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宇宙飛行士の訓練は続けられていた

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

ミッションスペシャリストは、志願者の中から第四次隊の候補者を選抜し、訓練を始める。

それとは別に、本職の宇宙飛行士の訓練も行われていた。

三ヶ月になる長期隊の滞在中、3機のジェミニ改2が4人体制で打ち上げられ、3人の教官の下で6人の日本人飛行士が初めて宇宙を経験していた。

打ち上げがアメリカからもされた為、2人はアメリカ人の新人飛行士であり、残り1人は留学中の東南アジア某国の飛行士であった。


前回宇宙飛行士の訓練で利用したHTV-X改は再利用された。

このHTV-X改を標的とするランデブー及びドッキング訓練、ドッキング後の宇宙生活がイメージする宇宙生活に近い。

シートや壁に寝袋を固定して寝る。

荷物の中で生活する。

料理などせず、地上から持ち込んだ宇宙食を食べる。

快適とは言えない住環境。

訓練なのでスケジュールもきつく詰まっている。


アメリカ人新人飛行士は、もう派手な取材を受けない。

東南アジア某国の場合、初の宇宙飛行士ということで、地上との交信での取材が多く入っていた。

彼は国営放送や大手新聞社、政府の代表と通信するのも任務である。

また某国の工科学校の生徒とも通話を行う。

雑然とした船内、殺風景な色合いの船内から、画質が余り良くない通信がされる。

日本人飛行士は、この通信の為にネットワーク設定やカメラ撮影、軌道調整というサポートに徹した。


この飛行士候補ヨー氏に対して、本国だけでなく日本とアメリカも期待をしていた。

ヨー氏の本業は医師なのだ。

それもアメリカの大学を卒業したエリートである。

中学(ジュニアハイ)から高校(ハイスクール)大学(ユニバーシティ)と進んだ為、アメリカで育てられた人と言って良い。

こういう人物は一回アメリカに留学したら、そのまま留まってしまい、やがてアメリカ国籍を得てしまう場合が多い。

だが彼は、日本の総理が国際貢献と称して

「お国も宇宙飛行士を出しませんか?

 日本の宇宙船に乗せられますよ」

と言って歩いた事から、国の結構偉い地位の親戚によって呼び戻された。

そのまま、半分強いコネありきの選考で宇宙飛行士候補となったのだ。


経歴書を見た秋山は驚くと共に喜んだ。

フライトサージオンという地上での医療スタッフより、もっと宇宙飛行士の健康管理を出来る「医師」がやって来たのだから。

アメリカの大学等に問い合わせをした過程でアメリカもこの人物を知った。

ヨーは中国語では「(リョン)」、つまり華僑の家柄である。

(中国語も方言があり、ヤンとも読むし、さらに中国を出て訛ってヨーになった)

アメリカは背後関係も調べたが、これは問題無(オールクリア)

そこでアメリカでも宇宙飛行士及びフライトサージオンとして登用したいと考えた。

ヨー氏の母国と一族は、アメリカに帰化しない事を求め、それさえせずに母国の権威を高めてくれれば海外生活も良しとした。


こういう人物なだけに、第三次長期隊の期間中に入る短期滞在隊のいずれかで、船長兼医師として宇宙に赴く。

この時はジェミニ改ではなく、アメリカの新型有人機を使う為、今回の訓練終了後にはアメリカでも再訓練を行う。

さらには国際宇宙ステーションISSへの滞在も視野に入れられていた。

裕福とは言えない母国において、若い者たちの希望の星となる存在だ。


彼の同僚(バディ)たちは、ヨー氏に付き合わされて訓練が厳しくなった。

そのフライトの船長は尾方飛行士。

ジェミニ改で最初に宇宙に飛んだ飛行士である。

その後、同僚の山口飛行士は「こうのす」の船長として長期滞在チームの束ね役となった。

尾方飛行士は数日から最長2週間の訓練飛行や地上支援を専らとしている。

彼は指導者としては厳しい鬼教官である。

ミッションスペシャリストの束ね役よりも、新人教育が適任と見られたのだ。

その彼が気合を入れて指導をしている。


「電波測距切断。

 目視にてドッキングの訓練。

 このまま行う」

「すみません、逆光です」

「それがどうした?

 位置を変えて、ギリギリまで近づいてからアプローチコースに入れ」


「宇宙船破損を想定し、減圧下で訓練を行う」

「え? 本当に空気抜くんですか?」

「折角宇宙にいるのだ、実際に減圧するぞ」

「船外服を着用します」

「まだ駄目だ。

 リアルを想定し、減圧に気づくくらいまで抜いてから緊急着用せよ」

「船長は携帯式酸素マスクとか、ずるいです!」

「ずるいとはなんだ!

 万一減圧の影響で全員に思考異常が出て、減圧しっぱなしになったら危険だろ?

 誰かはきちんと思考出来る状態にしておくのだ」


「プログラム全損を想定。

 再プログラミングをせよ」

「無理です。

 フライトに使うプログラム、どれだけの容量があると……」

「ちょっとは考えろ!

 地上のサーバに接続出来るようサーバを再インストールし、

 設定をして、そしてセットアップすれば良いのだ」

「コンピュータの全削除とか危険過ぎです」

「いいからやれ!」

(HTV-Xのサブコンピュータにバックアップは取ってあるんだよ)


こんな具合に無茶ブリに近い事をさせられていた。

このチームは訓練を終え、地球に帰還した時にはへとへとになっていた。

この時の候補生3人は、全員が宇宙ステーション「こうのす」に登場する事になる。

そして揃って

「訓練の二週間の時の方が遥かにきつかった」

と感慨を述べる事になる。


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