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22話 作戦会議


 ______まえがき(登場人物のおさらい)______


【佐藤】一人称は平仮名の『おれ』。職業は踊り子。爬虫類が大の苦手。

【トアタラ】呪いによって人間に変えられてしまった少女。

【フェルザヴァイン】踊り子ギルドの超イケメン。特技『剣の舞』を具有する。

【グラナチャ】踊り子ギルド随一の美女。

【オルファゴ】踊り子ギルドの一員。佐藤に宿を紹介した。

【シャスラ】踊り子ギルドの事務員。

【リリサ】職業は歌女(うため)。月夜の晩、佐藤に裸体を見られてしまった。

【土の魔女】魔王の娘。恐ろしい魔法を使う。武器は超長剣のウルミ。



 翌日、われわれ踊り子ギルドの仲間は、歌女のリリサとともに、土の魔女との対決に向けてのミーティングを行なった。

 そのあと町の郊外にでて、合同の実技特訓を始めた。フェルザヴァインの『剣の舞』と、ほかの先輩たちの『武勇の舞』と、それからリリサの多種多様な魔法との連携方法を思考錯誤しながら。

 もちろんおれも『武勇の舞』を練習した。木の棒を槍に見立て、槍使いとして舞ってみる。しかしなかなかうまくいかない。レベル2の初心者が真似できるようなものではなかった。そもそも先輩たちから応援こそされているが、実のところまったく期待されていない。みそっかす扱いだ。


 とりあえず、きょうあしたは事務のシャスラが、つきっきりで個人指導してくれることとなった。

 内心ちょっと嬉しい。美男美女の多い踊り子ギルドの中にいると、彼女の美貌はあまり目立たない。だがこのギルドの外へ1歩でようものなら、かなりの美人でとおること間違いなしだ。


 特訓は6日目に入った。おれも3日目から合同特訓に加わっている。しかも『武勇の舞』を覚えるために、1人で毎日居残りして頑張ってきた。少しは戦力になれただろうか。


「土の魔女が現れても、佐藤はまだ見てるだけの方がいいわね。じゃないと戦闘中に、余計な心配することになっちゃうから」


 などと可愛い声できついことをいうのはリリサだ。実力が足りていないといわれるのは悔しいし、がっかりしてしまう。しかしそれが客観的な評価なのだろう。


 この日の特訓が終わった。ここでフェルザヴァインが声をあげた。


「帰る前にもう一度、この場で少しだけミーティングをしたいのだが、いいかな」


 誰もが了承した。

 フェルザヴァインの表情が険しくなる。あまりいい議題ではなさそうだ。


「我々の実力は確実にあがってきている。だが土の魔女にはまだ到底及ばない。前回、土の魔女はゴーレム2体を具現させた。いまの我々ならば、ゴーレムの4体や5体くらいは倒すことができるかもしれない。しかし噂では、かつて1度に8体も具現させたことがあるらしい。我々は戦術を根本から見直すべきだと思う」


 みな黙ってしまった。おそらく全員が心の中で思っていたことだ。フェルザヴァインのいうとおり、このままの特訓を続けても、土の魔女に勝つのは何年も先の話になるだろう。

 ぴょんとリリサがおれの前に立った。みなに聞こえるような声でいう。


「ねえ、佐藤。実はあなたこそ、土の魔女に勝つ鍵じゃないのかしら」


 少し前の発言とは真逆ではないか! まったく調子がいいものだ。でもまあ、確かに以前にも、先輩の誰かから似たようなことをいわれたことはあった。たぶんそれは以下の2つを根拠に主張しているのだろう。

 1.土の魔女がおれの顔を見て逃げていったこと。

 2.宿での夜討ちを撃退したこと――ただしトアタラの活躍は話していない。


 だけどそれは買い被りすぎだ。

 おれは即時否定した。そんなことあるものかと。


 オルファゴがやってきた。彼の隣にいるリリサに一瞥をくれる。


「鍵かあ。俺もそんな気がするぜ。佐藤にゃ、インドとかいう変わった特技があるだろうが。あれで土の魔女を踊らせて、その間に誰かがパパッと攻撃すりゃ、勝てるんじゃねえのか」

「誰かがパパッとっていいますけど、誰がやるんです? みんな踊りにつられちゃって、誰もそんなことできませんよ」


 とはいってみたが、実際にはトアタラがいる。でも彼女に危険なことをさせたくない。だから彼女のことは黙っているつもりだ。ぶっちゃけ……本当にぶっちゃけるが、おれにとっては町の全員の命より、トアタラ1人の命の方が重たいのだ。いつも優しくしてくれる町のみんなには悪いが。


「わたし、佐藤のその特技、まだ見たことないんだけどなぁー」


 リリサがロリっ子ならではの嬌態で、特技を披露してほしいと可愛らしくねだっている。オルファゴも喜色を浮かべた。


「いいねえ。久々にみんなで踊ろうぜ。あれって気持ちがよくなるんだよな」

「あ、きょうは無理です。特訓で体がくたくたです。どうしてもというのなら、あしたまで待ってください」


 しかも、このあとおれは1人で残って、『武勇の舞』の練習に励まなくてはならないのだ。

 嫌味なほどの美男が、この場をふたたび仕切る。フェルザヴァインは左手で前髪をかきあげた。


「ボクも佐藤は土の魔女を倒す鍵を握っているように思えてならない。佐藤にはあしたもう1度特技を披露してもらおうか。そのあとミーティングの議題として、その特技の有効活用について考えてみるのもいいだろう」


 話は決まったようだ。できればおれの特技を当てにしてほしくはなかった。



 翌日、いつものように多くの仲間がギルドに集まった。歌女のリリサも当然のようにこの場にいた。仕切るのはやはりフェルザヴァインだった。


「さて、ミーティングを始める前に、佐藤の特技を再確認しておく必要があるだろう。頼めるかな、佐藤」


 リリサがはしゃぎだした。


「わあ、佐藤の特技が体験できるのですね。わたしワクワクしてきました」


 好奇心に満ちた瞳が輝いている。

 おれとしては気が進まないが、しぶしぶ特技を念じた。

 


 特技を使いますか    →「はい」を選択。次画面へ。


 特技を選択してください →「インド」を選択。次画面へ。


 特技を選択してください →「西インド諸島」を選択。次画面へ。


 特技を選択してください →「メレンゲ」を選択。



 手慣れてきたためか、光の表示の切り替えが早い。さくさく進むので感動した。しかも最後はメレンゲを選択したので、準備のための時間稼ぎもなかった。


 このギルドの女性たちはみな美しいが、できることならばリリサか、あるいはもう1度グラナチャと踊りたい。ここからリリサのところまでは少し距離がある。ならば……。

 天井と壁から音楽が鳴った。さっとグラナチャのもとに跳びこんだ。見事、おれのパートナーは、今回もグラナチャになった。だけど相変わらず化粧品の匂いが鼻につく。


「おお、佐藤、てめえ。俺がグラナチャを狙っていたのに」


 オルファゴが悔しそうだ。

 踊りが始まった。手足や表情が操られていく。おれとグラナチャの体がたびたび密着する。おれの左手とグラナチャの右手でアーチを作った。先にグラナチャがアーチをくぐるように回った。続いておれも回った。


 ――さっき何かを見落としたような気がするが。


 もう1度、アーチを作る。おれの左手とグラナチャの右手が、しっかりと握られた。それを上に高くあげていく。


 ――あれ? なんだ。


 自分たちのアーチを2人でくぐる。

 続いて激しいステップ。セクシーな腰振り。

 彼女の多量の汗が“てのひら”に伝わってくる。

 そして長かった曲が終わった。


 みんなの表情が明るい。歌女のリリサも満足そうで何よりだ。

 だがおれは首をかしげた。


 ――何かがひっかかる。おれの脳みそが何かに気づこうとしている。


 考えごとをしていると、背後から2人先輩が小突いてきた。


「曲が始まる前からグラナチャを狙っていただろ。急いで彼女のところへとびだしていったもんな。まったく油断ならねえよ、こいつは」

「そういえば佐藤はプライベートでも、グラナチャ並みの美人と同部屋に泊まってるんだってな」


 そんな先輩たち2人の話にすぐ反応したのはオルファゴだった。


「佐藤の噂のオンナって、五叉路の近くのペットショップで店員をやってるんだよな。俺、見にいったぞ。本当に綺麗で可愛かった」

「別におれのオンナっていうわけじゃないです!」

「何いってんだ。同部屋に宿泊しておいて」


 グラナチャが建物の出口に向かっていく。フェルザヴァインが声をかけた。


「どうしたんだ、グラナチャ」

「気分がすぐれないの。きょうは失礼するわ。またあした」


 おれと踊ったせいか?

 彼女はギルドの建物をでていった。


 ――ん?


 ああ、いまわかった。どうしてすぐに気づかなかったのだろう。

 おれは大声をあげた。


「みなさん、グラナチャは土の魔女だったんです!」


 誰もがおれに注目した。


「おい、佐藤。何をいいやがる?」



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