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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第二章 上杉龍穂 国學館二年 後編 第四幕 土御門泰国
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第百五十一話 白虎の疑念

息を切らしながら白虎と対峙している三人の体には細かい傷がいくつも刻まれている。

拮抗している戦いをどうにか動かそうと試みている証拠だが、

未だに突破口を切り開けてはいないようだ。


『三人とも、援護が出来なくて申し訳ない。どういう状況ですか?』


戦いの展開が大きく変わっていた純恋達の方に注目しすぎて

楓たちの戦いをあまり見ることが出来なかった。

急いで状況を確認すると千夏さんから念での返事が返ってくる。


『こちらの仕掛けを全て返されています。

しかも何者かに狂わされていたはずなのに様子がおかしいんです。』


少し焦っているように聞こえた千夏さんの言葉を聞いて白虎の様子を見ると、

先ほどまで口から唾液がこぼれでいたがその様子は無く、淀んだ眼も透き通っている。

意識を乗っ取られているような雰囲気が完全に消え去っており、

真っすぐな瞳で捕えている三人を品定めしているように見えた。


「・・おい!白虎!!」


その様子を見て青さんが白虎に対して声をかける。


「意識はあるのか!あったらわしらの話しを————————」


説得を試みる青さんの言葉を遮るように白虎の口が開いた。


「ある。」


低い声で青さんの問いに答えた白虎だがあまりに短い一言であり、

言葉を放ったことに驚いた青さんが言葉に詰まってしまう。


「・・・・・・なら話しは早い!今は何も聞かずわしらに協力をしてくれ!!」


今はこんなことをしている場合じゃない。

もっとやるべきことがあるはずだと青さんは説得を試みるが白虎の口は動くことはなかった。


「・・あなたはこの戦いに何を望んでいるんですか?」


戦闘に立つ楓は別角度から説得を試みる。

何も言わないという事は白虎自信がこの戦いを望んでいるという証であり、

その望みをかなえることが出来れば無駄な争いを避けると踏んだのだろう。


「・・・・・共に歩む者を探している。」


楓の言葉を聞いて少しの沈黙を挟んだ後、白虎は静かに答える。


「歩む者?お主は契約主を失っているということか?」


「そうだ。晴明に飲み込まれた後、その契約を賀茂忠行が引き継いで

わしらを洗脳した後無理やり体を動かされていたが・・・その契約が”つい先”ほど途絶えた。」


つい先ほど途絶えた・・・?

白虎の驚きの報告を聞いて青さんが慌てて聞きなおす。


「何じゃそれは・・・!賀茂忠行が死んだということか!?」


強力な契約である式神契約を切ることが出来るのは手段が限られている。

それこそ一度命が絶たれるほどの事情が無ければ契約は絶つことが出来ない。


「いや、それはないだろう。恐らくだが、俺達をここまで連れてきた奴の仕業だ。」


どうやって契約を絶ち切ったか分からないが、

無契約状態で俺達の前に十二天将の二柱を置いて行くなんてリスクしかないだろう。

土御門・・・一体何を考えているんだ?


「・・何はともあれじゃ!白虎!わしらに手を貸してほしい!!

晴明の命を奪った賀茂忠行を共に討ち果たそうぞ!!!」


想定していたよりか早く話すことが出来、これなら交渉に持ち込める。

青さんも必死に白虎を口説き落とそうと声を上げるがその当人は口を動かすことはない。


「何が不満じゃ!わしは・・・お前達が取り込まれている間、戦っていた!

その長きに渡る戦いの中でも・・・そこにおる龍穂は賀茂忠行を倒せる力を秘めておる!!

お主が共に戦ってくれれば奴を・・そして晴明を・・・!!!」


十二天将の中で唯一青さんのみが取り込まれずにここまで戦ってきた。

その詳細を俺は分からないが、青さんと言えど心のどこかではきっと心細かったはずだ。

同じ方角を守る神として長い時間を過ごしてきたであろう白虎と約千年ぶりに再会し、

まるで縋るように白虎を必死に説得している。


「・・ならなぜ、討ち果たすはずの賀茂家の子孫に仕えている?」


青さんの説得に割って入り、疑問を投げかける。

俺達にとってあまりにも当然の質問だが、

白虎の中の時間が平安時代から止まっているのであれば当然の疑問だ。


「子孫の命を吸うことで賀茂忠行が生き長らえているからじゃ!

忠行の血を引く子孫だとはいえ龍穂も生きておる!

生命あるもの、生き長らえる事を望むのは必然だろう?だから奴を討伐するために戦っておる!

それにわしは手を貸しているんじゃ!」


「・・筋は通っているようだが如何せん状況が飲み込めん。だが・・・気に食わんな。」


俺の方をじっと見つめて小さく唸る。


「お前が必死に説得している間、その本人はただこちらを眺めているだけだ。

必死なお前の姿を見ても、まるで他人事のように振る舞っているような男と共に

賀茂忠行を討伐しようとは思えんな。」


「あの人は私達があそこで立っているようにお願いしているのです。

あなた達をここまで運んできた男との戦いに備え、体力を温存している。

本来であれば私達の前に立ち、戦い続ける男ですよ。」


俺を侮辱したと思ったのか楓がすぐさま反論する。

白虎は状況を飲み込めてはいないものの、青さんと同じ志を持っているようで

自らと並び立って共に戦う相棒を求めているようだ。


「・・どうかな。口だけではなんともいえよう。」


俺だけではなく手当を受けている桃子や純恋を眺めた後、ゆっくりと楓たちの方へ向き直る。


「ひとまず青龍の言う事は分かった。だが・・・私は自らが認めた者の隣に立つと決めている。」


先程とは比較にならないほどの重厚な唸りを楓達に向ける。

交渉は決裂。いや、戦いを望んでいるという事は成功したと言っていいのだろう。

もし俺達が白虎の眼鏡にかなわなかったのであればこの部屋から飛び出していたはず。

戦う選択を取ったという事は実力以外は認められた証だ。


「青さん。あの人は強いですか?」


「わしより弱い・・・と言いたいところだがほぼ互角と言っていい。気を抜くなよ?命を奪われるぞ。」


戦う姿勢を見せた白虎を見た青さんは宙へ飛ぶと、

いつもの幼い姿から本来の姿である大きな龍へと姿を変える。


「やる気か。久々だな。」


「お主を引き入れられるのなら一肌脱ぐ以外選択肢があるまい。」


お互いが大きな雄たけびをあげながら突っ込んでいき、大きな牙を向けながら激しくぶつかり合う。

竜虎相打つ。強者が激しく争い合う様子を表現した言葉だがそんな伝説上の二体が

本当にぶつかり合う姿を初めて見た。

全てをかみ砕けるほどの強力な顎に備わった鋭い牙で噛みつき、

触れただけでも傷ついてしまいそうな爪で相手の振るう。

激しい肉弾戦だがお互いの皮膚や鱗を傷つけるには至っておらず、青さんの言う通り実力は互角。

時間差での攻撃などからめ手を使うが、お互いの手の内は既に読めているようで簡単に躱していた。


「白虎や。相変わらずじゃのう。」


「お前もな。」


同じ主に使役されていたんだ。お互いが戦っている姿は何度も目にしているだろう。

二人が旧知の中であることは分かったが、これでは致命傷を与えるに至らない。

桃子の怪我の事もある。二人を急かしたくないができれば早期決着が好ましい。


『分かっています。』


そんな俺の心情を察したのか、千夏さんと楓が青さんの後に続くように走り出す。

青さんの実力を白虎に示したとしても結局の所、

青さんと共に歩む俺達の実力が相応しくなければ決して認める事はないだろう。

俺が出ていきたいところだがここは二人に任せている。何とかしてもらうしかない。


「ふっ!!!」


千夏さんを置いて跳ねた楓は、戦っている青さん達の頭上まで飛び上がり一気に降りていく。


「私だって負けませんよ・・・!!!」


楓の中にある力が増幅していくと、神融和をしているのにも関わらず

背中から大きな黒い翼が生えてくる。

そして拳を突きだしたまま、戦っている白虎目掛けて突っ込んでいった。

自ら存在感を示した楓を白虎が気付かない訳がない。体を素早く一歩引いて上空からの一撃を躱す。

大きな音と共に砕けた岩から出た砂埃が舞い上がるが、その中から楓が白虎に目掛けて突っ込む。


「はああぁぁぁぁ!!!!」


手には先ほどまでなかった手甲鉤が付けられており、白虎の目掛けて突き立てる。


「淫魔か。珍しいな。」


金属音が鳴り響き、見事鉤が命中したかと思ったが、

白虎の牙によってかみ砕かれた鉄屑が無残に床に落ちていく。


「そんな物で俺を傷つけようなどと・・・バカにされたものだ。」


その姿を見た楓はすぐに距離を取り、鎖鎌を取り出す。


「別にあんなものであなたと戦えるなんて思ってもいませんよ。」


分銅を振り回し再び白虎の頭目掛けて放つが結果は同じ。かみ砕かれただの鎌となってしまう。


「小細工にもならん。面白くないな。」


先程とは違い冷静になった白虎は、全く隙を見せずに佇んでいる。

こうなってしまえば忍びである楓の小細工は全て無意味。

後ろに青さんと千夏さんが控えているので距離を取ってしまえば突っ込まれる危険性があり、

残された択は正面突破のみだった。


「大方時間稼ぎをするつもりなのだろうが・・・そんなものに付き合っている暇はない。」


ゆっくりと足を踏み出し堂々と距離を詰めようとする白虎。

だが二歩目を地面に付けた時、なぜか動きを止めた。


「・・・なんだ?」


「あれま。もう気付いちゃいました?

まだ仕込みが完了してしませんが・・・体の変化に敏感なんですね。」


違和感に気が付いた白虎の姿を見て残念そうにつぶやく。


「先程の武器には特別な薬を塗らせてもらいました。

淫魔の中でも上位に位置するクイーンサキュバスの血を引いてましてね。

強い催淫を出すことが出来るんですよ。」


先程の手甲鉤、そして鎖鎌。

その両方に楓が作り上げた催淫効果のある薬を付けていたようで、

白虎が感じた違和感は自らの体が催淫の犯されつつある証であり体の自由が効かなくなっていた。


「謀ったな・・・。」


「弱者には弱者なりの戦いがあるんですよ。

ですがこの程度で気付かれるようでは私もまだまだですね。」


懐から取り出したグローブをはめ、札から白鞘の刀を取りだし逆手で体の前に構える。


「本来であればもう少し弱らせてから戦いたかったですが・・・仕方ありません。

こちらの得物には何も塗っていません。ですからここからは・・・力比べと行きましょう。」


楓が刀を得意としていた記憶はない。

恐らく上泉先生や長野さんとの鍛錬で新たに仕込まれた。

青さんと互角の実力を持つ白虎相手にあえて近接戦を挑んだ楓。

勝算があっての事だろうが、鍛えた自らの実力を見せる時だと判断したのだろう。

縮地で駆けだし、白虎の牙と鍔迫り合いをするが鋼がかみ砕かれることなく、押し負けもしていない。


「やるな・・・!」


この一撃で白虎も楓に興味を示したらしく、本格的な戦闘が始める。

その後ろで幼い姿に戻った青さんと千夏さんが攻撃の準備を進めていた。




ここまで読んでいただきありがとうございます!

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