暇をしっかり取らせ、給料を相当額出しているから、辛うじてブラックとは言えないだろう。


小野は法律用語を学びながら、アメリカの航空宇宙行政や法の作成を学んでいた。

それらを日本に情報として送っている。


何故、この話をしたか?

ハードルを下げて誰でも行けるようになる宇宙時代を想定した、乗客の訓練メニュー作成において、操縦をしない者にどれだけの事を認めるか、何か有った場合の責任問題について法が定義をするから

である。

マニュアル作成にも、法が必要なのだ。


例えば法により

「薬物中毒者は搭乗を認めない」

とあれば、それだけで訓練参加すらさせないで断れる。

どうしてかという理由についても、常識で考えろ、ではなく法に注釈としてついているから、それで説明出来る。


「心臓疾患について、重度の者は搭乗を認めない。

 軽度の者は医療介助者の同乗の元、搭乗を許可する」

とあれば、企業に出させる飛行計画書に、医療介助者の記入を必須とすれば良い。

そしてこの場合、どこまで訓練をさせるか、とか医療介助者はどこまでのレベルを要求するか、とかを定める必要がある。


「こうのす」計画がどれだけ続けられるか分からないが、もしもテレビクルーが二度目の搭乗をするならば、再訓練はどうするのか、期間をどれだけ空ける必要があるのか、何回以上はダメなのかを定める。

テレビクルーは3回目とか4回目、タレントは今回が初というパターンも十分あり得る。

この場合、そのテレビクルーの飛行回数や前回との間隔も、飛行計画書に記載して貰う事になる。

これを虚偽申請された場合の罰則は?

責任を負うのは誰になるのか?

訓練は基本、搭乗するチーム単位で行うのだが、その場合のメニューをどうするのか?

様々に決める事がある。


無論、日本とアメリカは全く同じではない。

小野はアメリカの法について学ぶのと並行して、日本の法や行政手続についても学ばされていた。


「自分には専門外だぁぁぁぁぁ!!!!」

シアトルの海に向かい、夜中に吠えている日本人が、また目撃されるようになった。

※この話も想像で書いてます。

アメリカが宇宙飛行士用の訓練メニュー緩和してるとかは聞いてないです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小野さんがまた放牧されっぱなしになってる……。 負けるな小野さん、折れるな小野さん!
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