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何でもない日の滞在日誌(鈴木飛行士目線)

この物語は、もしも

「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」

というシチュエーションでのシミュレーション小説です。

2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、

個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、

あくまでも架空の物語として読んで下さい。

鈴木飛行士は農学部の博士課程を修了している。

その後も大学で研究を続けるつもりだが、助手以上の空きが無かったので母校でポスドクをしていた。

彼はカルシウムと連作障害について研究している。

ナス科の植物はカルシウムを多量必要とする為、土壌バランスを崩しやすい。

このカルシウム消費は重力の有無により変わるだろうか?

無重力でカルシウムを消費しないナスならば、連作障害を起こしにくくなるのではないか?

だが、カルシウムを使わない事で正常な成長をしないなら意味は無い。

一世代目は上手くいっても、世代を重なるとどうなるか?

この辺は地上実験やシミュレーションだけでは分からない。

実際に宇宙で植えてみたい。


という訳で、数多く植える宇宙農園の中で、トマトとナスの専門家として彼は派遣された。

他の作物の世話も当然する。

だが、他の作物はこの後に来るミッションスペシャリストの研究分野なのだ。

宇宙では地表より多くの放射線を浴びる。

ISSでは連続滞在を半年までという基準を設けている。

「こうのす」はISSよりは低い軌道で、地球の磁場により強く守られてはいるが、五十歩百歩といったレベルであろう。

より数多く研究者を宇宙に送りたいという意向もあり、4ヶ月を目安としている。

120日程度では第一世代の収穫しか出来ない。

その為、二、三年は運用する宇宙ステーションで、後任にデータ収集を任せないとならない。

運が良ければもう一回宇宙に来られるかもしれないが、希望者が詰まっている状態では希望薄だ。

後任に研究を引き継ぐ。

逆もある。

交代の農業系ミッションスペシャリストの担当作物を、彼または彼女に代わって育て、データを取って送る。

彼の一日は、それら作物のプラントに設置したセンサが正常動作しているかを確認し、レコーダーを確認する。

正しい値が取得出来ている、きちんとデータを記録出来ているかが分かれば、基本的には「今は」する事が無い。

何故なら、やっと発芽してきたばかりで、人の手で何かする必要が無いからだ。

もっと日が経つと、作物によっては間引きとか、人間の目と手を必要とする作業が発生するが、今はまだ無い。

可能性として、そのような事が無いよう作った土壌ではあるが、雑草が生えたり菌類キノコが生えたりしたら処理が必要となる。

それはモニタ監視する。

先日宇宙酔いでダウンしたのが、種を撒いた後、発芽前で良かったと鈴木研究員は思っている。

忙しい時期に当たらなくて良かったのか、忙しくないから張りつめていた気が緩んで宇宙酔いになったか、どちらであろうか。


研究関連で面倒なのは、日報だ。

科研費を支給して貰っているので、報告をする必要がある。

しかし、そう毎日毎日変化は無い。

地上訓練でも日報は出していたから、何も無い日の書き方は学んでいるが、何か書く気が起こらない。

研究では大した変化は無いが、生活環境は大きく変わり、1日終わると何か疲れるのだ。

例えるなら、引っ越しが終わり、荷解きも済み、ちょっとした何も無い日が続いた時に、何かやる気が起きないのと似ている。

まだ生活に慣れてない為、何もしてないのに消耗するのだ。 

なので、日報とか書くのはしんどい。

だが、しんどくても、するべき事はするような人間でないと、宇宙飛行士にはなれない。

地上に送信し、自分の個人用端末にも保存する。


宇宙ステーション内での生活は、徐々に慣れて来た。

無重力というのは、やはり違和感がある。

食事やベッドについては、地上の訓練と変わらない。

広さでいうと、壁も天井も歩けるから、変な感じだが、広く感じる。

食事は、つい飲み物について上に傾けてしまう癖が抜けない。

味は非常に良い。

フランス料理のシェフだから、もっと食べ飽きるかと思ったが、材料を節約しつつ、食べ飽きないシンプルな料理が出て来る。

朝はガーリックトーストの焼き上がりが良い。

ニンニクも、処理が良いのか、臭さがなく口の中での風味のみニンニク感を感じる。

意外に米料理も出る。

「南仏はライスも食べますヨー」

と言って、スープ浸し、おじやと言って良いか、それが食べやすい、飲みやすい。

ベルティエシェフからは、早く野菜を収穫して下さいネーと言われる。

鈴木研究員もその日を楽しみにしている。


当番で船長の椅子にも座る。

趣味なのか、船長が座る計器類の多い場所には「艦長」と書いた紙が貼られている。

英語ではキャプテンだから、どっちでも良いそうだ。

ヘッドホンをつけ、地球との交信、レーダーやモニタの確認、出窓(少し顔が出せる凸型窓)から周囲を見渡す、といった仕事だが、基本は地球と交信するだけで椅子に座っているだけだ。

ただし、船長席に居る時はスマホもPCも本もゲーム機も見てはいけない。

退屈でも何もせず、船の進行監視をしていないとならない。


それが終わると、船の備品チェック、掃除、必要時は輸送船から荷物を運ぶ。

ドッキングしている全モジュールをチェックし、酸素漏れと火災について確認する。

船長席のモニタで全モジュールの監視は出来るが、交代して自由時間になる前に肉視確認もする。

そして自由時間。

自由時間の内に、筋トレをしなければならない。

鈴木研究員は農学部で、研究と趣味を兼ねて農作業を実際にする学生なので、筋トレは苦ではない。

ノルマが終わると、好きな事をして良い。

計画を提出すれば、宇宙遊泳もして良いそうだ。

金網で周囲を覆って宇宙迷子の抑止になった為、宇宙遊泳も敷居が低くなった。

鈴木研究員は写真撮影が好きなので、いつかは船外で撮影してみたい。

今は船内の様子と、出窓からの地球だけでおなか一杯だ。


そして休息時間。

これもスケジュールで決められている為、寝ないと、寝ないと!

鈴木研究員は寝つきが浅く、特に宇宙に来てからは興奮が軽く続いている為、北川船長に頼んで睡眠導入剤と、分厚いアイマスクを貰う。

分厚いアイマスクは、目に飛び込んで来てチカチカ発光する宇宙放射線対策用だ。

ヘアバンド状で、後ろからの入射対策もしている。

まあ頭の方からも足の方からも来るから、気休め程度だが、かけないよりは光が半減するから良いと思っている。

中々慣れないが、寝具固定ベルトを締めて寝るから、今日は終わろう。

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