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想定9人の避難訓練

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

「ところで、この人形なんですか?」

衝突実験用人形みたいなのと、風船式の人形と、マネキンがあった。

「風船は、もしかして……処理用??」

下ネタだが女性飛行士は華麗にスルーする。

「実際のとこ、何なんですか?」

「宇宙服の確認用とか、加速度の実験用に用意してました」

「どこにあったんですか?」

「五体バラバラにしたり、空気抜いた状態で倉庫に置いてました」

拡張与圧室の多数の荷物パックの中にあったようだ。


「じゃあ、こいつを持って行って……」

次の避難訓練用の事故は決まっていた。

飛行士たちには教えないが、山口船長には予め知らされている。


時刻になり2回目の訓練が始まった。

『これより避難訓練を開始します。

 非常事態発生、非常事態発生。

 配電部より火災発生。

 散水機(スプリンクラー)故障、酸素漏れ確認。

 化学モジュール「おうる」に負傷者確認。

 消火活動をしつつ負傷者を救助せよ。

 また、酸素漏れ箇所を特定しつつ応急修理を行うべし』


「ああ、なるほど。

 その為の人形か」

「分かったらさっさと動く。

 石田船務長、救急用具を準備。

 川名さんは待機し、地上との交信と、負傷者の治療補助。

 井之頭副船長は酸素漏れ対策、松本君は副船長を手伝って。

 岡村君は私に続いて消火と負傷者救助へ」

了解(アイ・コピー)


全員が一斉に動く。

酸素漏れは、羽根を舞わせて空気の動きを見る。

「といっても訓練ですよね?

 どこを修理するんですか?」

「ここだね」

コア2の生命維持装置(休止中)の主電源近くの壁面。

「ここに亀裂が入ったという設定で……」

『こちら管制室。

 設定とか言うな!』

「何でもいいから、ここを塞ぐ」

本来なら樹脂を注入し、その上から粘着テープで補強し、さらにその上から補修材を接着する。

だが訓練であるし、訓練後の片づけもある為、養生テープを貼るだけとした。


「酸素マスクは着けたな?」

「着けました」

「一応、CO2消火器使う体で訓練するから」

「負傷者いるのに二酸化炭素撒いて良いんですか?」

「粉末消火器の方が良いと思う?」

「水じゃないんですか?」

「水撒いて問題無い化学薬品だけなの?」

「前言撤回します」

化学モジュールに到着。

人形が倒れている。

「消火器噴射」

「噴射」

「負傷者救助」

人形を抱えて持って来る。


「応急手当お願い」

了解(アイ・コピー)

……って、消毒して包帯巻いておけば良いですか?」

「そうしといて。

 川名さん、地上からの通信は?」

「軌道を大きく外れているから、全乗員、宇宙ステーションを放棄して退避。

 それと……」

「何ですか?」

「乗組員の1人が急性の心臓発作……これ、どういう意味ですか?」

「あそこに人形がありますね?」

「ありますねえ」

「あれ、実は短期のミッションスペシャリストでして、御年70歳なんですよ。

 そして、爆発のショックで心臓発作を起こした、という設定です」

「え? 70歳?」

「……と地上から言っていたので、従って下さい」

「はあ」

『こちら管制室。

 実はフェーズ3で、本当に70歳オーバーの飛行士が行くかもしれないので、

 それを想定したリアルな訓練です。

 しっかりお願いします』

「70歳オーバー……」

「本当なのかよ……」

『ちゃんとやって下さい』

了解(アイ・コピー)

 AEDとか心臓カウンター出して」

「出しました。

 で、どうするんですか?」

「『つくば』へ、今回はどちらが良いのか? 送れ」

『「こうのす」へ、AEDで応急手当するように、遅れ』

マネキン人形に電極をあてる。


『管制室より「こうのとり」へ。

 負傷者を収容し、ジェミニ及び避難カプセルで脱出せよ』

「了解。

 井之頭副船長、フェーズ2にドッキングしているジェミニの起動を頼む。

 石田船務長は今治療している人形……負傷者を連れて井之頭君の船に乗って下さい。

 松本君もそっちで。

 残りはフェーズ1のジェミニに移動」


「ところで、誰が避難カプセルになるんですか?」

ジェミニ改2は最大4人乗り。

現在は想定9人(人間6人+人形3体)である為、1人ジェミニに乗れない。

「短期滞在メンバーは、1人は正規の飛行士だから、そこで浮いてる風船が避難カプセル」

『こちら管制室。

 人形と言うな!』


正規飛行士である山口、井之頭の両人がジェミニ宇宙船を起動。

慌てず、急いで、正確にという某隊長の言通り、手順通りに作動させていく。

負傷者を乗せ、他の乗員も乗せて脱出……


……ここまでが訓練だった。






「事故発生から負傷者救助まで15分、脱出指示から乗員全員ジェミニ搭乗までに10分。

 こんな感じでした、秋山さん」

地上では「こうのす」の実地試験の結果を秋山が聞いていた。

「大体想定通りですかね?」

「そうですね。

 手間取ったのはAEDの装着とか、治療系ですね。

 負傷者連れて来るところまでは、まあ良いのですが」

「人形だしねえ」

「とはいっても、実際に負傷者作るわけにもいきませんし」

「治療は、まあ仕方ないですかねえ。

 打ち上げ前に一通り訓練はしましたが」

「それなんですが、フェーズ3用の訓練には医療訓練を増やしたいと思います」

「医療技術を使わず済むなら、それにこした事はないですが……。

 まあ、いざという時の為に医療機器の習熟訓練を少し多くした方が良いようですね」


「こうのす」からの情報は、フェーズ3の訓練計画に反映されていった。

了解(アイ・コピー)、懐かしいなあ、プラネテス。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 〉人形とか言うな! ↑ そんな管制室のノリが好き。  ノリノリのいつもの季節ネタ以上に、ご老体マジでソラヘ行く前だからみなさん訓練頑張って! 毎回面白い、ずっと面白い、すごい(小並感)…
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