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生活空間をどうするか

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2021年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

宇宙ステーション「こうのす」は複数の与圧室が結合されている。

中央に位置するのがコアモジュール1と2で、それぞれに4室ずつ個室が在る。

コアモジュールには、他にトイレとバスルーム、ロッカー、更衣室が在る。

更衣室は女性が着替える際に使用するが、他に船外活動服装着時には男性も利用する。

本格的な船外活動服の場合、2時間近い船外活動中に簡単にトイレには行けない為、収尿器を装着する。

簡易船外服(活動時間30分程度)の場合も紙おむつを装着する。

見られるのは恥ずかしいので、更衣室は重宝する。


この他に現在、一次隊の北川船長が「艦長室」と呼んでいた旧「こうのとり改」に、実はベッドが2台在る。

厨房モジュール「ビストロ・エール」と農業モジュールには一人用仮眠室が在る。

そして、ジェミニ改が打ち上げる際、大概一緒にドッキングする多目的輸送機兼拡張与圧室「のすり」に2台の簡易ベッドが付いている。

単純計算で個室8室、2人部屋1室、簡易ベッド2台、増設簡易ベッド4台と、16人分の寝床が用意されている。

現在6人が長期滞在中で、短期滞在7人が加わっても余裕がある。

その筈だ、そういう冗長性を持たせていた。

秋山はそう考え、特に問題視していなかった。


「何か問題が有ったのですか?」

「簡易ベッドは無しにしましょう。

 ぶっちゃけ『お客様』です。

 それで考えると、元『こうのとり改』が実質船長の個室なので、9室を6人が使っている状態です」

「13人滞在となると、4室足りないという事ですか」

「いや、別にいいんじゃないですか?

 外国人をお客さんだとしても、

 日本人ミッションスペシャリストは仮ベッドに寝せれば良いし、

 飛行士は乗って来た宇宙船のコクピットで寝れば良いだろ。

 一週間程度の事なんだし」

「……日本人に対してブラックな扱いするの止めましょうよ」

「いや、秋山さんの言ってる事、我々も考えましたよ。

 既存の個室があるから、それ使おうって。

 ですが、それは我々の理屈なんですよね。

 総理がもっと立派な個室を、とか言って来る前に仕様くらい決めておきませんか?

 なんか、後出しされる予感がするんですよねえ」

「……君は正しい。

 でも、もしも総理が何も言って来なかったら、仕様固めて設計しただけ損になりますが、それで問題無いですか?」

「問題有りません。

 かなり後の予定でしたが、大人数用の宿舎とか、宇宙ホテルは計画に有りましたから、そっちに流用出来ますので」


かくして追加個室モジュール(仮)の仕様確定打ち合わせを行う事になった。


「以前考えていた宇宙ホテル、というか宇宙スイートルームなんですが、使い捨てを考えていました。

 元々、フェーズ3も終わり、実験ミッションも粗方片付いて、長期滞在そのものの追及にシフトした際に、宿泊客を受け入れる予定でした。

 その時、アメリカの富豪か、ヨーロッパの貴族か、アラブの王族か、アジアの企業家か、どんな人が顧客になり、何人連れで来るか予想出来ないので、その都度レイアウト変更する方が良いと考えていたからです」

次世代宇宙ステーション補給機HTV-Xを流用し、その内部全てを宿泊室にする贅沢な仕様、その上でお付きの者の多い王族用の仕切パーティションを用意するか、女性連れで来そうなセレブ用に女性用の部屋やトイレも用意するか、ビジネスマン向けに地上との通信や作業デスク的なものを充実させるか、ケースバイケースだろう。

「その他に、宇宙飛行士の大量訓練用に、HTV-Xを縦に3分割、断面図では4分割で計12部屋作る、それこそ宇宙カプセルホテルの構想が有りました」

この場合、酸素供給や発電量に不安が有り、モジュール自体にも生命維持装置を持たせる。


「この折衷案でどうでしょう。

 使い捨て、とは言わないまでも4回使用で廃棄。

 1顧客1モジュールという贅沢はさせないまでも、なるべく広い個室と、彼等だけの生活空間を確保する。

 贋作フェイクで良いので、絵とか観葉植物でも置き、展望窓を用意する。

 給湯器置いて、お茶かコーヒーは自分たちで飲めるくらいにして良いかと」

「特に問題無し。

 で、7分割は数学的に無理あるから、8部屋作るのか?」

「6部屋にしましょう。

 縦に2列、断面で3分割」

「1人足りないが?」

「それこそ、コアモジュールの空いてる個室利用で。

 日本人飛行士と日本人ミッションスペシャリストは、ブラックな扱いにはしませんが、既存の個室を使って貰いましょう。

 彼等は総理が招いたお客さんではなく、短いとは言え正規の乗員なんですから、既存の個室を使って貰います。

 外国人飛行士でも、総理案件のお客様ではなく、ミッションスペシャリストとしてやりたい事がある人、今訓練予定に入れてる学生や研究生は、やはり既存の個室を使って貰います。

 あくまでも対象は、総理ご招待の方々です」

「それだって、何も言って来ない可能性も有るしね。

 じゃあ、それで設計まで落とし込めます?」

「やっときます。

 案外準備しておけば、結果必要無かったとなり、後々楽だったりしますからね」

「そうなれば良いね」


かくして、一部職員は仕事を持ち帰る。

やっと仕事納めとし、年を越した。

年明けし、仕事始め。


準備しておけば案外その仕事は不用となる。

そんなフラグは無かった。

案の定、総理から追加で要求される事になる。

だが、総理より先に宿泊設備について触れて来たものがあった。

年明け早々に、設計から発注へと、また忙しくなるのであった。

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