第49話 かくれんぼ
鈴も鈴で遊びたくて仕方がなかった。
「おねいたん、遊ぼ〜」
そう言って、お気に入りのウサギの人形を出して説明する。
近野は小さな子どもと遊んだことが余りなかったが、力一杯遊んだ。
鈴の方も近野を気に入ったようだった。
「ねぇ。おねいたん」
「なに?」
「スズたん、楽しい」
「そう? お姉ちゃんも楽しいなぁ」
「ふふ」
「ふふふ」
「ねぇ。かくれんぼする?」
「いいよ」
「パパが鬼だ〜」
「逃げろ〜」
「お、おぉい」
鷹也は課員達の連絡を待っていたが突然参加させられて、大きな声で数を数えさせられた。
その間に、鈴は近野の手を引いて隠れる場所に案内した。
「おねいたん、こっちだよ」
「うん」
小声で連れてこられたのが鈴の寝室にある、彩のドレッサーだった。
そのイスを引き出すと鈴一人が入れるスペースになるのだ。
「あ。スズちゃんしか入れないねぇ」
「おねいたんもどこかに隠れるんでち」
「え?」
鷹也の「もういいかい」の声が聞こえる。
近野は大声で
「まーだだよ」
と言って、廊下に走り大きな窓のカーテンの中に隠れた。
「もーいーよー」
と近野が言うと、スズも同じように返した。
鷹也がリビングから出て来る。
「さてさて、どこに隠れたかな?」
鷹也はキョロキョロと辺りを見回した。
隠れるところなど限られている。
しかし、二人ともなかなか上手に隠れたものだ。
だが、カーテンにふくらみが見える。
鷹也がカーテンをめくると、ふわりと近野の髪の毛が静電気で浮いた。
いつもと違う服。
二人きりの廊下。
鷹也の胸がなぜかトキンと鳴った。
「み、見つかっちゃった」
だが、その言葉に鷹也の反応は遅い。
「あ。近野くん、見つけた……」
互いの目を見つめ合う二人。なぜかそのまま動けずにいた。
「あの。課長?」
「う、うん」
「スズちゃん、探さないと」
「そ、そうだったな」
その時、鷹也の携帯が鳴った。
課員が全員駅に到着したらしい。
「あ。あいつら着いたみたいだ」
「あ。そうなんですね」
「あー……。スズを連れて迎えに行ってくるが……。キミ、一人で大丈夫か?」
「あ。大丈夫ですけど、どうでしょう? チャイルドシートがあっては4人乗れませんよ? 私がスズちゃんの面倒見てるんで、チャイルドシート降ろして一気にみんなを乗せて来ては?」
鷹也はなるほどと思った。
「そうかぁ。じゃ、頼めるか?」
「大丈夫ですよ。私たち仲良しですもん」
「分かった。頼む。おーい。スズ!」
「もーいーよー」
「ちょっと出て来なさい」
「もーいーよ」
「なんだアイツ」
「まだかくれんぼですね」
「スマン。待たせるのも悪いから行ってくるよ」
「あ、ハイ」
鷹也は家を出て、チャイルドシートを車庫に降ろし、一人駅に向かって車を走らせた。




