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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第三〇章 英知の勇者と偽りの遺跡

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一見ちぐはぐな関係ほど、実は上手くいっていたりする

「よっ……と。うわ、あっついな」


 次の世界で降り立ったのは、熱帯雨林のど真ん中。体を包むムワッとした熱気に、俺は思わずそう零してしまう。


「本当、凄い暑さね。何かこう……ベッタリまとわりついてくる感じ?」


 そしてそれは、ティアも同じだ。顔の前でパタパタと手を動かしながら、物珍しげに周囲を見回していく。


「早く涼しいところに行きましょ……って言いたいけど、駄目なのよね?」


「ああ。この世界での活動範囲は、大体この森の中だ」


「うへぇ」


 事前に説明してあったとは言え、改めて語る俺にティアが嫌そうな顔をする。言っても森の中ではあるので、本当に嫌だったら精霊魔法でどうにでもなるんだろうが、ちょっと不快なくらいで常時魔法を使い続けるのは、流石のティアでも厳しいんだろう。


「はっはっは、唸ったって何も変わりゃしねーよ。ここよりは幾分かマシなはずだし、さっさと移動しようぜ」


「えっと、ナントカって遺跡に行くのよね?」


「そうだぞ。ダケシターマ……ダマシターケ? そんな感じの……」


「ダシケターマだ。古代語で『神の座す場所』という意味だな」


「えっ!?」


 不意に近くから声が聞こえ、俺達はキョロキョロと周囲を見回してしまう。が、視界にはひたすらに木しかなくて……


「こっちだこっち! まったく、ニンゲンはチュー意力が足りんな!」


 声の主は、足下であった。視線を下げれば、そこには俺の膝くらいまでしか身長のない、服を着た二足歩行のネズミがいる。え、何でこのタイミングで――


「ネズミ!?」


「むっ、失敬な! 偉大なる鼠人族(そじんぞく)であるこの私を、チーズに釣られてバチンと罠に捕らわれるような無知蒙昧の輩と一緒にするとは! これだからニンゲンは……」


 事前に説明してあったのだが、不意の出会いで心構えができていなかったのだろう。驚きの声を上げてしまったティアに、鼠人族の男が不満げな顔をする。するとその背後から、大きな荷物を背負った二足歩行の猫が姿を現した。


「ニャー。鼠人族のご先祖様はネズミなんだから、別に間違ってはいないニャー」


「それは違うぞニャムケット君! 元が同じなら皆同じだというのなら、そもそも猫やネズミですら同じモノになってしまうではないか! あらゆる生命を知性の有無すら関係なく同一の存在として扱うのは、流石に乱暴が過ぎるのではないかね!?」


「ニャー。誰もそこまでは言ってないニャー。でも少なくとも、アッチのご先祖様は猫だし、先生のご先祖様はネズミで間違いないと思うニャー」


「まあ、そうだが……」


「えっと、貴方達は……?」


「おっとすまない、まだ名乗っていなかったな。私は考古学者のチューリッヒで、こいつは私の助手兼荷物持ちの、ニャムケット君だ」


「アッチはニャムケットだニャー。よろしくニャー」


 やたら大量にポケットのついた土色のジャケットに身を包むネズミ、チューリッヒが得意げに胸を反らしながら名乗り、ティアと同じくらいの身長で、白と茶色の混じったモフモフの毛並みをしている猫のニャムケットが、のんびりした声で片手を上げて微笑む。


 その愛らしさにティアがピクッと体を動かしたので、俺は慌ててその腕を掴んで引き留めた。


「ティア、駄目だぞ?」


「っ!? わ、わかってるわよ! 私は冒険者のルナリーティアよ。で……」


「俺はエドです。よろしくお願いします」


 ワッフルの時は許されたが、今回もそうとは限らない。ウズウズするティアを引き留めつつ挨拶をすると、チューリッヒが満足げに頷いてみせた。


「うむうむ、礼儀正しい者は好きだぞ。とは言え、冒険者がダシケターマ遺跡に何の用があるのだ? あそこには金になりそうなものはなかったはずだが……」


 そう言うチューリッヒの顔に、若干ながら嫌悪感が透けて見える。まあ学者や研究者からすれば、冒険者は金銭目的だけで遺跡を荒らす狼藉者に他ならないので、やむを得ないところではあるが。


「俺達の目的は、遺跡の調査です。正確にはあの遺跡の最奥にあるって噂の、『神の玉座』を見つけることですね」


「ほぅ?」


 ならばこそ、俺の言葉にチューリッヒがピクリと鼻を動かす。


「『神の玉座』か……確かに在るとされているが、あれを見つけた者はいないな。ならば重ねて問おう。それを見つけてどうしたいのかね? 一応言っておくが、おそらくは持ち運べるようなお宝ではないと思うが?」


「どう、ですか……言いづらいんですが……」


 確かめるように試すように、目を細めてヒゲをしならせながら問うてくるチューリッヒに、俺は軽く頭を掻いて苦笑しながら告げる。


「その……単純に見てみたいなぁと」


「…………見てみたい?」


「ええ、まあ。自慢ってわけじゃないですけど、俺もティアも食うには困らない程度には腕がいいんですよ。で、生活が安定してるとなると、次は浪漫というか、知的探究心を追求したい気持ちが湧いてきたというか……


 ほら、誰も見たことのない景色を見るとか、誰も見つけられなかった秘法を発見するとか、凄く格好良くて楽しそうじゃないですか」


 その言葉には、勿論打算が含まれている。一周目の知識で、俺はこの世界の勇者であるチューリッヒの目的がそれであると知っているから、話を合わせたという面は否定できない。


 だが、決して嘘で塗り固めた言葉でもない。幾つもの世界を巡り、様々な出会いと別れを繰り返してきた俺のなかには、遙かな時を経ても変わらずそこに在り続けるものに対する憧れのようなものが確かに存在しているのだ。


 そんな俺の気持ちをどう読んだのか、チューリッヒはジッと俺の顔を見つめ……程なくしてキュッとヒゲをしごいてから笑う。


「チュッチュッチュ、そうかそうか! その歳で古代の浪漫がわかるとは、なかなか見所のある若者じゃないか!」


「ニャー。エドさんはともかく、ティアさんは長耳だから、別に若くはないんじゃないかニャー?」


「私!? そんなこと…………ないわよ」


 首を傾げるニャムケットに、ティアが微妙にばつの悪い顔をして目を反らす。種族内では間違いなく若かったとしても、平均寿命が五〇年ほどの人達に一〇〇歳越えの自分が「若い」と断言するのは……まあ、うん。


 っていうか、そもそも俺達の年齢なんてもうよくわかんねーところまで来てるしな。ティアは俺のいないところで長い年月を過ごすことが何度かあったし、俺だって普通の人間では考えられない長寿になってるので、正直もう「中身は若いです」と開き直るくらいしかできん。


「まあまあ、細かいことはいいじゃないかニャムケット君! そういうことを気にしすぎると、毛並みが禿げるぞ?」


「ニャー。さっきは細かいことに拘ってたのに、今度は言ってることがまるっきり逆だニャー。流石は先生だニャー」


「チュッチュッチュ! 褒めても給料は増えないぞ? 精々特別ボーナスとしてマッシグラー組合のキャル缶が二つほど追加されるだけだ!」


「ニャー! 流石は先生、太っ腹だニャー!」


「誰が太っていると!? 没収! キャル缶は没収だ!」


「ニャー……それはあんまりだニャー……」


「…………ひと缶だけつけてやる。特別だぞ?」


「ニャー!」


 しょんぼりと尻尾を垂れ下がらせていたニャムケットだったが、チューリッヒの言葉にピンと尻尾を立てて喜ぶ。そのわかりやすい感情表現は、見ているだけでにやけてしまいそうだ。


「猫とネズミなのに、この二人は随分と仲良しなのね?」


「だな。ま、平和なのはいいことさ」


 ニャーニャー言いながらチューリッヒに抱きつくニャムケットと、それを鬱陶しそうにしながらも本気で嫌がっているようには見えないチューリッヒ。今回の勇者パーティも、随分と賑やかになりそうだ。

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