カプセルの中
この物語は、もしも
「科学的な要望より先に政治的な理由で日本が有人宇宙飛行船を運用」
というシチュエーションでのシミュレーション小説です。
2020年頃の各国をモデルにし、組織名もそのままだが、
個人や計画そのものにモデルはあっても、実在のものではない、
あくまでも架空の物語として読んで下さい。
軌道上投下カプセルは、直径50cm、高さ50cmの魔法瓶状の断熱区画に成果物を詰める。
投下実験第1回実験では、その断熱区画の機能を確認する計測機器が詰め込まれる。
区画内の気圧推移、気温の推移が記録される簡単なものである。
最初からやらせのデータを仕込んでいたと思われないよう、現在軌道上にいる「のすり」船内のデータも敢えて記録させる。
ボイスレコーダーに向けて話しかけるのも仕事の内だ。
「◯年◯月◯日◯時◯分◯秒。
これから投下します。
現在インド洋上空です」
てな事を話す。
宇宙飛行士2人で話す決まりだった。
その為、ジェニングス中尉が
「やあ、君たちがあのファッ◯ン・ク◯ージーなパーツ数のスケールモデルを開発した日本人かい!?
おかげで私の脳も◯レージーになっちゃったよ!
魔女に食わせて死んじまいな!」
と入力したのはボツになり、時間が少し押した。
カプセルは、多少ならコース変更出来る。
魔法瓶状の断熱区画の上蓋になる部品に衛星との通信装置がある。
大気圏再突入中は、周囲のプラズマによって通信不能になるが、真上だけは空いている為、人工衛星とのみ通信出来る。
それで位置測定しながら、ズレが生じていたなら、空力を使って調整出来る。
その後、対流圏に入り、ある程度は空力的にコース変更出来るが、流石に突風が吹いていた場合、流されるのは免れない。
特にパラシュート展開中はそうである。
日本上空の、しかもローカルな天気の情報が必要である。
その辺は気象衛星だけでなく、秋山が手配した気象庁の現地観測所、臨時観測所で気球を使ったりして上空の乱気流まで調べて、JAXAから整理された情報が送られる。
ラッキーな事に、今日は全候補地がクリアーという良コンディションだった。
この場合、第一候補を標的にするとマニュアルで決めてあり、宇宙飛行士に判断が委ねられる事は無い。
それでも投下までは「確実」では無い為、投下された時に宇宙飛行士から「どこそこに向けて投下された」と確定情報が来てから、現地回収スタッフに連絡が行く。
現地回収スタッフに連絡が行くという事は、地方自治体にも連絡が行く。
有り得ないが、万が一都市部に着陸した場合は様々な問題が考えられる。
心ない者に見つかり、壊されたり盗まれたりするかもしれない。
偏屈な者の敷地内に着陸したら、敷地への進入を拒まれ、回収出来ないかもしれない。
電線を覆うようにパラシュートが絡まり、停電を起こすかもしれない。
海側から砂地に着陸し、都市部に流れそうなら、中身が壊れてでもパラシュートを強制切り離しして想定着陸地点に落とすが、それでも万万が一の事もしておかねばならない。
「のすり」から第一候補の鳥取砂丘に向けて投下されたと連絡が入った。
投下において、凝ったコールサインは使わない事になっている。
「爆撃機がどうたら」という計画初期のクレーム(イチャモン、難癖)に神経質になった、他官庁から「爆撃を連想させるから、凝ったコールサインは使わないで下さい」と釘を刺された。
「鷲は舞い降りた」とか「神兵空より来たる」という悪乗りから「星の屑は成就された」や「アマノイワト開く」と言ったものまで使用せず、単に日時と場所だけに変わる。
そういうジョークを一切省いた第1回の投下実験だが、件のオペレーション何ちゃらが先走りして、地方自治体に連絡が入った時点でSNSで情報は拡散されてしまった。
機動力があるものが鳥取砂丘に走る。
予め候補地の中から、勘で先んじた者は、白レンズに砂が入らないようにしながら、ベストポジションを取ろうとしていた。
予め県警が、この日は観光客が多数入らないよう、テープやコーンや黄黒ロープで立ち入り制限区域を作っていた。
不要不急の外出が控えられている昨今の為、砂丘も特に混乱は無い。
「あ、来た」
高い位置にパラシュートが見える。
シャッター音が鳴り響く。
パラシュートは大きいと内容物を衝撃少なく落とせるが、反面風に流されやすい。
小さいと風に流されにくいが、代わりに落下速度が速くなり、着陸というより衝突となる。
人間、習志野にいる某狂ってる団は、そういう高速で降りるが、小型カプセルでは無理だ。
人間が操作しない、自動だから、長方形の移動可能型パラシュートも難しい。
絡まる可能性がある。
グライダー型回収機が求められたわけだ。
そこで、着陸想定地点から外れないよう、かつ速過ぎる落下速度を制御する為、一定高度までは高速パラシュートを使い、風で流されても大幅にはズレないと計算される高度で大型パラシュートを開いて衝撃少なく下ろす。
この最終パラシュート展開の瞬間は、絶好の被写体であったようで、歓声と共にシャッター音が連写で聞こえる。
そして着陸。
この「瞬間」もシャッターが切られまくる。
除染服を着たJAXA職員がカプセルに近寄り、マスク一枚でマスコミのカメラが職員を取り囲む。
本来、カプセルの開閉は研究所ですれば良い。
だが、試験素材だし、視聴者の期待に応えろという上からの指示があった為、カメラの前でカプセルを開く。
中からは観測機器が出て来ただけだった。
直後からSNSは
> つまんね
> やっぱり
> こんなもんだよね〜
> ( ´△`)
> (´・ω・`)
> orz
こんなので溢れた。
ゼータガ◯ダム第3話と同じサブタイトルですが、わざとです。




