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第84話 発見しました!

鷹也と鈴も目的地に到着していた。町中の駐車場に車を止め、車から降りた鷹也は鈴をベビーバギーへ乗せ、帽子を被せて、腰から下に毛布を掛けた。

手慣れたものだ。鈴も楽しそうにベビーバギーの上で体を揺すった。


「しゅっぱつしんこー」

「おーう!」


ベビーバギーを押しながらめぼしい思い出の場所を巡る。

一緒に暮らしたアパート。

元のバイト先。

良く行ったコンビニ。図書館。


「ママいないねぇ」

「そーだな……」


もとより承知の上だ。彩はそう簡単に見つかるわけはない。

鷹也とて、希望はあったものの見つかるとは思っていなかった。

そして鈴にも思いを託していた。

子どもの感は鋭い。

それが彩の元へ導いてくれるのではないかという思いもあり、鈴に彩探しの旅へと連れてきたのだった。


「まだ旅行が楽しいのかも知れないなぁ」

「そうでちねぇ。スズたんも行きたかったなぁ」


「こらぁスズ。言ったろう? ママはずっとおうちを守るお仕事をしていたんだ。パパが上げたお休みなんだ。ホントはそっとしてやりたいんだぞ?」

「うん。そうでち」


「でも早く帰ってきて欲しいしなぁ」

「うん!」


しばらく街の中にある良く行った飲食店をベビーバギーを押しながら捜した。

昼食時になる頃、鈴が体を揺さぶっておりたがったので、鷹也は安全ベルトを外して鈴をその場に降ろした。

毛布をたたみ、ベビーバギーをたたんでいると、鈴が光線銃を鳴らして前進し始めた。

そして人をかき分けて進んでいく。


鷹也は驚いた。その場にたたみかけたベビーバギーを追いて鈴が飛び出さないよう走って追いかけた。


そして希望!

鈴が彩を見つけたのだと!


鈴は女性の後ろ姿に向けて光線銃を打ち鳴らした。

その女性は驚いて振り向く。


「す、スズちゃん?」


鷹也がその場所に駆け寄ると、笑顔で光線銃を鳴らす鈴。そこには驚いた顔の近野と立花が立っていた。


「えへへ。おねいたんとおにいたん見つけたでち~」

「おー! 近野くんと立花くんじゃないか! どうして、こんなところに? ははーん」


鷹也と鈴は妖しく笑う。

二人は恋人同士なんであろうという笑み。

近野は血相を変えて手を振って否定した。

最悪にも一番見られたくない相手に見られてしまったのだ。

何とか弁解するしか無かった。


「全然そんなんじゃ無いんです。立花くんに美味しいパンケーキのお店があるって言われて連れてこられてしまって……。私としては不本意なんです」

「いやいや、そんなに否定するとますます怪しいなぁ。はっはっはっ」


「ちょっと課長、勘弁して下さい」

「分かった。分かった。立花くんなら、そう言うのもありそうだしなぁ。おい立花。私から近野くんを奪わないでくれよ。はは。じゃ、週末を楽しんでくれ」


鷹也は鈴と手を繋いで行ってしまった。

もちろん“私から近野くんを”の意味は立花と近野が結婚して仕事のパートナーである彼女を家庭に入れないでくれという冗談だ。

別にそんな風になってしまっても仕方がないことだが、それくらい近野を重要なパートナーだと言う意志も伝えたかったのだ。


立花もそう言う意味だと思ったが、一人だけ別な意味に受け取ってしまった者がいた。


「私の近野くん……私の近野くん……」


赤い顔をして、去っていく鷹也の姿を目で追いかけている。

立花は少し面白くなかった。全否定され、自分がここに居るにも関わらず、別な方を見ている近野のことを。

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課長その物言いは良くないっスよ
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