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50話 劣化版フェルザヴァイン

 ______登場人物______


【佐藤 (Lv.5)】一人称は平仮名の『おれ』。職業は踊り子。爬虫類が大の苦手。

【エルリウス (Lv.37)】雰囲気がフェルザヴァインに似たイケメン戦士。

【トアタラ (Lv.7)】呪いによって人間に変えられてしまった少女。

【リリサ (Lv.29)】ロリっこフェイスの歌女(うため)。呪いによって体を男に変えられた。

【? (Lv.1)】仮面をつけた案内人。アンナイニンと称して、武闘大会に参加登録。





 ノックが聞こえると、同行係員が廊下にでていった。

 彼は戸を開けたまま、ノックの相手と言葉を交わす。

 そして戸をさらに大きく開け、おれに告げた。


「2回戦が始まります。こちらへお願いします」


 いよいよか。

 相手はあのエルリウスだ。


 同行係員に連れられフィールドへと向かう。

 途中で彼がふり向いた。不思議そうな顔を浮かべている。


「秘密の魔法でも持っているのでしょうか。ずいぶんと余裕ですね」

「おれが、ですか?」


 そんなはずはないのだが。


「はい。武器も持たずに2回戦に挑まれるなんて」

「武器?」

「おや、ご存じありませんでしたか。2回戦から武器の使用が認められています」


 そんなことは聞いてない。受付のときも武器の説明なんてなかったはずだ。


「武器の使用許可の連絡ってありましたっけ」

「特にはしていませんが、大会に出場しようとする者ならば、いわずと知れたルールです。何しろ大会が本当に盛りあがるのは、武器使用の許される準決勝以降ですから」


 おれは知らねえよ。先にいってくれよ!


「あの、トイレいってきてもいいですか。おしっこ!」


 参加者用トイレへと駆けていった。

 用具庫を発見。モップのヘッドを足で踏み、柄を両手でしっかり持った。力いっぱいひいてみる。すっぽりと棒の部分が抜けてくれた。


 同行係員のもとに戻った。


「お待たせしました」

「その棒はどうされました」


 おれは首をかしげた。


「はあ? 武器ですが何か」

「どこから持ってきたんです?」


 肩をすぼめてみせた。


「やだなあ。自宅からに決まってるじゃないですか」

「ですが、さっきまでは……。まあ、いいでしょう」


 いいのかよ。

 同行係員は先を歩いていった。

 先導する彼についていく。



 広いフィールドへとでた。真っ青な空が眩しい。2羽のトンビが天高く浮かんでいる。気持ちよさそうだ。


 中央の闘技台に乗った。

 大勢の観衆に囲まれている。この圧迫感がイヤだ。しかし試合はまだ始まっていないため、いまのところ観衆は静かだ。豪雨のような視線も、いまはあまり感じない。


 ところが突然“嵐”は起こった。


 観客席が湧く。激しい歓声と拍手で大気が揺れる。

 フィールドの奥から人が姿を現した。

 同行係員に連れられたイケメン青年のエルリウスだ。

 彼に対する観衆の大応援(スコール)には、尻込みしてしまいそうになる。


 尋常ではない人気ぶりだ。おれの登場のときとは大違いではないか。

 黄色い声もとんでいる。劣化版フェルザヴァインのくせに。


 同行係員に耳語する。


「初戦もこんな感じだったんですかねえ」

「わたしは観戦していませんが、おそらくそうでしょう。彼は大会主催者である侯爵様の遠縁の方ですから」

「えっ、じゃあ、あの人も貴族なんですか」

「はい」


 いわれてみればあの気品……。納得がいった。

 だけど貴族のくせに乗合馬車なんかに乗っていたのかよ。

 なんだか笑えてくる……もとい泣けてくる。


 闘技場がエルリウス・コールに包まれている。

 うるさすぎて勝負に集中できやしない。

 こりゃ完全なアウェーだ。やりずらい。


 そんなときだった――。



 佐藤ぉーーー がんばれぇーーー


 ほかの歓声を圧倒した。このひときわ大きな声は、観客席のリリサのものだ。

 いつしか使った声魔法の『遠声』だ。

 ありがたいがやめてほしい。恥ずかしいだろ。


 リリサの隣でトアタラも手をふっている。

 ちなみに案内人はトアタラに寄りかかって……。こんな喧騒の中でよく寝られるものだ。



 闘技台からそれぞれの同行係員が退いていった。

 代わって黒服の審判が闘技台にあがる。後ろ向きに立った。


「大会主催者・イグンニトラ侯ロワンジュ3世に礼」


 頭をさげた。

 審判は闘技台から退き、手をまっすぐあげた。


「開始」


 2回戦すなわち準決勝の始まりだ。

 よし、全力でいくぞ。


 エルリウスの武器は、細い片手剣のレイピアだ。

 おれのはモップの棒。足を踏み鳴らし、それをぐるぐると回した。

 ジャライラの町で習得した『武勇の舞』を見せてやる!


 敵はさすがレベル37の戦士だけのことはあった。

 動きがなかなか素早い。おれの華麗な棒さばきについてきているではないか。


 試合中にもかかわらず、イケメンが白い歯をこぼした。


「キミ、やるね」

「それはお互い様ですよ」


 棒先がイケメンの喉もとを突きかけた。これで勝負アリだと確信した。

 だが、すんでのところでかわされた。

 ほぼ同時に彼のレイピアが、モップの棒を二つ切りにする。


 モップの半分が闘技台に落ちて転がった。

 レイピアってこんなに切れるのかよ。まるで日本刀じゃないか。


 ああ、おれの武器(モップ)が……。

 試合のあとで、トイレの用具庫にそっと返却しておこうと思ったのに。

 もう、どうしてくれるんだよ。新しいのを買って返さなくっちゃならねえだろーが!


「驚いたかい。このレイピアはね、『断鋼の魔剣』っていうんだ」


 剣の名前なんかに興味はない。

 ただ一気に不利になったことは明白だ。

 負けるわけにはいかないのに。


 何かがきらりと光った。

 放物線を描いて飛んでくる。観客席から投げこまれたようだ。


 闘技台の上に落ちた。


 これっておれの超長剣『魔人のウルミ』じゃないか。

 さてはリリサか?


 審判の手があがった。


「待った」




 次回投稿は1/6となる予定です。

 よろしくお願いいたします。


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