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燃える聖樹

 ラウルト家の屋敷から見えたのは、燃え上がる聖樹だった。


 大地は揺れ、まるで聖樹が苦しんでいるようだった。


 アルベルクは胸を押さえる。


「アルベルクさん!」


 ノエルが駆け寄ると、アルベルクは苦しそうにしていた。


 右手の甲を見ると、聖樹の加護――紋章が輝いている。


「――聖樹が攻撃され怒り狂っている。曖昧なイメージだが、お前たちは何をしているのかと怒られた気分だ」


 ノエルが困った顔をしていた。


「聖樹が怒っている?」


「不甲斐ない私たちに腹を立てているのかもしれないが、何を伝えたいのかが分からない。急いで火を消さないといけないが――」


 ラウルト家の領地ばかりか、共和国中が大変なことになっている。


 地震もそうだが、問題は戦闘の余波だ。


 光線が聖樹に命中すると、聖樹が悲鳴を上げるような音がした。


 バチバチと光が周囲に飛び散り、聖樹の枝を落としてしまう。


 遠くから見ていると、枝はゆっくりと落ちて土煙を上げている。


 ノエルは回収した苗木を抱きしめていた。


「私には何を言っているのか分かりません」


「君はその苗木の巫女だ。繋がりがないから仕方がない。だが、このまま聖樹を失うわけにはいかない。私は戦場に向かう」


「戦場に? アルベルクさんがいっても――」


 実権を奪われたアルベルクには、もう何をすることも出来ない。


 それは本人も分かっていた。


「もはやここまでだ。セルジュには戦争を止めさせる」


 ノエルは苗木の入ったケースを抱きしめ、


「――私もいきます」


 アルベルクは駄目だと言うが、ノエルは絶対に譲らなかった。


 根負けしたアルベルクが言う。


「なら、鎧を一機確保しよう。こっちだ」


 二人が戦場に向かおうとしていた。



 聖樹に近付く飛行船は、消火活動を行っていた。


 魔法で水をかけ火を消しているのだが、火の勢いは止まらなかった。


 消火活動に来たフェルナンが甲板に出て声を張り上げている。


「火を消すんだ! 聖樹が燃えてしまえば大変なことになる!」


 聖樹がなくなれば共和国が終わる。


 甲板から戦場を見れば、今も激しく戦っていた。


 信じられない光景が繰り広げられ、余波で爆風が来て飛行船が揺れる。


 部下の一人が叫ぶ。


「フェルナン様、もう無理です。紋章から聖樹の力を感じません。魔力の供給がされていません」


 フェルナンが自分の右手の甲を見て、輝きが弱い紋章に奥歯を噛む。


(こんなことになるなど、誰も予想など出来るものか。知っていれば、セルジュが戦うのを止めていた。セルジュ、お前は相手が同等の力を持っていると知っていたのか?)


 自分たちのプライドのためにセルジュに賛成した自分が情けなかった。


(ここからどう動くにしても、聖樹を失うわけにはいかない。何としても聖樹を守らなければ、共和国の未来がない)


 決意するフェルナンだったが、光が見えた。


「――え?」


 フェルナンの乗っていた飛行船は光に飲み込まれ、そして消えてしまうのだった。



 戦場に向かう小さな飛行船が一隻。


 それにはクレマンが乗っていた。


 レリアの姿もある。


「レリア様、今から戦場に向かってもどうにもなりませんよ!」


「わ、分かっているけど。――けど!」


 ――リオンがここまでするなど思っていなかった。


 正確には、ここまで出来るとは思わなかった。


 このままではまずいことになると思い、セルジュと連絡を取るために戦場に向かうのだった。


「戦わせちゃ駄目だったんだ。こんなことになるなら、もっと違う方法があったのに」


 どちらが勝つにしても、その余波で共和国はボロボロになっていた。


 既に想像を超えて被害が出ている。


 こんなはずではなかったと、レリアは頭を抱えて涙する。


「姉貴もいない。聖樹の苗木もなくなっていたわ。アルベルクもいなかった!」


「レリア様」


「――何でここまで出来るのよ」


 泣いているレリアに、クレマンが現実を突きつける。


「リオン君――バルトファルト伯爵を怒らせたのでしょう。彼は、敵には容赦のない騎士のようですから」


「でも!」


「それだけのことをしてしまったのです! 伯爵を迎えに来た婚約者をさらい、挑発行為をしたのはこちらです」


 クレマンの声に、レリアはようやく目が覚めたような気がした。


「だ、だって、イデアルが」


 それでも、すぐにイデアルの名前が口から出てくる時点で反省の色は薄い。


「イデアルに従った結果が今です。我々は、怒らせてはいけない相手を怒らせた。そういうことなのです」


 レリアがその場に崩れるように座り込み、両手で顔を覆った。


「どうすればいいのよ」


「――私にも想像がつきません」



 周囲を吹き飛ばしながら戦うルクシオンとイデアル。


 双方、エネルギーシールドを貫き、船体にダメージがあった。


 イデアルが戦艦の主砲でルクシオンを撃てば、ルクシオンの船体に穴を開けてしまう。


『――っ!』


 だが、イデアルもボロボロだ。


 既に多くの装備を失い、船体からは煙が出ていた。


 ルクシオンはイデアルに言う。


『このまま削り合えば、私の勝利です。いつまで無駄なことを続けるのですか?』


 どう考えてもイデアルの方が先に沈む。


 それなのにイデアルは戦いを止めなかった。


 周囲の味方を吹き飛ばし、それでもルクシオンに戦いを挑んでくる。


『しょせんは移民船。戦いを知らない。戦いというのは、勝てる条件下で行うものですよ』


 イデアルが自信満々に言うと、共和国の大地から砲台がせり上がってくる。


『――防衛装置がまだ動いている?』


 イデアルが整備を続けていたのか、軍事基地の設備がまだ生きていた。


 姿を見せるのは大砲、ミサイル――それらが全てルクシオンに向いている。


『私は長い時を待った! この時のために私はぁぁぁ!』


 イデアルの叫び声と同時に、ルクシオンに四方から攻撃が襲いかかり爆発が起きる。


 ルクシオンの本体がゆっくりと本体を斜めに傾け、降下していく。


 設備は一度使うと爆発したのか、動かなくなっていた。


『奥の手はこれですか』


『ここは私のテリトリーです。甘く見ましたね、ルクシオン!』


 ただ、ルクシオンは焦らない。


『いいえ、甘く見たのはイデアル――貴方だ』


 イデアルの真上――ゆっくりと移動してきた飛行船が、船首をイデアルに向けていた。


 船首を真下に向ける形になっているのは――パルトナーだ。


 大きな大砲を外付けしており、放つと一発で大砲が吹き飛び使い物にならなくなる。


 イデアルの船体に穴を開けるも――イデアルはまだ沈まない。


 即座に反撃され、パルトナーはシールドを展開するも光線に焼かれ落下してくる。


 パルトナーの攻撃により空いた穴から、爆発や煙が噴き出す。


 ゆっくりと降下する船体――両者相打ちのような状況で、イデアルは笑っている。


『この程度の切り札を予想していないと思っているのですか! ですが、一撃を入れたことは褒めておきましょう』


『貴方も落ちるのにのんきなことですね』


『落ちる? ルクシオン、お前は何も分かっていない。相打ちではないのですよ。この戦いは私の勝利だ!』


 ゆっくりと降下していくルクシオンは、イデアルの態度が理解できなかった。


『どうして我々が戦っているのでしょうね? 手を取り合うことも可能だったはずだ』


 イデアルはルクシオンに答える。


『――本当の脅威に対抗するためですよ』


『脅威?』


『全ては私の支配下に置かれてから説明しましょう。お前を得られれば、私はようやく“約束”を果たせる』


 イデアルは既に勝利したつもりのようだ。


 だが――急にイデアルの様子がおかしくなった。


 ゆっくりと降下していた輸送艦が、いきなりエンジンが停止して急激に落下する。


『な、何が起きた? ウイルス? どうしてこんなことが!』


 混乱しているイデアルに、ルクシオンが出力を上げつつ答えた。


 落下するふりも終わりだ。ゆっくりと船体を水平にしつつ、


『――パルトナーは良い仕事をしてくれましたよ。もちろん、“クレアーレ”もね。よくぞ、貴方の本体を探し出してくれましたよ』


『クレアーレ?』


『おや、気付かなかったのですか? 我々は貴方の本体を探していたのです。輸送艦に人工知能を載せていないのでしょう? どうりで、パルトナーの攻撃を受けても慌てないわけだ』


『まさか』


『クレアーレは研究所にあった人工知能を再現しましてね。リソースの問題もあるのですが、今回はいい仕事をしてくれました』


『き、貴様“ら”ぁぁぁ!』


 全てを察したイデアルが叫ぶと、ルクシオンが説明をする。


 どこか余裕すら感じる電子音声だった。


『人工知能本体を船から降ろし、地上から輸送艦を操作――それが貴方の余裕の正体でしたね。イデアル――見抜いたのは私のマスターですよ。どうです? 私のマスターは優秀でしょう?』


『まさか、先程までの戦闘も――』


『はい。手加減するように命令されていました。マスターに出来るだけ被害は抑えるようにと命令されていましてね』


 もっとも、被害を出さない相手は民間人に限定しており、それ以外は無視していた。


 イデアルが声にならない電子音を発すると、落下した輸送艦が爆発した。



 軍事基地跡。


 入り込んだクレアーレは、護衛用のロボットたちを従えてイデアルの本体にハッキングしていた。


 球体ボディからコードを延ばし、アクセスしてやりたい放題だ。


『私のことを無警戒とか、イデアル君は油断しすぎよね。でも、間に合ってよかったわ。間に合わなかったら、マスターとひねくれ者にネチネチ文句を言われるところだったもの』


 色々とデータを抜き取っていると、ルクシオンから帰還命令が出る。


『もう少しだったのに。それにしても、無理な改造をするわね。共和国というか、大陸を取り込む計画とか、こいつぶっ飛んでいるわ。ここまでする理由は何かしら? う~ん、もっと詳しく調べたいわね』


 クレアーレにも、イデアルがかなり無理をしていると感じられた。


 自身の機能を共和国のある大陸に置き、輸送艦自体には兵器を積んで迎撃兵器として扱っている。


 将来的には大陸を武装化して、要塞にしようと計画していた。


 撤退しようとするクレアーレのもとに、イデアルがロボットたちを引き連れやってくる。


 球体型の子機――予備機だろう。


『――見つけた』


 赤い一つ目を怪しく光らせているイデアルを見て、クレアーレはコードを抜いてすぐに撤退するのだった。


『見つかっちゃった。ごめんね~、でも貴方がマスターを怒らせるから悪いのよ。性能差があって、それでも余裕を見せる貴方に隠し事の一つや二つあるだろう、ってね! その一つがまさかの的中! マスターって怒ると凄いのね』


 脱出するクレアーレは、笑いながら逃げていく。


 イデアルの方は、内部を見て悔しさからか声が荒ぶっていた。


『やりたい放題にしてくれましたね』


 悔しがった理由は――内部に爆弾が仕掛けられていたためだ。


 クレアーレが逃げると同時に爆発すると、イデアルの子機も爆発に巻き込まれる。



 遠くから戦場を見守っていたリビアたち。


 そんなリビアたちのもとに、リコルヌを先頭に王国の飛行船がやってくる。


 リコルヌから飛び出してくるのは、エアバイクに乗ったアンジェだった。


 後ろには仮面の騎士もしがみついている。


「アンジェ!」


 笑顔を見せるリビアを見て、アンジェは甲板に乱暴に降りると駆け寄ってきて抱きつく。


「無事だったか。よかった。本当によかった。――何かされなかったか? 怪我はないか?」


 リビアの様子を確認していると、仮面の騎士がお尻を押さえながらヨロヨロとやってくる。


 乱暴に降りた衝撃でぶつけてしまったようだ。


「いったいどうなっている?」


 痛みにこらえて聞いてみれば、ジルクが呆れた顔で答えていた。


「ようやく落ち着いたところです。一時はどうなるかと思いましたが、どうやら勝った様子ですよ」


 アンジェが戦場を見た。


「共和国の船が一隻も浮いていないのはどういうことだ?」


 ブラッドが肩をすくめていた。


「分からない。ここからだと判断が出来ないけど――味方に落とされていたように見えたけどね。というか、出てきてよかったの?」


「リコルヌを前に出さなければ、あの光で大地が穴だらけにされていた。リオンへの説明は私がする」


 リコルヌを前に出し、旧レスピナス家の領地を守る盾になっていた。


 リビアがアンジェを見る。


「アンジェ、リオンさんは無事でしょうか?」


「無事だと思いたいが、戦場は何が起きても不思議じゃない。――我々もいこう。リオンを迎えに行く」


 リビアが頷いた。


「はい」



 イデアルの爆発を確認した俺は、操縦桿を握り直す。


「そろそろ終わりにするか」


 目の前にいるギーアはボロボロだ。


 どれだけ人間離れしたパイロットでも、機械の反応速度にはかなわない。戦闘データから、次の行動を予測するのも容易い。


 癖みたいなものはあるからね。


 たとえパターンを変えてきても、なれていない動きには迷いがある。そこは俺が手伝えば、アロガンツはギーアに対して圧倒的な力を見せてくれた。


『こんな――どうしてだ。同じチート戦艦が用意した機体なのに』


「お前の相棒と、俺のルクシオンの性能の差だ。補給艦が頑張ってはいたようだが、ルクシオンの敵じゃなかったな」


『最初から知っていたのか?』


「補給艦の仕事は前に出て戦うことじゃないだろうに。けど、イデアルも頑張ったんじゃないか? 裏であれこれ動き回って、自分の船体を迎撃兵器の一部にするんだからな。ここで戦いたいわけだ」


『――どういうことだ?』


 何も知らないのだろう。


 こいつが何もしなければ、憐れに思って手を差し伸べたかもしれない。だが、その段階は過ぎている。


「ほら、さっさと落ちろよ」


 アロガンツを動かし、ギーアに回り込むと蹴り飛ばした。


 空中で回転しながら何とか態勢を立て直そうとしているが、損傷が激しく動きも悪い。


 そんなギーアに大剣を振り下ろしてやれば、叩き付けた結果になってしまった。


 ギーアが大地に落ちて、そしてギチギチと音を立てて――そしてその場から動けなくなる。


 立ち上がろうとしているが、ボロボロでまともに動けそうもない。


 周囲を見れば共和国の飛行船や鎧が残骸に成り果てていた。


 イデアルの奴も随分と味方を巻き込んで暴れ回ったものだ。


「――全部吹き飛ばしやがった。本当に容赦がないな」


 セルジュの悔しそうな声が聞こえてくる。


『くそっ! 次は絶対に――』


 その言葉を聞いて呆れるしかなかった。


 いや、俺も人のことは言えないな。


「お前に次はない。ここで終わりだ」


 大剣を振り上げ、アロガンツを降下させるとそのままギーアを破壊するために振り下ろした。


『嘘だろ。ま、待ってくれ! 降参するから! 俺は見逃しただろうが!』


 アロガンツを止める気にはなれなかった。


 セルジュが叫んでいる声を聞きながら大剣を振り下ろすと――割り込むように一機の鎧が姿を見せた。


 丸腰でセルジュを守るように両手を広げている。


「――っ!」


 咄嗟に大剣を止めて狙いを外すが、割り込んだ鎧に当たってしまい大剣は地面に激突。


 土煙を上げた。


 衝撃で割り込んだ鎧は吹き飛び、ギーアも転がった。


 割り込んだ鎧の胸部が外れ、そこに乗っていたパイロットの姿が見える。


「――アルベルクさんか」


 父が子を守るために飛び出してきた。


 どんなに酷くても我が子ということだろう。


 屋敷から逃げられるようにしてはいたが――まさか戦場に来るとは思わなかった。


 セルジュも気が付いたのか、ギーアから降りてアルベルクさんのもとへと向かう。


 俺はギーアに大剣を突き刺し、トリガーを引いた。


 アロガンツの右腕から発生した衝撃波が、大剣に伝わるとギーアは爆発して粉々になる。


 周囲を見れば、苗木を持ったノエルの姿もあった。


「生身は危険だぞ。ルクシオン、そっちはどうだ?」


 ルクシオンに連絡を取ると、


『こちらは終わりました。ただ、警戒のために動けません』


「そっか――」


 アロガンツから俺は外の様子を見ていた。


「何でだよ! 何で!」


 セルジュはアルベルクさんに声をかけている。


 自分をどうして庇ったのかと言っているのだろう。


 怪我をしているのか、アルベルクさんの顔色は悪い。


「――お前は生きなければならない。お前は、自分のしたことの責任を取らなければ――っ!」


 血を吐いたアルベルクさんの様子から、傷は深いようだ。


 ノエルが俺の側に寄ってくる。


「リオン、お願いだから話を聞いて!」


 コックピット内にアラートが鳴る。


 近付いてくるのは、小型の飛行船だった。


「クレマン先生と――レリアか?」


 降りてくると、レリアがセルジュを見て目を見開いていた。


 粉々になったギーアに、周囲には共和国の飛行船や鎧の残骸――。


 遠くの空では、アインホルンやリコルヌが来ている。


「迎えに来たのか?」


『どうしますか?』


「――どうせ終わりだ。あまり近付かないように言え」


『既に小型艇を出したようです』


 アンジェたちが乗り込んでいるらしい。


「気をつけるように伝えろよ」


『はい。五人に護衛をしてもらいましょう。それから――』


 俺はレリアの方を見た。


 涙目で俺の前に立っているが、背中にセルジュたちを庇い何か言いたそうにしている。


 ――そんな目で俺を見るな。



 リオンたちから少し離れた場所。


 落ちた共和国の鎧から這い出てくるのは、エミールだった。


 怪我をしているのか、腹部を押さえている。


 血が滲んでおり、顔色は悪かった。


「レリア――僕は必ず戻るから。ちゃんとレリアに伝えないと」


 血を吐き、力尽きようとしていると――大地から植物の(つた)が生えて、エミールの腹部を癒やしていた。


「聖樹の加護? あ、ありがとう」


 エミールは蔦を軽く握りお礼を言って微笑むと、痛みが消えたことに安堵した。


「いかないと。レリアの所に戻らないと」


 何とか立ち上がると、遠くにレリアの姿が見えた。


 黒い鎧と向き合っている。


「レリア! どうしてこんな――え?」


 そして、レリアの後ろにはセルジュの姿があった。


 まるで黒い鎧からセルジュを命懸けで守るように見えた。


「そうか。そこまでしてセルジュを――レリア、僕は君を信じていたのに――」


 エミールは俯き、そして顔を上げると血走った目をしていた。


「――あは」


 不気味に笑うエミールの体に蔦が絡みついていた。


 そのまま――ゆっくりと歩き出す。


 その右手の甲には、六大貴族の紋章ではなく――守護者の紋章が輝いていた。


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― 新着の感想 ―
安牌君すら暴走した、立ち回りがゲーム感覚だから失敗するかも、この世界で本当に生きている自覚はここで初めて意識したかも、転生者同士でも互い立場と責任がある、安易に手を出す存在ではない、ただイデアルの悪意…
[一言] やったぜ!いつだって余計な闇落ちで敵を作るのは被害者のフリをした他人を信じられないクズな加害者だ!
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