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ミッションスペシャリストを送り出した国の方の問題

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

世界で、公共交通機関が定刻通りに来る国は極めて珍しい。

先端企業、大企業はスケジュールを決めて計画通り(オンスケ)になるよう努力するが、そこから規模や技術レベルや下流工程になる程、納期に対してルーズになりやすい。

アメリカや西欧の企業は厳しい方で、発展途上国の企業になると、出来る所と出来ない所があるから見極めが重要である。

なにせ、受注取る為に出来もしない事でも、さも実績があるかのように語るからだ。

下手したらマイクロ秒単位のミスが死に繋がる宇宙開発において、業者選択は厳密に行われる。

NASAが適当な企業や国を計画に加えないとは、この為である。

JAXAもESAも基本は同じだが、JAXAの中の有人宇宙船計画だけはそうではない。

むしろ途上国を積極的に取り込んでいる。


途上国と組んでの宇宙計画とは言え、やはりそこは企業レベル、機関レベルでしっかり査定してから提携する。

だが、査定出来ない部門もあり、そういう所は日程時程(スケジュール)意識が薄い。


まず大学、工専である。

ここは極端な話

「卒論間に合わなかった……、まあ半年後にもう一回出して、そっちで卒業しよう」

「論文書き上がらなかったから、今回は落とすか」

「集合から1時間遅刻?

 文学部ルールで2時間遅刻まではOKだから」

というルーズな面が残る。

教授・準教授級がそれだとマズいが、学生・院生・研究生はまだまだ認識が温い。

むしろ「中途半端な物を作るより、遅れてでもキチンとした物を提出しよう」と考える。

それはそれで学問の進め方として間違っていない。

学生の内はのびのび研究するというのも有りではある。


……他の者が関わらなければ。


先日の小型衛星運搬の遅延は、この学生気質が悪い方に出た結果である。

ついでに言うと、学生との関わりが深い教育・科学部門も、工業部門や産業部門に比べて呑気な部分がある。

「出来ていないなら仕方ないな」

「中途半端な衛星とか、宇宙で故障されても日本が迷惑なだけだからね」

「とりあえず日程調整しておきますね」


産業、経済に関わる部門から見れば噴飯ものな言い様だ。

「間に合わせるべく全力出すものだ!

 出来ないなら立候補すんじゃねえ!

 遅延した分の迷惑料と、嘘吐いた罰金払え!

 それから始末書はしっかり出せよ!」


この間に立って調整を行うタイムキーパーの役割は重要になるが、日本だと時間厳守に思いっきり寄るのに対し、他では中間から「仕方ない」寄りになる国も多い。

他国との関わりもあり、この辺は微妙に匙加減が変わるものの、自国内だけならば自由に裁量する。


短期滞在の二次隊派遣国で、日本とアメリカはさっさと4機ずつの小型衛星(キューブサット)を提出し終えていた。

この二国は普通に気象衛星も測地衛星も通信衛星も保有している為、大学や工専が試す小型衛星も機能を欲張らない。

ある衛星は、大気圏突入の際のプラズマを計測するのが目的で、そもそも周回自体おまけだったりした。

他にも「太陽の光圧を測定」とか「大気圏最上層部から低軌道にかけての微粒子分布を調査」のように単機能で、分かりやすいものである。

だが、人工衛星の少ない国だと、この機会に何でもしようと考える。

カナダは小型衛星にせず、ロボットアームに臨時に取り付けて国土を撮影するカメラ開発に絞った為、問題は無かった。

オーストラリア、インド、UAEが問題だった。


オーストラリアは南極を領土主張している。

国際条約で認められていないが、それでも彼等は南極海を自分たちの海で資源の確保を目論んでいる。

故に南極上空を通る軌道に衛星を投入しようとしていた。

低軌道をそれ程傾かない軌道で周回する「こうのす」から極方向への軌道に乗せる為、小型衛星を軌道に乗せる為のモーターが大型化し、管制も難しくなっている。

直ちにNASAより「プログラムを提出しろ」「軌道要素を提出せよ」等の要請が飛び、該当の大学の研究室は多忙となっている。

学生の作ったプログラム(計測用だが)にダメ出しが相次ぐ。

それでもアメリカ、オーストラリアは英語でやり取りする為、何とかなる。

日本とオーストラリアも時差が小さい為、情報交換も容易だ。


UAEは更に野心的である。

月探査がしたい。

しかし、小型衛星(キューブサット)を射出するモーターでは出力不足で、到底月への軌道に乗らない。

そこで彼等は地球を使ったスイングバイを繰り返す事を考えた。

これも言うは易し。

一度モーターの限界まで高度を上げた後、大気圏との摩擦や地球の重力に捕まらないコースに突っ込んで加速を得て、その後地球が太陽を公転する速度との合成速度を得る。

それを繰り返す。

地球の周囲には何個も衛星が回っている為、衝突しないよう軌道要素を確認する。

これでも月までたどり着かない為、最終的には本体の小型ロケットで地球の重力を振り切り、月へのコースに乗る。

小型衛星はそこまでが限界で、月近傍を通過したら成功とする。

国家のエリートが頑張って立てた計画と計算であり、ただ他の軌道との関わりもあり、管制センターからの制御や非常時は大気圏に墜落させるが、その場合のコース等も提出を求めたりでやり取りが盛んである。


そしてインド。

この国は既に自国だけでロケットを打ち上げ、人工衛星を持つ宇宙開発では先進国の部類である。

そして工科学校が盛んで、ここからの小型衛星(キューブサット)応募も多かった。

割り当て枠の4機と、カナダが辞退した4機の8機を貰った。


そしてこの国は、時間を守らない事には定評がある。

機械は既に作って送ってある。

追加リクエストに関し

「今やっている」「作業中だ」「もう少し時間がかかる」

とやられていた。

「あいつら、もっと時間や納期を守っていたじゃないか!

 なんで今回はこうなんだよ?」

吠えるNASAとJAXAの担当であったが、原因は簡単である。

納期を守らないと作業費が入金されない場合、絶対に納期を守る。

そうでなければいつものインドタイムが発動する。

それだけであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] スイングバイを繰り返して…月を狙えるんですか!すごいですね。勉強になります。
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