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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第三一章 くらやみのせかい

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こちらにできることは、相手だってやってくる

前半部分だけ三人称です。ご注意下さい。

「くっ、このっ!」


 エドが甲板から姿を消した瞬間、敵の攻撃は一気に激しくなった。ルナリーティアは必死にそれを防いでいるが、もはや二割も防げていない。


 だが、それも仕方がない。エドは「羽付き」を倒すことができたが、ルナリーティアに可能だったのは降り注ぐ攻撃を防ぐだけ。倒されなくなった敵の分まで攻撃が増えるのだから、そもそも防げると考える方がおかしいのだ。


 何十発もの光の矢が、ルナリーティアの防御を越えてノアブレインの船体に突き刺さる。それはノアブレインが纏う黄金の粒子が黒化することで防がれていたはずなのだが……


「うわっ!? え、嘘!?」


 激しい衝撃によろめいたルナリーティアの視線の先で、遂にノアブレインの船体に穴が開いた。そしてそれを皮切りに、敵の攻撃が次々とノアブレインを傷つけていく。


「そんな!? まだ、まだよ! 私は絶対、諦めない!」


 一分が、途轍もなく長い。そして一分経ったとしても、状況が好転するのかはわからない。少なくともルナリーティアには、この窮地を脱する方法など何も思いつかなかった。


「エドに……エドに頼まれたんだからっ!」


 だが、エドは……自分の相棒は、絶対に自分を裏切らない。どんな問題だってニヤリと笑って、あっさりと解決してしまうのだ。


 ルナリーティアは、それを信じて疑わない。いや、正確には信頼ですらない。決して揺るがぬ事実に対し、人は「信じる」という言葉を使わないのだから。


「来るな!」

「消えろ!」

「去れ!」


 無数の「羽付き」達が、槍の先端に光を宿してルナリーティアを狙う。この一分を保たせるために全力を振り絞ったルナリーティアに、もはやそれを防ぐ余力はない。


 だというのに、その顔に絶望は浮かばない。ただ相棒のようにニヤリと笑みを浮かべ、その顔に光の矢が突き刺さろうとした瞬間。


「「「ア、ア、アアアアアァァァァ!?!?!?」」」


 ノアブレインの船体から広がった黒い霧が、光の矢ごと周囲の「羽付き」達を飲み込んでいく。その光景に呆気にとられつつも、ルナリーティアが振り返れば――


「流石ティア。最高にいい仕事だったぜ!」


「……フフッ。当然でしょ? 私はエドの相棒なんだから!」


 最高の笑顔で親指を立てるエドに、ルナリーティアもまた笑顔で親指を立てて応えるのだった。





「にしても、こいつぁスゲーな」


「ねえエド、これ一体何をしたの?」


 周囲の「羽付き」を一方的に食い散らかしていくノアブレインの食欲に感心していると、横にいたティアがそう問いかけてくる。


「エドが何かの能力を貸したのはわかるけど、何を貸したの? エドにこんな能力あった?」


「そりゃあったさ。っていうか、ティアも知ってる能力だぜ?」


「えぇ? うーん…………駄目、降参! わからないわ」


 ひとしきり考え込んだティアが、しかしすぐにそう言って両手をあげる。まあそれも仕方ないだろう。何せ俺だってこんなことができるとは思ってなかったからなぁ。


「なら教えてやろう。正解は……『美食家気取りの草食獣(グラスイーター)』だ」


「……えぇ? それ、確か道に生えてる草が美味しく食べられるってやつよね?」


「そうそう。つまり『周囲にあるものを食う』って概念を貸したんだよ。できるかどうかは賭けだったんだが……思った以上に上手くいったな」


「はー。本当、何がどう役に立つかわからないわねぇ」


「まったくだ」


 感心するティアに、俺も心から同意して頷く。まさかこの土壇場で、役に立たない「追放スキル」の筆頭だと考えていたのが起死回生の一手になるとは……やはり世の中、真に無駄なものなんて一つもないってことだろう。何事も考え方、使い方一つなのだ。


「っと、そういや船体が大分やられてるな。ノアブレイン、『見様見真似の熟練工(マスタースミス)』を使え」


『オーダー受諾。船体の修復を開始します』


 追加で入れておいた能力を発動し、ノアブレインが船体を修理していく。流石に「包帯いらずの無免許医(リジェネレート)」を貸すのは怖かったが、考えてみればこの船は生きているわけじゃねーんだから、そっちでよかったわけだ。問題なく船体の修理は進んでいき、すぐに新品同様にまで直った。


 そうして万全の状態を取り戻すと、俺達は無人の野を行くが如く大量の「羽付き」達の間を悠々と進み続けた。群がる敵は全て吸収してノアブレインのエネルギーとなり、吸収範囲外からの攻撃も潤沢なエネルギーがあれば「不落の城壁(インビンシブル)」で完璧に防げる。仮に壊れても「見様見真似の熟練工(マスタースミス)」で即座に修復されるわけだから、こりゃひょっとして楽勝かと思ったのだが……


『警告。周囲の敵のエネルギー反応が急速増加』


「ん? おぉぉ!?」


 単なる餌にしかならないと理解したのか、周囲の「羽付き」達が寄り集まり、合体し始めた。腕が四本に羽が八枚、体の大きさに至っては五倍近く巨大化している。攻撃回数が多けりゃ強い。速く動けりゃ強い。そして何より、でかい奴は強い……なるほど、実にわかりやすい答えだ。


「ノアブレイン、あれも食えそうか?」


『オーダー受諾。対象の解析を開始……終了。対象の創世因子が多すぎるため、エナジードレインは通じないと思われます』


「そうか。なら……よっ!」


 ノアブレインに吸収できないなら、あえて放置する理由もない。俺は「終わりの力」を宿した剣を振るい、その結果でかい「羽付き」は、あっさりと黒い塵に還っていった。


「ふむ、俺なら倒せるけど……流石に手数が足りねーか」


 何十体もの通常種が合体して一体になっているのだから、敵の数は当然減っているはずだ。だが元の数が数なので、減ったという実感は全くみられない。


「ごめんエド、ちょっともう、今は防げないかも」


「ティア!? わかった、ならとりあえず操舵室に避難してくれ!」


「わかったわ。少し休んだら戻ってくるから!」


 それにどうやら、ティアも限界だったようだ。素直に船内へと戻っていくティアを見送ってから、俺は改めて周囲に群がるでかい「羽付き」……「羽付き改」とでも言えばいいか? とにかくそっちに意識を向け直し、改めて剣を振るっていった。


 落ちる、落ちる、終わっていく。でかく強くなった「羽付き改」と言えど、「一つ上」となった俺の終わりの力の前では、単に的が大きくなっただけだ。


 だが敵の数は尽きず、敵の手数は増えている。特に甲板から見えない位置にいる「羽付き改」に対しては、俺ではどうすることもできない。


「逆転、逆転、また逆転ってか!? 飽きさせない展開に涙が出てくるぜ!」


 たっぷりとエネルギーが補給できたおかげで、今はノアブレインの防御機構……俺の貸した「不落の城壁(インビンシブル)」で何とかなっている。だが「羽付き(ほきゅうさき)」がなくなっちまった以上、それも長くは続かない。制限時間は延びたが、ゴールに着くにはまだまだ足りないのだ。


 くそっ、どうする!? 結局ジリ貧の状況は変わってない。もっとこう、根本的に現状を打破する何かがあれば…………


(おいおい、何言ってんだ? ちゃんと仕込みは済んでるだろ?)


「…………?」


 不意に、俺の頭の中に俺の声が響いた。いや、俺なんだけど俺じゃないというか、でもやっぱり俺で……んん???


(おまえ)はちゃんとやり遂げた。お前の歩みは世界に刻まれ、お前は世界と繋がったんだ。さあ、持っていけ! これが俺の、最後の切り札だ!)


 俺の眼前に、黄金の粒子が集まっていく。それが一際強く輝くと、光は一冊の本となって落ちてきた。


「これは…………」


 見覚えのある茶色い革表紙。そこには金の箔押しで「第〇〇〇世界 勇者顛末録(リザルトブック)」と書かれていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] じぶんが培っただろう文章技術に溺れて読者の想像の余地をおいてけぼり,……にしていないと思う所。 [気になる点] クライマックス頃なのでしょうか? とすると次回作の構想ができはじめている頃…
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