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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第二章 上杉龍穂 国學館二年 後編 第五幕 残された者達
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第百九十話 千夏の過去

「おう、すけこまし。」


朝を迎え、一通り身支度を済ませた俺は純恋達に連絡を取った。

そして影渡りでこちらに来てもらったが、やってきた純恋の開口一番はこの一言だった。

何も言い返すことが出来ず、書斎の床に正座しろと言われた俺は素直に従う事しかできなかった。


「あんだけ心配してたっちゅうに・・・。」


「まあまあ。実際千夏さんは落ち込んでたんやろ?」


桃子が純恋をなだめるが既にヒートアップしてしまい収まりそうにない。


「なんや?それで慰めてもらったってか?」


「純恋さん。それ以上はいけませんよ?」


あまりの失言に、楓も参戦して純恋を止めに入った。


「・・皆さんにはご迷惑をおかけして申し訳ありません。

確かに龍穂君の優しさにつけこんだことは事実です。ですが・・・。」


座っている俺を尻目に千夏さんは大きな机に向かって歩くと一番下の引き出しを開ける。

膝を着き、両手を中に突っ込むと何かが外れるような音と共に中から熱い木の板を取り出した。


「・・ここには私達にとって重要な物が隠されています。」


板を床に置き、中から漆黒の本を取り出す。


「それが・・・私達にとっての鍵なんですか?」


「いえ、そうではありません。」


千夏さんが壁沿いに並んだ本棚の前に立ち、前日に取り出した本を取り出す。


「それを・・説明する前に、私と泰国さんの思い出を・・・聞いていただけますか?」


千夏さんのお願いを聞いた三人はその重要性を察し、大きく頷いた。


———————————————————————————————————————————————


両親を失い、酷く落ち込んだ私は引き取られた御爺様の家に引きこもりました。

深い愛情で育てられた私にとってそれだけの出来事であり、

何日もいただいた部屋から出られない状況が続いたのです。


「申し訳ありません。負担が多い君達に・・・。」


「何をおっしゃいますか。仙蔵さんが私達にしていただいた事を考えればこのような事、

負担でもなんでもありません。」


「そうですよ。それに・・・俺達もあの二人に返し切れないほどの恩があります。

その忘れ形見の娘さんが落ち込んでいるなんて聞いたら何もしないなんてことは出来ませんよ。」


布団をかぶり座り込んでいる私の耳に入ってきたのは聞いたことのない若い男の人達の声。


(お客さん・・・?)


当時おばあさまも生きていらっしゃって忙しいおじいさまの代わりに

落ち込んでいる私のお世話をしてもらっていましたが、

やってくるお客様は年配の方が多く聞き慣れない若い男性の声に恐怖を感じ、

布団をかぶり蹲って去っていくのを待っていたのです。


「千夏さん。少しいいですか?」


早くどこかに行ってほしいと願っていた私と思いは届かず、

祖父がドアをノックしこちらに入ってきました。

そしてそのまま入ってきた祖父は蹲る私の背中を優しく撫で始めたのです。


「・・あなたにぜひ会いたいとおっしゃっているお客様が見えています。

顔を見せていただけませんか?」


祖父のお願いに対し、私は布団の中で首を振りました。

両親が亡くなった後、徳川家の血を引いた私に対して多くの方が話しかけてきたのですが

下心を隠さずに話しかけてきた私を争うように群がる大人達の姿に恐怖を覚え

誰も信じられなくなっていたのです。

そんな事情から今は誰にも会いたくないと落ち込んでいる私の心は体と共に完全に塞ぎこんでいました。


「お二人共千夏さんが幼い頃にお会いしたことがある方々です。

もしかすると覚えていないかもしれませんが・・・安心できる方々ですよ?」


聞いた声に覚えはありませんでしたが・・・信頼ではなく、

わざわざ安心という言葉を使ったことに少し興味を持った私は布団の中から顔を覗かせました。

片方がこちらに覗いて来たのですが・・・今思えば大変失礼なことを思ってしまいました。


「俺が最初じゃなくていいのか~?お前信用できない顔してるってよく言われるからな~。」


後ろにいた兼定さんの言う通り・・・胡散臭い顔をしているな思ってしまったんです。


「うるさいですね・・・。信頼とは顔で判断するものではなく心で通ずるものでしょう?」


兼定さんがカーテンを開け、明るくなった部屋から胡散臭い笑顔を向け

のぞき込んでくる方を・・・私は拒みました。


「ほら!言っただろ?」


その光景を見た兼定さんは笑いながらこちらに歩いて来て、

泰国さんをどかして私の隣に腰をかけてます。


「胡散臭い人がきたからな~。怖かっただろう?」


そう言いながら布団の上から私の事を撫でてきた兼定さんと拗ねたように後ろに振り向く泰国さん。


「別にそこから覗いたままでいい。久々に会うんだ。自己紹介をさせてもらっていいかな?」


お二人から感じたのは今まで大人達と同じ下心ではなく、私と仲良くなりたいという純粋な気持ち。

まだ心に恐怖が残っていましたが・・・おじいさまの勧めもあり少し顔を覗かせることにしたんです。


「俺は上杉兼定。君のおじいさんの弟子だな。そんでこいつが・・・。」


まだ後ろを向いている泰国さんに声をかけますが、


「・・まずはあなたが私に謝罪をするべきでは?」


決して振り向こうとしない泰国さんは拗ねてしまっており、

それを見た兼定さんが泰国さんに悪かったと謝罪をすると

やっとこちらに振り向き挨拶をしてくれました。


「私は土御門泰国と申します。これから・・よろしくお願いしますね?」


相変わらず胡散臭い笑顔だと思ったこと今でも覚えています。

これが・・・兼定さん、そして泰国さんとの出会いでした。


———————————————————————————————————————————————


「このような形であの方々と出会い、私を元気づけるため頻繁に私に会いに来てくれました。

兼定さんはやることがあるとたまに来ていただける程度でしたが・・・

その代わりに泰国さんが私を励ましてくれたのです。」


強く握りしめた本。深く落ち込んでいた幼い千夏さんをここまで立ち直らせたのは

献身的な泰兄がいたからなのだろう。

その思い出の本があった場所に取り出した黒い本を入れるとそのまま押し込んでいく。

するとスイッチが押されたような音が聞こえ、壁に並んでいた本棚が壁にめり込んでいき、

横にずれていくとなんとそこには徳川家の家紋が堂々と刻まれた鉄製の古い扉が隠されていた。


「隠し・・扉・・・。」


「あのお二方がここに来ていた理由。私を元気づけるだけではなく、

とある”研究”をこの先で秘密裏に行うためだったのです。」


とある研究・・・か。仙蔵さんのお家で行っているという事は魔術の類だろうか?


「・・龍穂。開けてや。」


重苦しい雰囲気をまとった扉を見た純恋は俺に開けるように催促する。

仙蔵さんの家にある隠し扉なので危険はないだろうが、

何かあった時のために俺が空けるのが一番危険はないだろう。

扉に取ってに手をかけ後ろに体重をかけるがびくともしない。

俺の力が足りないではなく、鍵が掛けられている様だった。


「鍵・・。でも鍵穴は・・・。」


鍵がかかっているのなら何かしらの仕掛けがあるはずだが鍵穴などそれらしいものが見当たらない。

一体どうやって鍵をかけているのか千夏さんに尋ねようとすると、

自らの指を嚙みながらこちらへ近づいてきていた。


「場所を変わって下さい。」


そして流れた血を刻まれた家紋に押し付ける。

すると徳川家の血に反応した扉は軋んだ音を立てて鍵が開かれた。


「徳川家のみが入れる地下室。この場所であれば他人からの干渉を気にすることなく研究が出来ます。

このような場が必要なほどに危険な研究の成果がこの先にある。心してついてきてください。」


重い扉を上手く開けられない千夏さんに手を貸すと軋んだ音を立てながら扉が開かれる。

その先には明かり一つもない空間があり、千夏さんは近くに掛けられていたランタンに近づき

懐から取り出したマッチで明かりをつけ手に持ち辺りを照らす。

照らされた先には辺り一面が石で作られた地下に下る階段が広がっており、

敷き詰められていた石の一つ一つが魔力、神力が通らない特殊な加工がされていて

千夏さんが言っていた通り誰からも干渉されることがない秘密の部屋だということが見て取れた。


「す・・ごいな。こんなの私の家にもないで。」


「徳川家は住居を構える際、こうした隠し部屋を必ず作る仕来りになっています。

公にできない日ノ本の裏事情から徳川家、そして魔道省の発展のための研究。

状況や時代によって用途が違いますが今回の場合は・・・その両方を担っています。」


俺達を先導しながら進んでいく千夏さん。

その口ぶりはこの先に何があるかを知っているように聞こえる。


「両方ですか・・・。千夏さんはその内容をご存じなのですね。」


「・・全てを把握しているわけではありません。

封じられていた私の記憶の全ては幼い時ですから、当然この場所が今どうなっているか分からない。

ですが・・・少なくとも一つ言える事は”我々はその研究の成果”を

何度も目にしたことがあるということは確かな事実です。」


千夏さんの言葉を聞いた全員の頭の中に?が浮かぶ。

兼兄、そして泰兄が研究していた成果がこの厳重な地下室にあるというのに

俺達が目にしたことがあるというのは一体どういうことなのだろうか?


それが一体何なのかと頭を悩まさせて下っていると同じような鉄製の扉が見えてくる。

先程のような徳川家の家紋は刻まれておらず、

そのまま扉を開けると石ではなく木で作られた部屋が目の前に広がっていた。


「今、灯りをつけます。」


千夏さんが壁に付けられたスイッチをつけると部屋の天井のつけられた灯りが部屋を照らす。

魔力を使わない科学によって作られた電灯は照らしたのは

壁に立てかけられた無数の銃火器、棚に整理整頓された銃弾。

そして・・・見たことない言語で書かれた背表紙が並ぶ本棚達だった。


「これは・・・。」


「見たことありますよね?」


まず目に入った銃火器の数々は確かに見たことがある。

これは・・・ちーさん達白の部隊が扱っている物と同じだった。


「これらの銃火器の数々は全て特別製になっています。

ここに整理されている銃弾、魔封弾、神封弾など全てが特殊であり、

それらを全て放てるように改造された物なのです。」


共に戦った戦場でちーさん達が見せた様々な特殊な銃弾。

それらは本来専用の銃火器で扱わなければならないほどに特殊な作りをしているが、

兼兄達はそれらを全て一つにまとめるように改造していた様だ。


「もしかして・・・兼定さんが土御門を捕えると言っていたのはここの事なんか?」


「そうかもしれません。そう考えられるのなら既に察してはいるでしょう。」


千夏さんは部屋の奥に歩いていくと壁に飾られた白い旗を指差す。


「ここは祖父が提供した白の隠れ家の一つ。先ほど言ったようにここでは千仞、

ひいてはクトゥルフと戦うための研究が行われていたのです。」


頼もしかった白の部隊の技術がここに詰められているという事か。

そして・・・幼い千夏さんは何かしらの事情でここに来たことがあるのだろう。


俺達が部屋中を眺めていると千夏さんは本棚に近づいていき一冊の本を取り出す。


「・・まだ私の封じられた記憶の全てをお話ししていません。

私がお二人にしてもらった事、この部屋にたどり着いた経緯。そして・・・・。」


持ってきた本の表紙をこちらに見せてくる千夏さん。その本は・・・見覚えがある物だった。


「私が何故記憶を封じられたか。それの全てをお話ししましょう。」


千夏さんが手に持っていた本。いや、魔術書と言った方がいいのかもしれない。

それは”ネクロノミコン”。謙太郎さんの父親である捷紀さんが持っていた

宇宙の神について書かれている魔術書だった。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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