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第10話 神は死んだ。




「ねぇ……、実際のところメイは史郎君ってどんくらい進んでんのよ?」

「え……?」


消灯後、布団を敷き詰めた室内で突如話を振られてメイは大きく目を見開いた。

ここ数日は深夜までおしゃべりをしていたが、その話の中で突如一人の女子がぶっ込んできたのだ。


「ちょっと……いきなり、どういうこと……?」


まさかここまであからさまに聞いてくるとは思っておらず思わずたじろぐメイ。

しかしメイの恋の行方は多くの女子の関心があるところで


「どうもこうもないでしょ!? メイと史郎君って好き合ってんでしょ? どこまで行ってんのかって聞いてんのよ!?」

「そうそれ! 私も聞きたかった!」

「なかなか雛櫛だと聞きづらいオーラがあるからな!」


といきなり寄って集って部屋にいた十名近い女子が食いついてきた。

それをカンナが


「おいおいお前らメイが嫌がることはやめろよ」と諫めるが

「いやカンナ、聞くぐらい良いじゃない?」

「そうよそうよ」


と数の前には抵抗しきれない。

あっという間にメイは取り囲まれてしまった。

そして


「大丈夫よメイ。なんだかんだでここにいる女子たちは貴方の味方だから」


なんて言われてしまうと、抵抗出来なかった。


「ま、まだ何も……ッ」


と顔を赤く染めながら答える。

すると


「「おぉぉぉ~~~」」


今まで聞きたくても聞けなかった新情報の開示に女子たちは感嘆の息を漏らす。


そして、そこからは質問大会である。


「てゆうか史郎君ってメイのこと明らかに好きだよね? いつもメイのこと見てるし。もう告白とかはされたの?」

「い、いや、されてない……! それに見られてなんかもないし、好かれているかどうかなんて私には……」

「いやいや明らかに史郎は好いてるでしょ? いっつもメイのこと見てんじゃん? ねぇ皆」

「うん、ガン見だよね~」

「そういうの見るとメイには敵わないなって思うのよねぇ」

「そ、そうかな……?」

「うん、ガン見よガン見。ボケーってずっと眺めていることすらあるもの」

「てゆーかメイは史郎君のことが好きってことで良いのよね??」

「そ、それは……!」


話の中で突如核心に迫ることを聞かれ返答に窮するメイ。


「おいおい、さすがにお前はぶっこみ過ぎだろう……」

「まぁまぁカンナ、これは皆の関心事なんだから……」


そして、これは何よりも彼女たちが欲しい言質。

だからこそ彼女たちは見かねて割り込んだカンナをやんわり押し返すと


「そっかー好きじゃないなら私が史郎君のこと狙っちゃおっかな~」

「そうね? メイが狙ってないのなら誰かが貰ってあげないと可哀そうだものね」


などと追撃を加える。

そしてそれが効果的だったようだ。


「ッ!?」


あからさまな挑発にメイは大きく目を見開き


「わ、私は九ノ枝君のことが好き……!」


彼女たちに対抗した。


「だから誰も取っちゃダメよ……ッ!」

「「「おぉぉぉぉぉ~~~~~」」」


メイの健気な抵抗に観衆が感心した。


◆◆◆


「てゆうかお前ら今日見たか柏手さんの胸!?」

「それな!? めっちゃ揺れてたよな!?」


一方でここは男子部屋。

女子が盛り上がるのと同様、男子トークで盛り上がっていた。

だがその内容は女子とは雲泥の差があり、その内容とは


「一度でいいからあの胸揉んでみたいぜッ!」


THE・下世話……ッ!

心底下らない会話を彼等は繰り広げていた。

女子の会話の比べなんと男達の会話の生産性の無いことか……ッ!

もし神視点で眺めている者がいるのならば涙を禁じ得ないほどの歴然たる知能レベルの差である。


そしてそんなもし女子が聞いたのなら心底ドン引きすること請け合いの会話を前にし、史郎はというと


(ついに来たかこの時が……!)


口元を抑え思わず零れそうになる涙を必死に堪えていた。

なぜなら史郎。

今でこそチヤホヤされているものの、去年までは完全な陰キャラ。

この手の宿泊行事の夜中トークは羨望の対象であったのだ。

感動の涙だって流れそうになるというものである。

そして目の前には史郎の求めていた――


「やっぱ学年一の巨乳は柏手さんだよなぁ」

「せやろなぁ? Fだろう?」

「Fとかマジかよ……ッ!」


――楽園(エデン)はある……ッ!

なら、飛び立とう……!


「フフフ……」


「なんだ?史郎不敵な笑みを浮かべて」

「一体どうしたっていうんだ?」


不敵な笑みを浮かべる史郎に周囲の視線が集まったところで、史郎はニヤリと笑い宣言した。


「真の巨乳は別にいるぜ……?」


「「「なにぃ!?」」」


部屋中が騒然となった。


◆◆◆


一方でこちらは女子部屋。


「誰も取っちゃダメだから……ッ!」


一歩踏み込んだメイの告白に、


「てかナナはさ、史郎と同じ『赤き光』じゃん? 実際のところどーなのよ?」

「えッ私!?」


話はさらに一段奥に踏み込んでいた。

急に話を振られ泡を食うナナ。

そんなナナを女子は問い詰めた。


「そうよナナよ。ナナは史郎君の相棒なんでしょ? なら史郎君がメイのこと好いてるかも知ってるでしょう?」

「え~~あぁ~~~……」


ナナは思わず言い淀んだ。

実はナナは史郎に言い含められているのだ。

絶対に『言うな』と。


だから先ほどまで皆と一緒になり驚き心の中では


(すごーい! 史郎両想いだよぉーーーー!!)


と史郎の幸福を心底祝福していたナナだったが


(やばいかも……!)


一転、焦り始めていた。

脳裏によぎる。

ナナが史郎に無断で晴嵐高校に通い始めた日の夜


『お前は馬鹿でおっちょこちょいだから何するか分からないからハッキリ言っておく……ッ バラしたら命はないと思え……ッ』


あの時の史郎の鬼のような形相が。


そして友達と史郎の間で板挟みにされたナナの取った行動はというと


「ひゅーひゅー」

「いや全然、口笛更けてないわよ?」

「いや無理よ絶対! 言ったら史郎に私殺されちゃうもん!!」


ナナは涙を零した。


◆◆◆


一方で再度、こちらは男子部屋。


「真の巨乳は別にいるぜ……?」


との史郎の大胆告白で部屋は騒然としていた。


「そんな馬鹿な!?」

「あれ以上がいるというのか!?」


室内は阿鼻叫喚で様々な憶測を呼んでいた。


「ど、どういうことだ!? 聞かせろ史郎!?」


たちまち史郎は男子達に囲まれる史郎。

田中には肩を掴まれガンガン上下に揺らされた。

動揺で目を大きく見開くルームメイトは一様に信じられないといった声を上げた。


「柏手さんがダントツじゃないか! あれ以上なんてそうそういないはずだぞ?」

「そうだよ! あれ以上がいるなら話題になっているって!?」


唾を飛ばし噛みつく田中に史郎は冷徹に告げた。


「フン、俺を誰だと思っている?」


と。


「「……ッ!?」」


思わず押し黙るルームメイト。


(お前は史郎だよ……)

(お前はお前だよ……)


脳内でそんなことを思うが、誰もが史郎が何を言っているか分からなかった。

そんな意味を図りかねている友人たちに史郎は告げた。


「俺はオリジナル能力者で、自分で言うのは何だがテレキネシスに関しては天才的だ……! そしてテレキネシスを使えば俺は体内のホルモン、神経伝達物質その他もろもろを操作出来る……! そしてアドレナリンを全開にし集中力を極限まで高めれば、」


そして史郎は自身の秘めたる能力を開陳した。


「その者の運動する姿を見ればスリーサイズくらいなら簡単に把握できる……ッ!」


「「「なにぃ!?」」」


史郎の告白にルームメイト全員が目を剥いた。

口々に言う。


「最強じゃないか!?」

「これ以上に世の中生きていくうえで必要な能力ってあるのか!?」


また生徒は当然心の中で思う。


(史郎の能力でここまで下らないと思ったのは初めてだぜ……!)

(てゆーか隠れてそんなことやってたのかよ……!)

(先日の宣誓が台無しだぜ……!)


だがそんなもやもやとした感情を感じてなお、生徒達は真の巨乳保有者の名前を渇望し

田中は皆を代表し尋ねた。


「してその名前、なんとなるや!」


そして史郎は答えた。


「一番デカいのは二年D組所属、倉橋ッ……! サイズはなんとGだ!!」


「「「「おおおおおおおおおおおおおおおお」」」」


史郎の告白に男子の部屋は最高に盛り上がった。

地鳴りのような歓声が上がる。

果ては


「神!」「神!」「神!」「神!」「神!」


全ての女子のスリーサイズを非合法的に把握できる史郎を讃えだし、神と称えられた史郎はというと


「アハハハハハハハハハハハハハ!」


高らかに笑った。

そう、このトークこそ史郎の望んだもの。

それでしかも友人たちから讃えられるなんて最高じゃないか恍惚に浸っていると



「うっせぇぇぞテメーら!!??」



騒ぎを聞きつけたリツが部屋に突入してきて楽園は一瞬で地獄と化した。


「「「「ぎゃああああああああああああああああああ二子玉川ぁぁぁぁぁ!?!?」」」」


突入してきた(リツ)に震え上がる生徒達。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁすいませんしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


数名は余りの恐怖であっと言う間に土下座に移行した。

そして史郎はと言うと


「アハハハハハハハハハハ!! ……え?」


数瞬遅れて事態の推移を理解した。

そしてその瞬間、神は死んだ。God is dead

顎が外れそうなほどの高笑いをしていてすぐには事態に対応できなかった。

そして史郎が真顔に戻ったころには


「ほう! 随分と楽しそうだなぁ史郎!? え?」


目の前には血眼の(リツ)がいて


「あ、いやこれは違うんだよ。これはちょっと……あの、痛い! やめて! 痛い! リツさん痛い!」

「貴様生徒の監督が私の責任だと知っての狼藉か!? ちょっと来い説教してやる!!!」

 

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


史郎はリツの部屋に連行された。


◆◆◆


「ど、どうしたの九ノ枝君……?」


翌日、目にクマを作り茫然としている史郎を見つけ、メイは思わず尋ねた。


「な、なんでもない……」


史郎は一晩に及んだ説教を思い、息も絶え絶え答えた。









史郎君が幸せそうで何よりです(小並感)

深夜テンションで何とか書き上げました……。

深夜テンションスゴイ……(´・ω・`)

話が欠片も進んでいませんね。次話で進めます。

よろしくお願いいたします。

それと先日よりジャンルをアクションからローファンタジーに変更しました。

ここ最近アクションしていないので……。


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