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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第一章 上杉龍穂 国學館二年 前編 第五幕 八海事変
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第八十六話 土御門の思惑

加治さんの口から言い放たれた土御門泰国と言う名前。

その名前を聞いた俺達は唖然としてしまう。


「彼がなぜこの八海にいたか分かりません。

ですが私が現場を離れた後、深き者ども達の姿が確認されたことから

何かしらの術を使ったんだと思われます。」


土御門と言えば千夏さん、ひいては徳川家を終わらせようと三道省合同会議の場で企んだ男だ。


「土御門・・・・何が狙い何でしょうか?」


千夏さんが真剣な顔で呟く。

自らを葬ろうとした張本人が何を考えているのかやはり気になるのだろう。


「分かりません。彼がなぜ八海にいるのか。何をしようとしていたのか全くの不明です。

ですが、これで一つ確定したことがあります。

今まで怪しい行動を取ってきた土御門泰国は千仞の一員と言うのは確定しました。


しかも深き者ども達を従えるどころか人間の姿を変えてしまうほどの力を持っている。」


加治さんはテーブルに近づき資料を漁る。


「調べたところ賀茂忠行が従えるクトゥルフの神々の中でそのような力を持っているのは限られている。


ですがその全てがかなりの力を有しています。

戦うにはこちらも数人やられる覚悟で臨まなければなりません。」


手渡された資料には加治さんが調べてリストに挙げてくれた土御門が使役していると思われる

神々の詳細が書かれている。


ダゴンとヒュドラ・・・。

聞き覚えのある名前だ。確か他の神話に同名の神がいたはず。


「じゃあ俺達はこれから土御門と戦わなければならないという事か?」


俺達が資料を見つめている中、風太さんが冷静に尋ねる。


「いえ、そうとは限りません。土御門は自らの手を汚さずに敵を仕留める事を得意としている。


彼が神道省を上り詰めることが出来たのも

本来自分の手柄に出てきたはずの功績をあえて部下などに与え周りからの信頼を得てきた。


それに神道省の副長官がこのような場にいることが

三道省に広がればそこを突かれて信頼を落としかねない。

既にここから去っていると私は思っています。」


「じゃあ君が言っていた他人に任せてあるという事か・・・。

任せる奴の姿は見なかったのか?」


「申し訳ありません。土御門を確認してすぐにその場を離れました。


彼の実力は本物です。

見つかってしまえば私がどうなるか分かりませんでしたから情報の持ち帰りを優先したんです。


ですが私の他の業の隊員が校内に潜入して情報を集めてくれています。

一応龍穂君達がこちらへ来ていると連絡を入れていますので

一度戻ってくると思うんですが・・・・ん?」


話しをしている途中、何かに気付いた加治さんはつま先で床を叩き影に向かって手を伸ばす。


すると影から加治さんの手を掴むもう一つの手。

それを力強く引っ張ると中から黒いスーツの男性が出てきた。


「お疲れ様です。どうでしたか?」


「・・思っていた以上に厄介だった。」


兼兄と同じ装いの男性を身に着けている黒い手袋を取り外しながらこちらに向く。


そこにいたのは藤野さん。

まさかの登場に驚いてしまうが体のいたるところに傷を負っていて驚きより心配が先に来てしまった。


「だ、大丈夫ですか・・?」


「ああ、問題ない。それより俺が取ってきた情報を共有するぞ。」


いたる所から血を出しているのにも関わらずイスに腰を掛けようとするが

その間を加治さんが立ちふさがる。


「だめ、手当が先だよ。」


「バカ言うな。時間が無いんだ——————————」


目の前に立つ加治さんを手で押しのけようとするが血が流れているわき腹を加治さんが思いっきり掴む。


「おまっ・・・!!」


傷口を広がらせる危険な行為に藤野さんは顔を歪ませるが加治さんからは強い怒気が出ている。


「隊長にも言われているでしょう。あまり無理をするなって。」


藤野さんを思うからこその指摘なのだろうが少々やり過ぎな気がするが・・・・。

藤野さんは反論しかけたが加治さんの顔を見て治療しながらの説明を提案する。

こちらからは表情は見えなかったが飲み込むしかないほどの表情を浮かべていたのだろう。


「・・という事は藤野さんが国學館にいる業の隊員だったんですね。」


加治さんが言っていた国學館内に潜む業の隊員とは藤野さんだったことが目の前で明かされた。

きっと俺の見えない所で支援をしてくれていたのだろう。


「ああ、黙っていてすまん。だがもう隠している必要もないからな。」


「・・・・?」


それがどういう意味なのか分からないが消毒や包帯の手当を受けながら藤野さんは話し始める。


「校内を見てきた。

加治の情報を元に現在の状況を確認しこの事件の解決をスムーズに行うためだが・・・・

状況としては最悪と言えるだろう。」


「最悪・・・ですか。」


「校内を散策していたがそこら中に深き者ども達がうろついている。


そして校内には残っていたであろう生徒や教師たちの死骸。

体には大きな爪痕が残っており深き者ども達に殺されたんだろう。」


確かに・・・最悪の状況だ。


「・・・あ、あの!!」


聞きたくないが聞かなければならない事を尋ねるために藤野さんの報告を遮る。


「なんだ?」


「その中に・・・清水瀬猛と佐渡真奈美って生徒は・・・いなかったですか・・・?」


もし二人が亡くなっていれば・・・これからの戦いは弔い合戦と言うことになる。

だがもし生きていれば・・・希望はある。

聞くのは怖いがどちらにせよ戦いの糧にできる。それを飲み込めればの話しだが・・・。


「・・いなかった。だが・・・・。」


安心の言葉の後に不安を煽る言葉が続く。


「知美、確か校内に残っている生徒達のリストの中にその二人はいたな?」


「いました。それに・・・・惟神高校の生徒達と戦いを繰り広げたのが中心人物達です。

龍穂君の出身地であることは把握していましたが・・・顔見知りだとは知りませんでした。」


「そうか・・・。いなかったがそれが良い結果だとは言い難い。

何故なら土御門、そしてその配下と思われる人物達がいなかったからだ。」


加治さんが言っていた通りだが一つ違う点は配下を連れていない事。


自らの手を汚さない奴が姿を見せていないという事は既に誰かに役割を渡した後ということだが

その人物がいないと言うのはどういうことだ?


「それは・・・どういう事なんですか?」


「校内をうろついている深い者ども達の中に制服を着ている個体を発見した。


土御門が生徒達の姿を変えた可能性もあるが・・・

亡くなっている生徒達についた傷は知美が引いた時間と俺が侵入して確認した時間を考えれば

血が固まっておらず新しすぎる傷だった。


その結果から考えるに・・・土御門が役割を与えたのは部下ではなく

”その場にいる誰か”の可能性がある。」


となれば生きている人間の中に藤野さんが考えている

役割を与えられた人間がいるという事だ。生きている猛と真奈美がその筆頭候補と言えるだろう。


「奴らは俺を見つけ排除しようとしていたのにも関わらず

八海高校の敷地から足を一歩踏み出したら追うことを止め校内に戻っていった。


その統率の取れた動き、土御門から役割を引き受けた人物が校内にまだ潜伏している証拠だ。

龍穂。何があってもいいように心構えをしておけ。」


「分かっています。」


隙は与えない。交流試合の時のような惨劇を二度と起こしてたまるか。


「ひとまずこれで情報共有は出来た。後は侵入経路と目的地点を決めるかだが・・・。」


「一番手薄だったのが正面玄関です。

堂々と侵入しても問題ない位には深き者ども達の姿はありませんでした。」


「・・そうか。

藤野が言っていた通り、誘い込まれているようで嫌だが・・・

無駄な戦闘は避けれるならそれが一番いいな。」


「他の細かい入り口は全て丁寧に封印されており簡単に侵入できないようになっています。

逆に一番深き者ども達が配置されているのが体育館です。

一応中を少しだけ見れましたが深き者どもではない何者かがいました。


正門玄関から一番遠い場所になります。

敵と狙いとしては道中で消耗した龍穂達と戦う気なのでしょう。」


難易度の高い封印術を使える生徒は八海高校の中にいないだろう。

それを強固に扱えるとなると土御門の仕業なのかもしれない。


「・・どうする?龍穂。一応援軍を待つ選択肢も残っている。

俺達は龍穂達を敵の本陣である体育館に出来るだけ消耗させずに送り込むつもりだ。」


伊達様から聞いた話では援軍が来れたとしても戦力としては期待できない。


それに・・・もし猛と真奈美が中で生き残っていて土御門の手が届いていないのなら・・・

すぐに助けなければならない。


「援軍は待てない。すぐに乗り込みたい。」


簡潔に俺の意志を伝えると分かったと一言だけ言い放ち藤野さんと親父の

除いた全員が椅子から立ち上がる。


「親父、ここで藤野と引き続き外部との連絡を取ってくれ。

必要な情報があり次第連絡を入れてほしい。」


「分かっている。だがちょっと待て。」


そう言うと親父は奥の自分の部屋に入っていき戸棚を引いた音が聞こえる。

何かを探しているようだ。


「・・・・龍穂。」


少し経った後、足音がこちらに近づいて来て

親父が再び姿を見せると鞘袋に入った刀を持って戻ってきた。


「お前の母親が使っていた刀だ。持っていけ。」


埃一つかぶっていない刀を受け取る。

取り出してみると綺麗な漆塗りをされた鞘に入った刀には神力が込められていた。


「・・・・久しいな。」


鞘を親指で押し、刀身を見ようと青さんが姿を現し俺ではなく刀に向かって声をかける。


「無視か。相変わらず生意気じゃが律儀に中に入っている様じゃな。感心するわい。」


「ええ、俺がいくら呼びかけても返事はありません。ですが・・・今の龍穂なら扱えるかと。」


二人が何を言っているのかわからないが鞘を抜き、珍しい漆黒の刀身が姿を現すと

感じていた神力がまるで何かに応えるように大きくなった気がした。


「・・龍穂、この刀の名は”六華”。

現代では珍しい封神刀、式神を込めることが出来る刀じゃ。

この中にはお前の母親が使っていた式神が入っておる。」


大きくなった神力は落ち着きを取り戻す。

青さんの言う通り中に何かが封じ込められているようだが

その静けさはまるで俺の実力を見計らっている様だった。


「本来であれば中にいる奴を使役することで真価を発揮する刀じゃがその時間はない。


じゃが切れ味は抜群じゃ。

これからの戦いでお前の実力を見せ中にいる生意気な奴を認めさせろ。」


鋭くとがれた刃は触れただけでも肌に傷がついてしまいそうで

とても丁寧に手入れをしていたことが分かる。


親父がどう保管をしていたかわからないが母はとても大切にしていたことが伝わってきた。


今まで使っていた刀を親父に預け新たな相棒である六華を腰に差す。


「・・行こう。」


親父と藤野さんに別れを告げ、装甲車に乗り込んだ。




ここまで読んでいただきありがとうございます!

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