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文化祭初日

「いらっしゃいませー!」


 文化祭初日。

 ウチのクラスの出し物であるメイド喫茶は盛況だ。


 当然と言えば当然だ。


 男子もメイド服を着ているというのに加え、美少女の張替だっているのだ。話題にならないはずがない。

 今やメイド喫茶は満席となり、外で順番待ちが出来ているほどだった。


 新しいお客さんが入ってきたので、張替が対応しに向かう。


「いらっしゃいませ、ご主人様!」


 満点の笑顔を浮かべたメイドの張替が接客すると、男性客が次々と落ちていくのが分かる。

 凄いなぁと見てると、次の客が来た。


「いらっしゃいませぇっ! ご主人様っ!」

 野太い声と共に現れるメイド姿の古木と他の男子達。

 そのむさ苦しさに男性客は気圧されていた。


 一方で僕はというと。


「い、いらっしゃいませご主人様……」


 恥ずかしくて俯きがちに小さな声で挨拶する。

 「え?」と聞き返されてしまった。


「ちょっと、声小さいよ」

「いや無理だって……」

 隣に張替が来て、僕の声が小さい事を指摘する。

「せっかくかわいいんだから、自信持ちなって」

「いや自信とかじゃなくて……」


 僕は自分の姿を見下ろす。

 長い黒髪のウイッグを被って、ばっちりとキメたメイク。

 僕は張替同様完璧なメイドとなっていた。


 逆に可愛くなりすぎなんだよ!

 なんで僕だけこんなガチな女装をさせられてるんだ!?


 めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!?


 いくら見た目が女でも、中身男子の自分が「いらっしゃいませご主人様!」なんて地獄だろ!

 絶対夜中に思い出して悶絶する自信がある。


 ああ、ネタに全振りできる彼らが羨ましい……。


 それに……。

 お盆と髪の隙間からちらりと周りを見る。

 目が合った男性客が目を逸らした。


 さっきなんかめっちゃ見られるし!

 しかもたまに「かわいくね?」とか聞こえて来るので気が気じゃない。


 手に持ったお盆で顔を少し隠す。


 ……なんでちょっと盛り上がってるんだよ!


「せんぱーい! 来ましたよー!」

 大きな声と共に魚形が現れた。


 そして僕を「うーん」と唸りながら見始めた。

「……なんか前より気合い入ってません?」

「え、やっぱりそうだよな……?」


「でも、可愛いから問題なしです!」

 ぐっと親指を立てる魚形。

 魚形は席に座って僕の事をにこにこと見つめている。


「あんまり見るなよ……」


 パシャリとスマホのシャッター音が鳴る。

「なんで撮るんだよ!」

「いや良い表情だったので……」

 魚形が至極疑問といった表情で首を傾げる。

 なんか最近張替に毒されてない……?


「とにかく! 注文!」

 机にメニュー表をばん! と置く。

「あはは、じゃあオムライスで」

 魚形はそう言ってから、「あ」と言って注文に付け足した。


「“魔法”もつけて下さい!」

「えぇ!?」

「やっぱりメイド喫茶と言えばこれ、ですからね!」

「ほんとにやるの……?」

「はい!」

 魚形がにっこりと笑顔で頷く。


「分かった。ちょっと待ってて……」

 キッチンに「オムライス一つ」と伝えて、出てきたオムライスを魚形の所まで持っていく。


 魚形がわくわくした顔で僕を見てくる。

 深呼吸。


 落ち着け、これは恥ずかしがったら負けだ。

 よし。


「それじゃ一緒に──」


 手でハートの形を作る。


「おいしくな〜れ! 萌え萌えキュン!」

「萌え萌えキュン!」


 オムライスに“魔法”をかけた。


 ……。

「死にたい……っ!」

「このオムライス最高です先輩!」


 顔を手で覆ってしゃがみこむ僕と、ぱくぱくと一所懸命オムライス頬張る魚形。


 僕は涙目で立ち上がってテーブルに置かれた魚形のスマホを指差す。

「ていうか動画撮るなよ!」

「いやこれもオプションの内ですから!」


「そうだけど! 消せ!」

「嫌ですね!」


 僕がスマホへと手を伸ばすのを、魚形はオムライスを食べながら器用に躱した。

終わらせかた分からなかったから適当になっちゃいました…。


明日は大きなモンスターを倒しに行くのでお休みです!

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[一言] いつかメイド喫茶生きたい
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