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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
最終章 終わる世界の向こう側

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弱点がないと言うのなら、後付けしてからついてやれ

最後の部分だけ三人称です。ご注意下さい。

「きゃぁぁぁぁっ!?」


「ティア!?」


 神の体から吹きだした気配に、ティアが椅子から転げ落ちる。俺はそんなティアの腕を引いて素早く自分の後ろに庇うと、いけ好かない顔をした神に向かって腰の剣を引き抜いた。


「おいおい、いきなりだな!? てかお前、俺の事は殺せないんじゃなかったのか!?」


 正確には、殺すことはできても滅ぼすことはできないという感じだったと思うが、この際それは小さな違いだ。構えながら問う俺に、神は声を荒げながら答える。


「何を言い出すかと思えば……確かに私はお前を恐れている。故に迂遠な方法で排除しようとしていたが、ここまで近づかれてしまえば話は別だ。たとえ致命の一撃を返しで受けようとも、お前は今この場で叩き潰す!」


 神の振るった剣が衝撃波を生み、俺の周囲で破壊の嵐が吹き荒れる。今の俺は「不落の城壁(インビンシブル)」や「吸魔の帳(マギアブソープ)」のような防御能力を失っている状態ではあるが、仮にそれがあったとしても、この攻撃に耐えられるとは思えない。


「うぉぉ!? くそっ、何だよその覚悟の決め方!?」


「うるさい! お前だ、全てはお前から始まったのだ! お前さえいなければ、私はこんな風に揺らぐことなどなかったのだ!」


「ぐぅぅぅぅ……っ!」


 衝撃波の一つが、俺に向かってまっすぐ飛んできた。それを「終わりの力」を纏わせた「夜明けの剣(ドーンブレイカー)」で受け止め、辛うじて上に弾くことができたが……


ビキッ


「チッ、またかよ!」


 殻を破るときに入ったヒビが、少しだけ深くなる。慌てて「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」から「黄昏の剣(トワイライト)」を取りだして持ち替えたが、そっちには上手いこと「終わりの力」を留めることができない。おそらくは力を抜く方向で調整されているからだろう。となると、「黄昏の剣(トワイライト)」で神の攻撃を防ぐのは無理そうだ。


「かつての私は、何も感じていなかった。あらゆることを識ってはいたが、感じてはいなかったのだ。


 だがそこにお前が生まれた。『終わり』という概念に、私は初めて『恐怖』を感じた! それさえなければ、お前さえ生まれなければ……私はずっと、私でいられたのだ!」


 神が滅茶苦茶に剣を振り回し、てっきり不壊だと思っていた周囲の床が抉れていく。そんな威力の攻撃を受け続けたくはないんだが、背後にティアがいる以上、ここを譲る選択肢は無い。


「怖い、怖い、怖い、怖い! 死ぬのが怖い、終わるのが怖い! 孤独に生まれ、孤独のまま果てていくのが、怖くて怖くてたまらない! こんなものを知ることが完全へ至る一歩だというのなら、私はずっと不完全でよかった! 識っているだけで何も感じぬまま、粛々と世界を管理しているだけでよかったのだ!」


「…………可哀想」


 猛攻を防ぐ俺の背後で、ふとティアが小さく呟いた。ゴゥンゴゥンという激しい音のなかで、その声だけが妙にはっきりと聞こえる。


「あの人……まるで泣いてる子供みたい」


「子供?」


「そう。小さな子供ってね、大人には理解できない理屈で、何だかわからないものをもの凄く怖がるの。不思議よね、私達だって昔は子供で、そうやって何かを怖がってたはずなのに……今となってはそれがどうして怖かったのか、全然わからないの」


「へー、そんなもんなのか。なら、そういうときはどうするんだ?」


 ティアの言葉は、正直俺にはよくわからない。何せ俺は子供だった頃があるのかどうかすらわかんねーからな。だが似ているというのなら、その対処法は役に立つかも知れない。神の攻撃を耐えしのぎながら問う俺に、ティアがそっと答えを口にする。


「怖くないよって、声をかけてあげるのよ。大丈夫、貴方は一人じゃないよって。だから怖くないよって……でも…………」


「そいつはちょいと、難易度が高そうだなぁ」


「アアアアァァァァァ!!!」


 最早言葉にならない叫び声をあげながら剣を振り回す神に近づいて、そんな言葉をかけてやるのは難しいなんてもんじゃないだろう。というか、最低でも同格だと認めさせなければ、何を言っても通じるとは思えない。


(どうすりゃいい? 俺が一気にパワーアップ……んなことできるなら苦労はねーよな。なら神を引きずり下ろす……それも同じだ ならどうする?)


 一応「火事場の超越者(リミットブレイク)」に「終わる血霧の契約書(ブラッドエンジン)」を重ねるという最終手段が無くもないが、たとえ俺の力が一〇〇〇倍になったところで、神との差が爪一枚分くらい近づく程度だろう。


 なら神を終わらせる、か? できるとは思えねーし、そもそもできたとしてもやったら駄目だろう。神をこの殻から引きずり出さなければ、世界は結局終わってしまうのだ。


(いや待て、そう言えばシーナの奴が、もう一つ何か言ってたな……)


 ふと、頭にあの時の会話が蘇る。全く興味がなかったのですっかり忘れていた……というか思い出し損ねていたのだが、確かそう、俺が神の力を奪って、俺自身が神になるとか……………………


「あー、ティア? 実は一つ、作戦を思いついたんだが……」


「いいわよ。私はどうすればいいの?」


「……何も聞かなくていいのか?」


「いいわよ。だって聞いたら、やめてってお願いしたくなる内容なんでしょ?」


 振り向くことなどできない俺の背で、ティアが確かに苦笑したのを感じる。それと同時に俺の背に、ティアがそっと手を触れてきた。


「だから私は、エドを信じるわ。それで失敗したら……フフッ、その時は次の私によろしくね」


「……悪いが、その約束をする気はねーな」


 さっき神の野郎が言っていた話じゃねーが、いつ何処で出会うティアも、その全てが本物なのだろう。だが今の俺と一緒にいてくれたティアは、今ここにしかいない。なら次なんてない。次を生ませないためにも……こいつが何億、何兆、何京と繰り返した、俺の人生最後の賭けだ。


「いいか、よく聞け――――」





「くそっ、こうなりゃ自棄だ!」


 そう叫んだ魔王の姿が、突如としてその場から消える。能力増加と加速系の力を使った魔王は、その体から赤い霧を立ち上らせつつ神の後方へと一瞬で回り込んだが……


「甘いな」


「ぐおっ!?」


 ナメクジがカメの速度になったところで、神の目を誤魔化せるはずもない。瞬きの間すらなく振り向いた神が剣を振るえば、魔王目がけて再び激しい斬撃が降り注ぐ。


 だが、今度の魔王は怯まない。回避もそこそこに血まみれになりながら魔王が突っ込んで来たが、あと一歩というところで神の振るった剣が直接当たり、魔王の持つ剣の夜明けのような刀身が砕け散って……魔王の腹を、神の腕が刺し貫いた。


「ぐっ……はっ……………………」


「ふむ、最後は存外あっけなかったな。まあ確かに時間の問題ではあったが」


 腹を貫かれてなお、魔王はまだ生きていた。だが腹を刺し貫いた瞬間に、神は魔王の力が自分に流れてくるのを感じている。つまり今の魔王はその力を全て失っており、放っておけば小さき者(ただのにんげん)として、程なく死ぬことだろう。


「だが、こんな力私は要らぬ。返してやるから、最初からやり直してこい。そして今度こそ…………?」


 声に詰まったことに首を傾げると、神の口からゴプッと血が零れた。意味がわからず視線を下げると、自分の腹から一本の剣が生えている。


「……何だ? コレは一体……?」


「油断したわね、神様?」


 神ならば、振り返らずとも背後くらい見える。そこにいたのは魔王の側に侍っていた、取るに足らない小さき者。強く意識しなければ存在そのものを見失うような儚いそれが握る黄昏の剣が、神の腹から生えている。


「馬鹿な、何故小さき者が私を傷つけられる? 仮に傷つけられたとしても、この感覚は……!?」


「エドが言ってたの。貴方とエドの間では、能力のやりとりができるって。エドを殺してその力を……『終わりの力』を宿した今の貴方なら、私でも終わらせる(ころす)ことができるって」


「なん、だと……!?」


 そもそも、神は不滅であった。何故ならそこに、終わるという概念がなかったからだ。だが魔王を倒したことで、その力が……「終わる」という概念が、神の中に加わった。


 そう、今この一時だけ、神は「死ねる」ようになったのだ。


「だ、だが何故だ!? 私が死ねば、世界が滅ぶのだろう!?」


「ええ、そうね。だから……」


 まるで愛しい人にそうするように、ルナリーティアが背後から神に抱きつき、その耳元に唇を寄せる。


「私と一緒に、もう一周しましょう?」


「な――――――――」


 その瞬間、世界を現す砂時計が、クルリとひっくり返った。

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― 新着の感想 ―
[一言] おっ?なんだ、これからまた500話くらい読めるのか超お得
[一言] 次は神様と100の異世界で一周目無双! 俺たちの冒険は始まっまたばかりだ!!
[良い点]  2巻にエドの1枚絵がなかったようなあったような、個人的に1枚ほどはかかさずどの巻にもエドは描かれたほうがいいかなーと [気になる点] 神さまは小さいサイズになって対決しないとやっぱり理性…
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