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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第三〇章 英知の勇者と偽りの遺跡

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騙す者と騙される者 下

今回も三人称です。ご注意下さい。

「まずは下りてこい!」


「む?」


 エドの放った斬撃が黒い線を刻み、ルカの翼が黒い灰となって燃え落ちる。するとルカの体がストンと床に着地し、それと同時に白い光が無傷の翼を再生した。


「ふむ? 別に翼で飛んでいたわけではないのだが……飛んでいるという状態そのものを終わらされたのか? 思ったよりも応用の利く力のようだな」


「ほざけっ!」


 暢気に考察するルカに、エドは即座に駆け寄って斬りつける。黒い光を纏った剣はルカの体を幾つにも切り分け、肉片は床に落ちることすら許されずに消え去ったが……


パチパチパチパチ!


「……ふぅ。無駄だと言ったのが、まだ理解できないのか?」


 降り注ぐ拍手が白い光を生み、ルカの体が再生……いや、再誕する。怒りに身を任せるようにエドがどれだけ剣を振るおうと、その結末は変わらない。


「チッ、ならこっちはどうだ!」


 舌打ちをしたエドが、今度は人のいない客席の方を剣で切る。するとそこに黒い線が走り、紙が破れるようにその傷口が広がっていくが……


パチパチパチパチ!


「……こっちも駄目なのか」


「当然だ。この空間は貴様の『終わりの力』を無意味にするために存在する。そんな片手落ちの対処をするはずがないだろう?」


「ご高説どうも。でも、それなら尚更納得できねぇ……何で俺の力を無効化できるのに、神は俺をどうにかしたいんだ? こんなものが創れる時点で、俺なんてどうでもいいだろうが」


 顔を歪めたエドが、声を苛立たせながら疑問を投げる。するとルカは苦笑しながら小さく肩をすくめてそれに答えた。


「それはエネルギーの総量の問題だな。俺という存在やこの空間を無限に再誕するために必要な力なんて、神様の持つ力の前では取るに足らない極小だ。


 だが、神様が再誕なされるには、神様が有している力の総量以上の力が必要になる。故に俺と同じ事を神様がなさることはできないのだ」


「……なるほど、言われてみりゃそうだな。強いってのも難儀なもんだ」


 神は人を創れるし、神の使徒だって産み出せる。が、神自身を創造することは神を越える者でなければ不可能……その説明にエドは納得し、逆にルカは不快そうに顔を歪める。


「ならばこそ、今ここで貴様の心を折る! 永劫の敗北の果てに、己の無力を噛み締めるがいい!」


「エド……」

「エド……?」

「エド……っ!」


 ビロードの床から湧き上がる幻影は、血の涙を流し恨めしそうな表情を浮かべたルナリーティア。先の偽物とは違いこちらは実体すら持たないが、それでも魔王の心の傷を抉るには十分だと判断し、ルカが出現させたものだ。だが……


「フンッ!」


「「「アッ…………」」」


「……迷いなく消し飛ばすか。まあ本物を斬った貴様には、今更だったな」


「テメーの手も汚さずに、俺をどうにかできると思ったか?」


「いいだろう。確かにせっかくの舞台でもあるし、貴様が疲れて眠るまで遊んでやろう」


 挑発するエドに、ルカが翼を光らせその身に力を漲らせる。そのままバサリと羽ばたくと、エドの脇を光の塊が走り抜けた。


「ぐっ!?」


「どうした? 避けたり防いだりしなくていいのか?」


「うる……せぇ!」


「はは、威勢だけはいいな! ならドンドン行こう!」


 雑に振るわれたエドの一撃を余裕でかわすと、ルカは文字通り光となってエドの体を切り刻んでいった。エドはそれに一切反応できず、その体に次々と切り傷が増えていく。


「ほらほら、どうした? 心置きなく俺と戦い倒すために、大事な女を殺したんだろう? なのに縮こまってるだけじゃ何も変わらないぞ?」


「…………そうだな。アイツのためにも、覚悟を決めるか」


「? 今更何を――」


「『終わる血霧の契約書(ブラッドエンジン)』、起動」


「なっ!?」


 傷口から赤黒い霧を立ち上らせるエドの姿に、ルカは思わず声をあげる。その動揺で体勢が崩れ、全ての力が一〇〇倍になったエドの攻撃がルカの体を掠めた。


「貴様まさか、死んで逃げる(・・・・・・)つもりか!?」


「さあ、どうだろうな?」


 ルカの問いかけに、エドがニヤリと笑みを浮かべる。


 この時点で、ルカにはエドを殺すつもりはなかった。しっかりと心を折りきる前に死なれてしまうと、次の周回にどんな悪影響を及ぼすかわからないからだ。


 ならばこそ、ルカにとってはこの戦闘自体が想定外。エドが何より大事に守っていたはずのエルフを殺してまで戦いを挑んできたから応戦したのであって、であれば長い時間をかけてエドを嬲り、怒りも憎しみも何もかもがすり切れてなくなるまで戦い続けるという方向に方針を転換したのだ。


 だが、禁断の力を発動させたエドは、放っておいても一〇分後に死んでしまう。制限時間付きの強化能力を、ルカには防げない自殺の手段として使ったであろうエドに……しかしルカは赤い月のように口の両端を吊り上げ、邪悪に嗤う。


「クカカカカ! 甘い! 甘いぞ魔王! 心臓が破裂した程度で、今の貴様が即死などするものか! いや、そもそも俺が死なせない! 首だけになったお前を剣の先端に飾って、この場所に放置してやろう。文字通り手も足も出ない状態のまま、自分が殺した女が目の前で腐っていく様をじっくりと眺め続けるがいい!」


「その顔で腐った言葉を吐くんじゃねーよ!」


 一〇〇倍になったエドの剣撃は、全力を出したルカを凌駕した。だが一方的に斬りつけられてなお、ルカに焦りはない。何故ならその身が黒く燃え尽き「終わった」瞬間、新たな自分が始まる――


「っ!?」


 不意にガクンと足がもつれ、ルカが無様に床に転がる。何事かと思って自分の足に目を向けると、そこには黒い炎が纏わりついており……だがそれは広がることなく、その場に留まり続けている。


「な、何だ!? 何だこれは!? どうして『呼び出し不可の(アンコーリング・)最終演者(アンコール)』が発動しない!?」


「決まってんだろ? そいつは終わってない(・・・・・・)からさ」


「どういうことだ!? 貴様の力は『終わらせる』ことだろう!?」


「確かにそうだ。全ての終わりは俺が決める……なら、いつ終わるかだって俺が決められるんじゃねーか?」


「い、いつ?」


 ルカの額に、嫌な汗が流れる。そしてそんなルカの顔を、エドはまっすぐ見つめて言う。


「そうとも。お前につけた傷は『いつか』終わる……だがそのいつかは、俺がそうしない限り永遠に来ない。まあ終わりの先送りとか保留とか、そんな感じだな」


「馬鹿を言うな! そんな、そんなことが、完全に復活したわけでもない貴様にできるわけが――」


「できるさ。だって今の俺は、一〇〇倍にパワーアップしてるんだぜ?」


「ひゃく!? あ、あ、あぁぁぁぁ!?!?!?」


 エドの集めた力の欠片は、ここまでで一九個。元の二割に満たない力とて、その一〇〇倍ならどうなるか。


「う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ハッ!」


 狂乱するルカが、光の速さでエドに向かってくる。だが一〇〇倍の力を得たエドは、それをしっかりと迎え撃ち「終わらぬ終わり」をルカの体に刻んでいく。


 光り輝く白い体に、無数の黒い線が走る。斬り跳ばされボタリとルカの腕が落ちるが、その断面に黒い炎が宿り続けている限り癒やすことはできず、燃え尽きないそれに再誕の力は働かない。


「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な! 俺の完璧な計画が! 何でこんな行き当たりばったりみたいな方法で失敗するんだ!? あり得ない、あり得ない! こんなの絶対アリエナィィィィィ!!!」


「テメーの都合なんて、俺の知ったこっちゃねーんだよ!」


「アァァァァァァァァ!!!!!!」


 遂に首を切り落とされ、狂気の表情を浮かべたルカの頭が床に転がった。体を小さく切り分けられたルカは「終わらない」が故に死ぬことはなかったが、それでも術式を維持できなくなったことで舞台は再び闇へと戻り、途切れなかった万雷の拍手が静寂へと切り替わる。


「ハァ、何とかやりきったか…………」


 そんな暗闇で、エドはその場にごろんと仰向けで倒れ込む。その頭の下には柔らかい感触があり、エドのなかから太ももへと温もりが抜けていくと……


「う、うぅん……ふぅ。お疲れ様、エド」


 目覚めたルナリーティアが、膝枕するエドの頭を優しく撫でた。

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[一言] どどどーいうことなんですか! 明日が待ち遠しい!
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