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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第二七章 誰も知らない本物勇者と、誰もが知ってる偽勇者

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その悪運は連鎖する

今回も三人称です。ご注意下さい。

「くっ!? 一体何が……っ!?」


 突如襲った激しい衝撃と轟音に跳ね飛ばされながら、それでもレイホルトは即座に意識を覚醒させ警戒態勢を取った。すると巻き上がった埃の向こうから、あり得ざる……だが見覚えのある姿が出現する。


 全長はおおよそ五メートル。馬の下半身に人の上半身、尾は蛇で亀の甲羅のようなものを背負い、顔の部分は獅子……これほどの特徴を備えた夜人形(ナイトウォーカー)など、勇者として誰よりも多くの夜人形(ナイトウォーカー)と交戦経験を持つレイホルトをして、ただの一度しか出会ったことはない。


「まさか――っ!?」


「いっつつつ……何だよ一体……?」


「うぅ、何が起きたのですか?」


「二人とも気をつけろ! 夜人形(ナイトウォーカー)だ!」


 自分と同じように瓦礫の中から這い出てきた仲間に、レイホルトが警告の声を投げる。それと同時に近くに転がっていた装備に手を伸ばし、鎧を諦め剣を腰に佩くと、次に背嚢の中を探し始める。


「うぉぉ!? 何だこのデカブツ!?」


「複合型……しかも将軍級(ジェネラルクラス)!? え、でもこいつは……」


「マズいぞエルン。これは多分、私が持っていた欠片から再生したものだ」


「えぇ!? まさか、そんなことあるはずがないのです!」


 予想通りにそれ(・・)が見つからなかったことで顔をしかめて言うレイホルトに、しかしエルンが強く否定を口にする。


 レイホルトが夜人形(ナイトウォーカー)の欠片を持っていたのは、欠片同士が引き合い、再生しようとする力を利用することで、残党の夜人形(ナイトウォーカー)の位置を知る探知機のように使っていたからだ。


 それはつまり「再生する能力を維持している欠片」を持ち歩いているということではあるが、当然その危険性を理解しているレイホルト達は、安全を十分に考慮していた……というか、正確には「絶対に再生しない」という確信があったからこそ、その欠片を持ち歩いていた。


夜人形(ナイトウォーカー)の再生には、その能力に見合った力が必要なのです! 魔王が倒されて半年以上経つ今、将軍級が再生するほどの魔王の力なんて世界の何処にも残っているはずがないのです!」


 そう、魔王が死んでその力の供給が途絶えた以上、強力な夜人形(ナイトウォーカー)ほどその存在を維持することができなくなっている。それが魔王の側近であった将軍級ともなれば、その再生に要する力は莫大。世界中から魔王の残滓をかき集めたとしても到底足りないはずであった。それこそ――


「そんなの、ここに魔王が直前まで(・・・・・・・)滞在していた(・・・・・・)とかでもなかったら、絶対にあり得ないのです!」


「何言ってんだエルン! 理屈がどうだろうが、コイツは復活してるだろうが! なら倒すのが先だろ!」


「だからバルゴはお馬鹿なのです! これが再生した原因の究明は、どんな問題よりも優先すべき――」


「いたたたた……一体何が……ひぃぃ!?」


 と、そこで瓦礫の奥から、村長のロハスが這い出てきた。その隣には妻のアンナの姿もあったが、二人は夜人形(ナイトウォーカー)の威容を目の当たりにし、思い切り悲鳴をあげて抱き合う。


「村長様に、奥方か! よかった、ご無事だったのですね」


「ゆ、勇者様!? これは一体、何が……」


「説明はあとで必ず。今はそれよりも、一刻も早く村の人達を離れた場所に避難させてください。ここは……戦場になります」


「そんな!? 貴方……」


「……わかりました。勇者様方に、ご武運を! さ、行くぞアンナ。手分けして村の人達に声をかけていくんだ」


「え、ええ……」


 かつての襲撃から学んでいるロハスは、余計なことを何一つ問うことなく、不安げな顔をした妻を連れてその場を走り去っていく。その後ろ姿に精一杯の謝罪を込めた視線を一瞬だけ送ると、レイホルトは改めて夜人形(ナイトウォーカー)に向け剣を構えた。


「oooooo……」


「……にしても、何故動かない? 何かを探してる?」


「わからないのです。可能性としては、再生するだけでこの辺に残っていた魔王の力を使い果たして、もう動けない……とかです?」


「ハッ! 敵が動かねーってんなら、今のうちに倒しちまえばいいんじゃないですか?」


「ふむ……」


 二人の発言に、レイホルトは遠くを見回すようにゆっくりと顔を動かしている夜人形(ナイトウォーカー)を睨みながら思考を巡らせる。


(このまま動かないというのなら、下手に刺激して暴れられるよりも自滅を待つ方が被害を抑えられる。が、そもそもこいつが再生した理由がわからないから、本当に魔王の力が使い果たされているのかが判断できない。なら……)


「よし、ここは攻めよう。エルンは周囲の被害を抑えるように防御結界を、バルゴは私に合わせて――っ!?」


「ooooOOOOOー!」


「チッ、休憩は終わりってか!」


 遠吠えのような声をあげて、巨大な夜人形(ナイトウォーカー)が動き出す。背負った甲羅から無数の金属の槍が生えると、それが一斉に宙に向かって打ち上げられた。


「こりゃやべえ! 二人とも俺の後ろに!」


 空中でクルリと方向を変えた銀色の槍が、凄まじい勢いでレイホルト達に降り注ぐ。それをバルゴは巨大な斧を横に構えることで防ぐが、ガキンガキンという重い音が一つ響く度、バルゴの全身が悲鳴をあげる。


「きっつい!? こりゃ保たねーぞ?」


「十分なのです! 『多面式光陣防壁(プリズミックシールド)』!」


 バルゴに守られたエルンが魔法を完成させ、敵を閉じ込めるために用意していたそれを自分達を守るために発動させる。しかし三人を包み込んだ光の壁も完全無敵というわけではなく、一つの平面に二度三度と槍が命中すると攻撃が貫通しそうになるが……


「ああ、十分だ!」


 全身に浅い傷を負い、血を流しながらもニヤリと笑うバルゴに、急激な魔力消費で軽いめまいを覚えるも、気丈に杖を構えるエルン。そんな二人の前に立つのは、二人の稼いだ時間でその剣に力を溜めた勇者レイホルト。振り下ろす一撃が闇を切り裂く光刃となり、巨大な夜人形(ナイトウォーカー)の体に深々と傷を刻む。


「ここから反撃だ。二人とも、油断せずにいくぞ!」


「おう!」


「任せて欲しいのです!」


「FUOOOOOOOOOOOO!!!」


 かつて死闘を演じ、辛くも勝利した敵との思わぬ再戦。勇者レイホルトとその仲間達の戦いはここから始まり……一方その頃。





「どうしたんですか、村長さん? こんな夜中に……?」


「おお、マグナ! よかった、起きていたか!」


 浅い眠りを激しく扉を叩く音で起こされ、若干不機嫌な様子で家の扉を開けたマグナに、村長のロハスが慌てた声でそう告げる。


「起きてたっていうか、なかなか寝付けなかっただけですけど……で、何ですか?」


「大変なんだ! 私の家に、夜人形(ナイトウォーカー)が出現したんだよ!」


「は!?」


 その言葉に、マグナの寝ぼけた頭が一瞬で覚醒する。かつて夜人形(ナイトウォーカー)に襲われた時のことを、マグナは決して忘れない。


「な、何で夜人形(ナイトウォーカー)が村長さんの家に!?」


「詳しいことは私も知らない。けど今、勇者様が夜人形(ナイトウォーカー)と戦っておられるのだ。なので私はこうして家を回って、皆に避難を呼びかけているんだよ。まあ、この辺ならば大丈夫だとは思うが……」


「そう、ですね。確かにこの辺は中央からは大分外れてますからね」


 農業を行うには当然ながら広い土地が必要なので、代々農家であるマグナの家は村の外れの方にある。それを不便だと感じることもあるが、今回に限っては幸運だと言えるだろう。


「じゃあ、私は他の家も回らないといけないから。レクスさんやルルカちゃんには、マグナから伝えておいてくれるかい?」


「わかりました。村長さんも気をつけて」


 小走りに去って行くロハスの背を見送ると、マグナは眠っていた父と妹を起こし、事情を説明する。その後は流石にもう一度寝るわけにもいかず、小さなランプの明かりの下で三人揃って静かに脅威が過ぎるのを待っていたのだが……


ドスン!


「ひゃっ!? な、何!?」


「俺が見てくるよ。父さんはルルカを」


「わかった、気をつけてな」


 妹を父に任せ、マグナがそっと家の扉を開ける。するとそこにはぼんやりと輝く巨大な金属の槍が、深々と地面に突き刺さっていた。

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