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可視光線で見る大地、赤外線で見る大地

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

アメリカが作成した観測モジュール「ホルス」は宇宙ステーションならでは使い方をする。

それは用途に合わせて観測装置を交換するというものだ。

固定式だったら、別に有人である必要は無い。

人工衛星で十分事足りる。

「ホルス」は観測装置を取り付けたアームを、与圧室内に入れたり、船外に露出したりという使い方が出来る。

ある時は遠赤外線カメラを、ある時は高性能8Kテレビカメラを、ある時は微粒子採集装置を、という選択が出来る。

そしてアームは、先端のカメラを目標固定させるように動作する。

言わば長大な自撮り棒のようなものだ。

手ブレ防止用のジンバルがついた自撮り棒に取り付けたカメラは、動画撮影しても乗り物酔いしそうなグラグラした映像にならない。

それと同じように、アームの先の観測機器が対象を固定(ロックオン)すると、地球の影に入ってしまうまでずっとブレを抑えて追尾記録する。

このシステムについて、アメリカは機密としていて、日本人以外の外国人が立ち入る事を嫌う。

日本人は何故良いか?

宇宙ステーションの運用担当だから立ち入りは仕方ないという部分もあるが、それ以上に

「あれって、もしかして戦車で使ったスタビライザーの技術が流れた?」

とも噂されている部分に真相がありそうだ。

(一〇式戦車の砲身にワイングラスを乗せて旋回させても、ワインが零れないあの技術)

(スラローム走行をしても、砲口が的からズレないあの技術)


アームは長短2本ある。

同時に2標的を追跡可能だ。

ただし、拡張プラットフォームを使用する事で、同じ標的を複数の機器で観測する事は可能だ。

モジュール内のサーバは24チャンネル持っている。

通信に使うものが6チャンネル(確保しているだけで、実際に使用しているのは3チャンネルのみ)で、「こうのす」本体との通信に2チャンネル占有している為、最大で8機器(inとoutで1機器につき2チャンネルポート使用する)の観測データを取り込む事が可能だ。

まあ、観測機器が高性能になれば大型になり、拡張プラットフォームにも数多くは設置出来ない為、8機もの機器を同時に使う事はまず無いだろう。


アメリカの観測モジュールは、電源や酸素供給において日本の宇宙ステーション本体のものを借りているが、通信については完全に別系統を使っている。

このモジュールは、ギリギリ地平線に隠れないくらいの距離で並走周回する通信衛星とセットであった。

日本に黙って動作コマンドを打ち込む事も可能だし、日本の通信システムがダウンしたり、宇宙ステーション内のサーバがパンクしても影響を受けない。

逆に、ここのモジュールにコンピュータウィルスが入り込んでも、日本の宇宙ステーションのシステムには影響しない。

なお、通信システムはアメリカの独自開発のものと、普及版の最新版の2系統あり、独自開発のものは日本にも情報開示していない(と言われている)。


このモジュールを他国に使用させるに当たって、条件がいくつか有った。

まずNASAの規格に準拠した観測装置以外は認めない。

これはISSで慣れている日本、カナダ、欧州には低い障壁だが、そうでない国には中々難しい。

今回使用を申し出た国には、NASAのOB等が派遣され指導に当たった。

そして機器の取り付け作業はアメリカ人飛行士が行う。

日本人しかいない場合、日本人が作業を行うが、その場合でも機密保持契約を交わさねばならない。

そしてデータはアメリカが開発したアプリケーションを使用して取り込む。

取り込んだデータは如何様にも加工出来るが、元データ、生データには直接アクセスさせない。



そんな「ホルス」を第二次短期隊のミッションスペシャリストは利用する。

第一次短期隊の時は、アメリカ人飛行士不在だった事と、まだ地上操作での試験運用中だった為、利用申請を全て断った。

単にイスラム系が多いから、セキュリティ対策で拒否した訳でもない(それもあるが)。

そんな中、アメリカからすれば気心が知れているカナダと、まあ……うん、隣国だし……なメキシコの観測機器をショートアームに取り付けて観測させる。

カナダ装置はマルチチャンネルの赤外線センサーで、独自開発による広域センシングが可能だ。

メキシコ装置も赤外線を使い、特定波長で遺跡と植生のマッピングを行える。

そうした赤外線の目が、真下の濃緑の大地を観測し始めた。


「いやあ、肉眼で見るのと赤外線で見るのとは違いますねえ」

アメリカ製PCに映し出される画像にミッションスペシャリストたちは目を見張る。

樹冠によって遮られた、樹木が伐採され傷ついた大地がはっきり見える。

一見青々としているが、光合成の能力が低下している病んだ森林が確認出来る。

森林の上のエアロゾルも視覚化された。


「目で見て分かるものもあるぞ」

宇宙に何度か来ているプロの飛行士、ニール船長がカメラを操作する。

焼き畑の煙や、流れ出ている表層土で赤く染まった海等。

「この宇宙ステーションの軌道の傾斜的に、見えないものもある。

 例えば北極海なんかは、この機体からは見えない。

 ISSからは見えるが、海氷が減っているのが分かる。

 あと、中央アジアのアラル海の面積減少とかな」

遥か高みから見る事で分かる事もある。

宇宙開発、衛星技術が必要な所以であろう。

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