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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第三〇章 英知の勇者と偽りの遺跡

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絶対無理なら諦めもつくが、頑張ればいけると言われると挑戦せざるを得なくなる

「さて、それじゃ改めて、調査開始といこうか。エド君達には周辺の安全確保をお願いしたいんだが、いいかね?」


「わかりました。じゃあ俺は遺跡の中の方を見てくるから、ティアはチューリッヒさん達の護衛を頼めるか?」


「いいけど、ここまで二人だけで来てるんだから、私の護衛なんて必要ないんじゃない?」


 俺の提案に、ティアが小首を傾げて問うてくる。それに答えたのは俺ではなく、チューリッヒ本人だ。


「チュッチュッチュ、確かに私達の生存能力はなかなかだと思うが、戦闘能力はそれほどでもない。守ってくれるというのなら、むしろ大歓迎だぞ?」


「あれ、そうなんですか?」


「うむ。我らは基本的に魔獣をやり過ごすことに特化している。逃げたり隠れたり、道具を使って誘導したり……どうしてもとなれば罠や不意打ちで仕留めることもあるが、本当にやむを得ない時だけだね」


「ニャー。先生は小さくてすばしっこいけど、力がないから魔獣を倒すのは難しいニャー。アッチも木の上から奇襲とかはできるけど、正面切って強いのと戦うのは無理だニャー」


「ってわけだ。俺達と違って戦いが専門じゃねーんだから、そんなもんだろ」


「なるほど、それもそうね。それじゃエド?」


 言って差し出されたティアの手を、俺はそっと握る。伝わってくる温もりは、信頼の証だ。


「じゃ、頼んだぜ」


「ふふ、お任せあれー!」


 ビシッと親指を立てていい笑顔を向けてくるティアに、俺も笑って同じように返してやる。その後は一人で遺跡の奥へと足を踏み入れ、暗い周囲をランタンの光で照らしながら伺っていくが……


「まあ、特に何もねーよなぁ」


 この遺跡は、一周目の時に二ヶ月近くかけて丹念に調査した場所だ。何もないということは、その記憶を持っている俺が一番よくわかっている。気候が合わないのかこの辺にはゴブリンはいねーし、野盗の類いもここまで町から離れている場所を隠れ家にしたりはしねーからな。


 と言っても、一周目はあくまでも一周目だ。ほんの小さなきっかけで起こる出来事が変わるというのを体験したばかりなのだから、気を抜いて適当に見回るなんてのはあり得ない。無数にある小部屋の一つ一つの中に入り、丁寧に何もないことを確認していくと……不意に俺の背後に人の気配が現れた。


「誰だ!?」


 右手を剣の柄にかけながら、素早く振り向く。するとランタンに照らされた通路の奥から姿を見せたのは……


「ルカ?」


「どうも先輩。お久しぶりです」


「…………ああ、そうだな。久しぶりだ」


 俺が「白い世界」で過ごす時間は、他の異世界で過ごす時間とは流れ方が違うらしい。であればここに先乗りしていたであろうルカが「久しぶり」という感想を抱くのも、別におかしくはないだろう。


 そんな俺の考えを肯定するように、ルカがニッコリと笑いながら頷いてみせる。ランタンの赤い光に照らし出されたルカの瞳は、いつにも増して怪しげに紅い。


「そうですね。僕にとってはとっても久しぶりですよ。ああ、懐かしい(・・・・)なぁ、この感じ……」


「懐かしいって、こんな遺跡の中がか?」


「フフッ、それも間違ってはいないですけど、加えてここって少し特別な場所なんですよ。先輩ならご存じじゃありませんか?」


「俺なら? 特別……あっ、『神の座す場所(ダシケターマ)』!?」


「そうです。ここの地下には、神様の力が眠っていたんですよ。今は入れ物だけで中身はありませんけど、それでもこう……気配? 残り香? そういうのがあって、凄く懐かしいんです」


「なるほどねぇ」


 うっとりした表情で深呼吸するルカに、俺は別の意味で感心する。へー、この遺跡って本当にそんなもんがあったのか。


「ん? ってことは、俺がここで動いてそれをチューリッヒさんに見つけさせるのが、この世界の正しい流れってことか?」


「それが正しいかどうかは別として、将来的な魔王討伐へ繋がる道としては、そうだと思います」


「おぉぅ、そうなのか。そいつは……どうしたもんかな?」


「何か悩む必要がありましたか?」


「いや、俺としては力の欠片を回収してーから、先送りじゃなくて今のうちに魔王を倒してーんだよ。でもそういう流れの場合、普通にやると魔王と接敵できねーだろ? だからどうするかと思ってなぁ」


 一周目でチューリッヒに聞いたところによると、この世界の魔王はずっと昔に討伐され、何処かに封印されているらしい。だが俺がここに来て、チューリッヒが討伐に必要な何かを見つける流れが生まれるというのなら、いずれ魔王が復活することは確定事項だろう。


 ただそれは、今は正しく封印されているということでもある。俺が単独行動できるのなら封印を奪うなり何なりしてから、マーガレットの時のように力を注ぎ込んで無理矢理復活させ即討伐……という流れでいけると思うんだが、そこにチューリッヒ達を巻き込むのは極めて難しい。


 だがそうやって悩む俺に、ルカが口元を押さえ、クックッと愉しげに笑う。


「ははは、その心配なら必要ありませんよ。実はその魔王の封印、僕が手に入れてあるんです」


「へ!? 何でお前が!?」


「それは勿論……先輩に楽しんでもらうためです」


「…………? ルカ、お前何企んでやがる?」


 前の世界と違い、今回は「何もしない」ことが一番の俺の邪魔になる。なのにわざわざ俺の手の届くところに俺が欲するものを持ってくる……その行動は、どう考えてもルカの方針に矛盾している。それを好意だと真に受けるほど、俺はおめでたい頭はしていない。


「企むなんて、酷いなぁ。僕は本当に先輩に楽しんで欲しいだけですよ? 勿論、簡単には渡せませんけど」


「……俺にどうしろってんだ?」


「この遺跡を攻略して、最下層にある『神の玉座』まで辿り着いてください。そこに魔王の封印をおいておきます」


「なるほど? つまりお前の手のひらの上で右往左往する俺の姿を見たいってわけか?」


「そういうことです。ああ、一応言っておきますけど、ズルは駄目ですよ? ちゃんと攻略してくれないと……」


「どうなるんだ?」


 何気なく問う俺に、ルカが薄い笑みを浮かべて言う。


「魔王の封印が、大変なことになっちゃうと思いますよ?」


「へぇ、そりゃ怖いな。なら真面目に攻略させてもらうさ……ちなみに、入り口くらいは教えてくれるのか? 前の時はそんなもの気づかなかったんだが……」


「フフフ、いいですよ。流石にそのくらいはサービスしちゃいます。ということで、ちょっとこっちに来てもらえますか?」


「ん? いいぜ」


 ルカに呼ばれて、俺は部屋の外へと出る。それを確認するとルカがパチリと指を鳴らし……次の瞬間、今出てきたばかりの部屋の床に、ぼんやりと輝く魔法陣が出現した。


「こいつは……転移陣、か?」


「そうです。この上に乗れば、本当の遺跡の入り口に跳ばしてくれます。一度入ったら攻略するまでは出られないんで、そこは気をつけてください。準備は万全に」


「わかった……けど、こんなところで補給も何もねーだろ。近くの町までどのくらい距離があるのか知らねーけど、行って帰ってくるまでこの魔法陣ってそのままなのか?」


「まさか。保っても精々日付が変わるくらいまで……ですかね? もし消えちゃった場合は、自分でこれを出現させる方法を調べてください。きっと凄く大変だと思いますけど、何十年かかければきっといけますよ」


 ちょっとした意地悪です、とルカがペロリと舌を出す。蠱惑的な魅力のある仕草は並の男なら……いや、女であっても取り込まれそうに思えるが、俺からすればため息しかでない。


「ハァ、つまり準備をしろって言いつつ、実質的にはすぐ入れってことじゃねーか。ちなみに、今回お前は――」


「勿論、別行動です。流石に自分の作ったダンジョンを自分で攻略するのは違うでしょうし」


「…………うむ、理解した。ならティア達のところに戻って、ここの話をしてくる」


「はい。ゴールでお待ちしてますね……先輩」


 そう言って手を振るルカに背を向け、俺はそのまま歩き出す。どうやら今回も、随分と厄介なことになりそうだ。

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― 新着の感想 ―
ティアさんかなり勘が鋭いから何とか生き延びてくれればいいけど、相手がマジモンのチートだからどうなるんだろう せっかく楽しく二人旅してるんだから邪魔するのはやめてあげてくれよ……
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