49話 ネオ・インドラ
______登場人物(主な武闘大会出場者)______
【佐藤 (Lv.5)】
一人称は平仮名の『おれ』。職業は踊り子。爬虫類が大の苦手。
【エルリウス (Lv.37)】
戦士。イケメン青年。佐藤とは乗合馬車で知り合った。
雰囲気が踊り子のフェルザヴァインと似ている。
【ボボブマ (Lv.18)】
魔法使い。強烈な落雷魔法のパフォーマンスで予選を1位通過した。
佐藤の初戦の相手。
【ガイガーシュトッフ (Lv.27)】
暗殺師。予選を最下位通過した。
佐藤からは初戦の相手として熱望されていた。
闘技台の上で対戦相手と向きあった。
彼の名はボボブマ。レベルは18だが、強烈な雷魔法の使い手だ。その魔法を武闘大会予選で披露し、全出場者の最高得点を叩きだしている。魔法名はネオ・インドラと呼ぶそうだ。
おそらくほとんどすべての観衆が、おれではなく彼の勝利を確信していることだろう。
ボボブマが睨んでいる。
こういうときは、おれも睨みかえした方がいいのか?
でも睨みかえさない方が、手を抜いてくれるのでは……そんなはずないか。
審判らしき黒服の人物も闘技台にあがってきた。
背筋をぴんと張り、後ろ向きに立った。
「大会主催者イグンニトラ侯ロワンジュ3世に礼」
黒服とボボブマが低頭する。観衆までもが同様の仕草をした。
おれも空気を読み、頭をさげておいた。
黒服が台からおりていく。
なんだ。審判として残るんじゃないのか。
しかし台の外側から鋭い視線を向けている。
やはり審判なのか?
黒服の片手がまっすぐあがっていく。
えっ、もう始めるのかよ。ちょっと待ってくれ。まだ心の準備が……。
「開始」
ああ、始まってしまった。
観衆の地響きのような大声援に包まれた。
やるしかない。もう、やぶれかぶれだ!
「おい、キミ」
何故か試合中に相手から話しかけられた。
いいのか、そういうのって。
「はい?」
「悪いことはいわない。棄権しなさい」
「そういわれても」
棄権したいのは山々だが、こっちだって事情がある。どうしても大会で優勝しなくてはならないのだ。そしてトサカ鬼の角を手に入れる。シン先生に占ってもらうためだ。
「ボクのネオ・インドラを見たはずだ。残念ながら手加減はできない。対戦相手とはいえ、罪のないキミを葬りたくないんだよ」
彼のいうとおり、ネオ・インドラを喰らったら即死するかもしれない。
素直に棄権した方がいいのか。命あっての物種だもんな。
いや、待て待て待て。
本当に諦めていいのか。これまでインドを目指すことだけを考えて、がんばってきたんだろ? そんなことではあっちの世界で亜澄さんが泣くぞ。
「勝負させてください」
「キミは命知らずだな。もっと命の大切さを……」
「勝負です! うりゃあああああああああああ」
「わっ。ちょ、待ちなさい」
ボボブマに向かって突っこんでいく。
彼は慌てて両手を天にかざした。呪文を唱えはじめる。
防御も見せない彼の頬に、右のコブシがヒット。
彼はよろけて倒れていった。
そこからは馬乗りでタコ殴り。
「痛い、痛い、痛い。待った。参った、やめてくれ」
ボボブマがあっけなく降参した。
「酷いよ、キミ」
「いや、だって……」
黒服が台にあがる。
「勝者、86番佐藤」
観衆からの拍手はない。しらっとしている。
エルリウスのときとは大違いだ。
まあ、無理もないか。こんな糞試合。
ボボブマに一応尋ねてみる。
「どうしてすぐにネオ・インドラをださなかったんですか?」
「すぐにって、あんな大魔法、無理に決まってるだろーが。ボクはまだレベル18だぞ。長い呪文が必要なんだ!」
なるほど、そういうことか。
実戦向きじゃなかったんだな。
それにしても危なかった。口車に乗せられて棄権するところだった。
闘技台から退場する。
なんだかおれとしても、しっくりしない勝利だった。
同行係員とともに、あの狭い控室へと向かう。
「ところで係員さん。彼が予選でネオ・インドラを見せたとき、呪文にどのくらい時間がかかっていたんです?」
10秒? あるいは20秒? もしかして1分以上だったりしたのかな。
同行係員は、えーと、といいながら額に指を添えた。
「そうですねえ。12~13分くらいかと思います」
は? 一瞬、耳を疑った。
想像を遥かに超えていた。
「本当ですか。発動に時間がかかりすぎじゃないですか。話になりませんね」
「ですが、もしあれほど時間をかけずにネオ・インドラを放てていましたら、あなたが試合に出場することはなかったかもしれません」
この係員は何をいってやがるのだ? おれの出場とあの魔法は無関係だろ。
「どういうことですか」
「86番から89番までの参加者が予選審査に間に合いましたのは、結果的に彼の時間稼ぎのお陰だったのです。実をいいますと、彼のパフォーマンス終了とともに参加受付も終了しようと、大会スタッフの間で話がまとまっていたのです」
つまりおれはネオ・インドラに助けられたわけだ。
暑苦しい控室に戻り、そこでふたたび待機となった。
ほかの試合が終わるたびに、係員が結果を報告してくれた。
第3試合は56番のビットーリョの勝利。おれが初戦相手として熱望していたガイガーシュトッフが敗れた。
第4試合は19番のサバールの勝利。これでトーナメント1回戦が終了したことになる。
次の試合のことを考えなくっちゃな。
えーと、トーナメントの2回戦以降はどうなっていたっけ……。
|03 エルリウス・ユハルヒン・サーフ・ムア Lv.37
||86 佐藤 Lv.05
|
||56 ビットーリョ・コルフィーノ Lv.41
|19 サバール・ハイガー Lv.29
2回戦すなわち準決勝は、劣化版フェルザヴァインことエルリウスとの対戦だ。初戦でレベル81の相手に勝つくらいだから、よほどの実力者に相違ない。
1回戦は糞試合だったが、次は簡単にはいかないだろう。
だが必ず勝つ!
次回投稿は1/3となる予定です。
来年も何卒よろしくお願いいたします。




