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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第一章 上杉龍穂 国學館二年 前編 第五幕 八海事変
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第八十八話 姿が変わった友人

何が起きたのか全員が気になっているが敵の大将が待つ体育館が近づいているのが

分かっているので思考を抑え込み、辺りを警戒を続ける。


「多いな・・・。」


着々と近づいているが、深き者ども達が多く徘徊しており上手く前に進めていない。

全て風太さんや定兄が対応してくれているが戦闘回数の多さにさすがの二人も思わずぼやいていた。


「・・・・・・・・・・。」


そして何より奥に連れて行けば行くほど血の匂いが濃くなっていき

あまりに強い鉄の匂い生臭さに無意識のうちに進む速度が遅くなっていく。


「っ・・・・。」


体育館まであと少しと言う所で匂いの原因に対面してしまう。

八海高校の生徒達の死体の数々。

手には得物が握られており命尽きる手前まで戦ったのだろう。


そしてこの八海に勤務していたと思われる武道省の制服を着た男と

チェック柄のスーツを着た銃を握っている男がいた。


武道省の職員は生徒達の通報を受けて八海高校に来たのだろうが

派手なスーツを着た男はおそらく教師ではない外部の人間だろう。


「・・だめでしたか。」


血まみれの生徒達を見た加治さんが悲しそうにつぶやく。


「彼らが惟神高校の生徒達を戦ってくれたのです。

私が見た時はこの中の数人は生きていましたが・・・・。」


見たところ猛と真奈美の姿は見えない。この人達と共に命を落としていないようだが・・・。


「うっ・・・!!」


多くの死体を見た純恋が気分を悪くしたのか口元を抑え、距離を取る。

桃子が後を追い、様子を見に行くが気持ちは分からなくはない。

普段見ることはない死体をこれだけの数見てしまえばトラウマになってしまってもおかしくはない。


「龍穂君は大丈夫ですか?」


千夏さんから心配の声をかけてもらうが俺自身、驚くほどに平静を保っていた。


「ええ、大丈夫です。それより・・・・。」


この死体達に着いている傷。

校庭で見た死体とは異なる傷が全ての死体についており

彼らの命を奪ったのは深き者ども達ではない事を示していた。


「これは・・・・刀傷みたいですね。

ですがかなり強い力で切らないとここまでの傷にはなりません。」


体に付いている一直線の傷は刀傷に近いがまるでなまくらで無理やり引き切ったように

皮膚がズタズタになっており、抉ったように傷になっている。


「先程のデカい虫のような化け物の仕業かもしれませんが奴らの爪は一本ではなく複数・・・。

となると他の敵、土御門の役割を任せれた者が彼らを手にかけたのかもしれませんね。」


武道を志し、刀を扱うと決めたのなら正しい振り方。

そして切りつけ方は始めに習うはずだ。


「・・・・・・・・・・。」


考えたくもない可能性が頭によぎる。

猛の武道は確か初級。巻藁であれば正しく切れるが実践の場であれば話は違うだろう。


猛に人の皮膚を無理やり引き裂けるほどの力はないだろうが

何かしらの力を授かったとしたら・・・・・。


(今は・・・考えないでおこう。)


証拠は不十分。まだ決まったわけでは無い。

千夏さんが先ほど同様に苦悶の表情を浮かべた彼らの表情を和らげ加茂さんが床に並べていく。


千夏さんが扱う死霊術。

死後硬直が始まっており、筋肉が固まってしまえば苦しい表情のまま運ばれてしまうだろうが

少しでも安らかな表情で家族に迎えられることが出来れば

彼らは少しは安心して天に昇っていけるかもしれない。


「・・龍穂さん、純恋さん達の様子を見に行ってもらえますか?」


近くにいた楓が俺に頼んでくる。

動揺を見せたつもりはないが楓には俺が猛を怪しんでいたことを察したのかもしれない。


分かったと頷き、純恋達が行った方へ歩いていくと

壁に手を着いて俯いている純恋と背中を擦って介抱する桃子の姿があった。


「純恋・・・。」


本当は桃子も純恋を休ませたいのだろうがここは既に敵の本陣だ。


「だい・・じょうぶや・・・。」


それに純恋はそれを望んでいないようで強がりの言葉で桃子の心配に応えていた。


「純恋、桃子。」


このままでも大丈夫だろうが俺の戦いについて来てくれた二人の様子を見るのは

当然の役目だと声をかける。


「大丈夫か?」


「すまんな・・・もう少しで合流する・・・・。」


少し前なら離脱していたかもしれないが平野さんとの戦い以降、純恋は大きく変わった。

元々才能のあった純恋だが努力をするようになりさらに実力が上がったが、

それ以上に戦いに対する意識と言うか何かを目標を見つけたように見える。


「亡くなった人たちから何か情報が得られないか調べている所だからもう少しかかる。

だから焦らなくていいよ。」


だが無理は禁物だ。

落ち着くまで辺りを警戒しようと辺りを見渡すが


「・・・・・・・・・・・・。」


先程通ってきた道に紅白の巫女服を着た女性がこちらをじっと見つめていた。


先程通ってきて危険を排除したつもりでいたので驚きつつも

すぐに襲ってこれるような距離にいないことを確認し、

ゆっくりと桃子と純恋の前に立ち静かに刀の柄に親指を添える。


「・・・・・・・・?」


こちらを見つめてくるだけで襲ってくる気配はない。

一体何がしたいのだろうと警戒を強めるがその顔に見覚えがあり、

誰か理解した瞬間心が跳ね上がった。


「・・・・・真奈美か?」


姿が確認できず、生死は不明だったが生きている事だけは分かった。

だが問題は真奈美達が味方だという保証はない。


先程倒れていた生徒達と一緒にいたのなら体や服に傷がついていてもおかしくはないが

真奈美が来ている巫女服は傷一ついておらず出ている皮膚にも傷は見えない。


俺の言葉を聞いた桃子が純恋を守りながら後ろに隠れるがその姿を見た真奈美は小さくため息をついた。


「・・向こうで出来た友達?」


何を話してくるのかと身構えていたが世間話しが飛んできた。


「・・・・・ああ。真奈美たちに紹介したくて連れてきた。」


「そう・・・・・・。」


まるで現実から目を逸らすように窓を介して移る雪景色を見ながら悲しそうな返事が返ってきた。


「一体・・・何があったんだ?」


ここで時間を稼いでもしょうがないと回り道をせず素直に真奈美に今回の出来事について尋ねる。


「・・・・私達生まれ変わったの。」


俺が求めていた返答とは方向が違う答えが返ってきたと思えば

着ている巫女服の襟を掴み白い小袖を下におろす。

さらしがまかれた上半身が露わになると白い肌にびっしりと書かれた鱗模様の刺青が露わになった。


「なっ・・・・!?」


「そこに曲がった人たちを見たでしょう?私達も彼らと同じ運命をたどった。


だけどね、全てを伝えられてこうして力も与えてもらったの。

だから・・・・私達はこれから自分達の意志に従って戦うつもりよ。」


何を言っているのか、何が言いたいのか伝わってこない。

だが俺が国學館に行く以前の真奈美にはこんな入れ墨は入っておらず

真奈美に体に何かが起きたのだけは理解できた。


「私は・・・八海上杉家を潰すわ。」


そして衝撃の言葉が真奈美の口から発せられる。


真奈美の生まれである佐渡家は八海の山の神を奉るための神社の守る役目にある。

だがそれは八海上杉家が元々になっていた勤めであり神道省の高官に抜擢されたために引き継いだが

そもそも佐渡家は八海上杉家を支えていた一族だ。


「な・・にを言っているんだ・・?」


俺達の主従関係はないが両家は非常に良好な関係を築いており

なぜ真奈美がそんなことを口にするのか理解できなかった。


「全ては八海上杉家が悪いのよ。でも・・・勘違いしないでね?」


俺の後ろにいる二人もいつの間にか得物を取り出しており臨戦態勢に入っている。


「”龍穂が八海上杉家じゃない”ってことはもうわかっているから。」


真奈美は俺の生まれについて教えていない。

そしてもうわかっているという言葉は誰かに吹き込まれたことを意味しており、

その人物はただ一人しかいなかった。


「だから戦わないよ。私にとって大切な幼馴染だから傷つけたくないからね。

でも・・・”アイツ”は龍穂と戦いたがっている。龍穂を目指して努力を続けてきたからね。


力を手にして陰陽師である龍穂に挑みたい気持ちは分かるよ。」


巫女服を元に戻し、影に沈んでいく。ここで逃がせば親父や兄貴たちが危ない。


「また会えるよ。次会う時は私の見方が変わっちゃってるかもしれないけど・・・

でも、私達はずっと友達だよ。」


縮地で距離を詰めるも影に沈む速度に勝てず、手を伸ばすころには真奈美の姿は影一つなかった。


「・・・・・・・・・・・。」


真奈美に何が起きたのか、それにアイツと言っていたのは・・・猛の事だろう。


「龍穂・・・・。」


心配そうに俺の元へ駆けてくる二人。大丈夫だと伝え、頭の中を整理する。


「・・・ひとまず状況共有をしよう。

今起きた情報を伝えたことで各々動きを変える必要が出てくるかもしれない。」


純恋にさっきの場所に戻ってもいいかと尋ねると大きく頷く。


真奈美が姿を現したことで事態は大きく動くことだろう。

土御門は一体何を企み、この事件にどういった意味を持たせたのか。

気になりつつも歩き出し定兄達と合流を果たした。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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