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木星の陰陽師 ~遠い先祖に命を狙われていますが、俺の中に秘められた神の力で成り上がる~  作者: たつべえ
第二章 上杉龍穂 国學館二年 後編 第二幕 修学旅行
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第百八話 予想外の修学旅行

外の景色を眺めながら頬杖をつく。

快晴の空に上がるはずの気分が曇り空なのは、嫌な思い出が頭の中を巡っているからだ。


「龍穂・・大丈夫・・・?」


向かいに座る桃子が心配そうに声をかけてくる。

大丈夫だと伝えながら、その隣で座る曇り空の原因に目を向けた。


新学期が始めるため前日に寮に入ったが、そこには毛利先生が待っており、一枚の冊子を手渡してきた。


その表紙には修学旅行のしおりと書かれており、皇太子様の有言実行を見て

純恋も見直したわと呟いたがいやに薄く感じる冊子を手に取り嫌な予感が頭によぎる。


すぐに去っていく毛利先生を尻目に察し、

中身を確認すると嫌な予感が的中どころか明後日の方向に飛んでいくぐらいの

薄い内容がそこには書かれていた。


「なんとまあ・・修学旅行っていうか・・・。ただの旅行だよなこれ・・・。」


行き先は京都。時間が無いので海外に行くなんてことは出来ないだろうと思っていたので

それは良いとして、純恋が嫌な思いをした京都にまた行くことになるのはあまりに酷だろう。


冊子の薄さからして予想は着いていたが、ほぼ自由時間。

まあこれも時間が無かったので仕方がない。だが問題なのは・・・。


「しかしまさか学校が始まってすぐに行くとは思わんかったわ。

もうちょっと早ければ荷物をまとめる時間作れたかもしれへんのにな。」


まさかの初日に修学旅行。突貫工事にもほどがあるだろう。

冬休み用の荷物はまとめていたが、既に色々と使用した後なので再度まとめる必要があった。

準備時間は一日も無いので急いで荷物を確認し、足りない物をすぐに買いに行った。


「自由時間が多いのはいいけど・・・いざ行くとなると意外と行くとこ無いんだよなぁ・・・。」


「龍穂達はええけど私達は何度も行ったことあるからなぁ。

観光する場所、もうないで・・・。」


文句を言いながら桃子にもらったお菓子を頬張るが、隣にいる純恋は手も付けない。

修学旅行先が京都なことに対して初めは不機嫌にだった。

だが既に吹っ切れたようで俺達との旅行をただ楽しみにしているようだが、

近くにいる涼音に対して警戒を強めているようだ。


「純恋?おやつ食べへんの?」


「・・いい。」


お正月前に駅で襲撃を受けたことが頭に残っているのか、

涼音の一挙手一投足に警戒をしてしまっている。


嫌な記憶は俺にもあるがなんと兼兄と毛利先生、竜次先生が引率としてついて来てくれている。


そしてなんとこの新幹線は俺達の貸し切りだ。

しかも魔力や神力を弾く特別製。何があっても全て対応できるだろう。


「純恋、そんなに警戒しなくてもいいだろ?涼音は怪しい行動をしていないぞ。」


「そう言う問題や無いねん。警戒しとるでって思わせること事こそが予防線になるんや。」


「そうかもしれないけどさ・・・。」


反対の座席に座っている涼音と綱秀はずっと純恋の視線を感じている。


「まあまあ純恋さん、もう相手に警戒を伝える事は出来たでしょう。」


二年生のみでの修学旅行だが

俺達の護衛の実習として、千夏さんと共に何人か国學館の生徒達がついて来てくれている。


『・・楓。席の移動できるか?』


離れた席にいた楓に念を送り、綱秀達の向かいに席に座ってもらう。

近くに楓がいるのなら純恋の警戒も少しは和らぐだろう。

こういった時に念でお願いできるのはありがたい。

千夏さんも純恋にお茶を差し出して機嫌を取ってくれている。


敵としての認識が今だ抜け切れていない純恋。

千夏さんと楓、そして桃子は何とか説得をして警戒を表に出さないようにしてくれた。

後は涼音次第、何かしら信頼を勝ち取ってくれるような出来事があればいいんだが・・・。


「京都か・・龍穂は行きたい場所あるんか?」


楓が近くに行ったことで純恋が警戒を解き、話しかけてくる。


話題はもちろん修学旅行の内容。

内容を聞かされたのが近々過ぎたせいで行きたい場所を簡単にリストアップをすることしか

出来なかったが、ありきたりな場所ばかりだった。


「祇園とか、金閣寺に銀閣寺・・・とか。」


「ありきたりやな。まあそれでこそ修学旅行か。」


中学校の修学旅行に一度来たことがあるが、

日ノ本の歴史を辿るうえで中心である京都の歴史が刻まれた建造物を見て回ったのは非常に楽しかった。


その楽しい場所を純恋達ともう一度回りたい。

そう思って同じ場所を選んだが、どうやら純恋のお気に召したらしい。


「やけど二泊三日や。場所がばらばらと言ってもバスなんかが出てるから一日で回れるやろ。

他にもどこか回る候補を見つけんとな。」


日ノ本の首都が東京に変わったがそれでも京都は重要な場所として機能している。

例えばつい最近話が出た京都御所は皇の儀式が行われる非常に重要な場所だ。

そう言った背景を持つ京都は戦火に包まれることが稀であり、

近年では百鬼夜行を除けば大きな事件は起きていない。


今回の修学旅行は自由時間が大半だが移動範囲を京都のみ。

しかも京都駅周辺に絞られており、それ以外の場所に出るためには

毛利先生や兼兄の許可を得なければならない。


「候補っていってもな・・・。

京都駅から離れた場所なら早めに報告しなきゃだめだし・・・。」


他の候補が思い浮かばない。

美術館や庭園など探せばいくらでも出てくるだろうが、一度外に出たのなら

せっかくなら他の場所も行けるよう上手く計画を組みたいという欲張った思考になってしまう。


「・・でしたら賀茂御祖神社かもみおやじんじゃなどいかがですか?」


三人で悩んでいる所に千夏さんが提案してくれる。


「かもみ・・・どこやそれ?」


「京都駅から少し離れた場所にある神社です。護衛をすると聞いた時、少し調べてみました。」


賀茂御祖神社・・・。俺の苗字が入っている神社だ。


「それは・・賀茂家由来の神社・・・なんですか?」


「いえ、そうではないのです。


賀茂家由来の神社は有名な所だと、奈良にある高鴨神社という所がありますが

今回は京都のみの行動に限られています。


他にも調べればあるのでしょうが、それではあまりつまらないと思いまして

龍穂君達の気を引きそうな場所を考えたのです。

そして・・・京都の文化財である賀茂御祖神社を思いついたのですよ。」


京都の文化財となると相当歴史のある神社だろう。

賀茂家と関わりの無いのは残念だが、かなり興味を惹かれる場所だ。


「そんな場所あったんか・・・。知らんかったわ。」


「私ら神社とか見飽きてるもんな。名前聞いてもすぐに忘れてしまうねん。」


「その周辺には美術館や植物園もありますので観光にはちょうどいい場所だと思いますよ?」


なんと千夏さんは神社だけではなくその周辺まで調べてくれている。

もしかすると修学旅行に同行できると聞いて、

浮かれているのは純恋だけはなく千夏さんも同様なのかもしれない。


「丁度いいじゃん。行ってみよう。」


護衛としてついて来てくれたのは千夏さんと藤野さん、楓と真田と火嶽の五人。

基本的には千夏さんと楓が俺たち二人について来てくれるので、一緒に観光が出来る。


「楽しそうだな。」


修学旅行の計画を立てていると俺達の声を聞いたのか、兼兄が近づいてきた。


「どこに行くのか決めているんだな?」


「そうやで。盗み聞きはやめてや。」


「そうはいかない。俺達はお前達を守るために来ているんだからな。」


兼兄の言葉を聞いた千夏さんは姿勢を正し、口数を減らす。

この実習の依頼主は兼兄だ。護衛の任務には当然任務中の態度も評価に含まれる。


「別に文句を言いに来たんじゃない。だからあんまり緊張しないでくれ。」


そう言いながら緊張をほぐすために千夏さんの頭を撫でるが

それを見た純恋がすぐに手を払い、セクハラはあかんでと釘をさす。


「手厳しいな・・・。賀茂御祖神社に行くのか?」


「ええ、そう考えています。」


「さっき千夏ちゃんが賀茂家に関係ないと言っていたが実はそうでもない。

主祭神の一柱である賀茂建角命かもたけつぬみのみことは賀茂家の先祖であるという説もある。


もしかすると何かしらの資料が保存されているかもしれないぞ?」


「やっぱり盗み聞きしてるやん・・・。」


「まあそういうな。俺も心配しているんだよ。

それにこの神様は太陽の化身とされる八咫烏を化身としているんだ。

純恋ちゃんも何か収穫があるかもしれないな。」


そう言うと兼兄は携帯を取り出す。


「許可は俺が出しておく。

神主さんとは面識があるから龍穂達が行くと連絡を入れておこう。

二日目に昼過ぎに予約を取っておくから貴重な話しを聞いてこい。」


電話相手の神主さんであろう人と話しながら元の席へと戻っていった。


「・・急な修学旅行に先生達は不満があると思ってたけど、兼兄は意外と乗り気なんだな。」


「業に休みはないからな。お正月前はずっと私達と一緒に来てくれたし、

最近まで八海の件の対応をしていたんやろ。

思わぬ休日が出来てラッキーって思っているんちゃうか。」


八海のニュースは落ち着きを見せたが親父と定兄からは何も連絡はない。


駅で新幹線を待っている時に兼兄に尋ねたが、

まだ落ち着いていないから大人しく親父の連絡を待ってくれと言われてしまった。


(猛達の事も竜次先生にはぐらかされてしまったし・・・。)


一応陰陽師としての初仕事で八海を救う大手柄を上げた事にはなっているようだが、

結局の所八海での詳細は伏せられたままだ。


魔道省や土御門泰国が絡んでいるので公に公開されるのを防いでいるのだろうが、

当事者である俺達ぐらいには情報を教えてくれてもいいだろう。


「なんだかなぁ・・・・。」


今までの襲撃の詳細な結末を気にしていなかった事に今更後悔する。

仙蔵さんの時から兼兄にしつこく聞いていれば八海の事件も詳細を確認できたのかもしれない。


「悩み事ですか?」


「あっ・・いえ、気にしないでください。」


仙蔵さんは自らの命で俺に戦う意思をくれた。

平将通も賀茂忠行に無理やり戦うように指示を受けていたが、弟子に戦う意思を残した。

八海の件は魔道省の高官を父に持つ惟神高校の生徒が引き金であり、

何かを残すための戦いではないが俺の帰りの襲撃するために起こした事件だけでは無いように思える。


わざわざ八海で待ち伏せしなくとも襲えるタイミングはいくらでもあるだろう。

何か意味があってあの場所にいたとして思えない。


だが調べようにも親父や定兄から来るなと言われてしまっているし学校が既に始まっている。

修学旅行を終えて急いで八海に戻ったとしても、事態は収束に向かっているので意味が無いだろう。


「・・・・・・・・。」


再度高速で流れる景色を眺める。

自分の意志で戦っていると思っていたのにいざ振り返ると、まだ戦わされている気分だ。


この胸のもやもやは一体いつになったら消えるのだろうか。

このままただ突き進んでもきっと同じ思いを抱えたままなのだろう。


この新幹線の様に敷かれたレールを走っているのではなく、自分の道を歩みたい。

そうするにはどうすればいいのか。到着までの時間で考えることにした。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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