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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第二六章 王女勇者の謀

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間章:予想外の襲撃

今回までマーガレット視点です。ご注意ください。

 覚悟を胸に始まった、やり直しの世界。そこで最初に私がしたのは、とにかく情報を集めることだった。


 何故城の地下から魔王が出てくるのか? どうして一五歳の誕生日の夜なのか? 他にも知りたい事はいくらでもあるし、試したいことは山積みだ。仮に繰り返しがなくなったとしても、その場合はみんな死んで終わりなのだからと、時には無茶な方法や危険な手段にも手を出し、とにかくひたすら情報を集めまくったわけだが……


「……駄目だ、できないことが多すぎる」


 その後一〇回……普通の人間なら二度は天寿を全うするほどの時間を繰り返したところで、私は五歳児の小さな口でそう呟いた。


 ここまでの繰り返しで、わかったことが幾つかある。中でも一番大きいのは、私自身が何もしなくても、家族の……国の運命が大きく変わることがあるというものだ。


 例えば、今現在この城にはギュネヴという大臣がいる。国務を取り仕切っている大物貴族だが、彼は根っからの貴族主義者で、平民に対する差別意識が殊更に強い。


 そのため、第二妃であるストリア様……ひいてはその子供であるギルベリア兄様やミトルナ姉様へも強く影響を与える存在であり、その権勢が続くと私の立場がドンドン悪くなってしまうどころか、唆されたギルベリア兄様による王位簒奪の内乱まで発生することがある。それは国の内部を滅茶苦茶に荒し、その時の私は魔王が出現する前に、「王族を僭称する使用人の娘」として斬首されてしまった。


 あるいは、時折城に訪れるダーレス子爵。彼は女癖が悪く、よく使用人に手を出したり、独自の伝手で国庫から抜き出した金をよくない遊びに使っていたりする。これを放置すると緩やかな財政の悪化と城の風紀の乱れにより、城内全体の雰囲気が悪くなるうえ、最悪の場合は怪しげな薬を城内に出回らせ、王族までその影響を受けることすらあるほどだ。


 ただし、どちらも必ずそうなるわけではない。私が何かをしなくても他の誰かが諫めたり、あるいは悪事が発覚して更迭されることもある。つまり最初の世界のように、偶然に最良の世界を引き当てることだってあるわけではあるけれど、何もせずにそれを待つなんてあまりにも馬鹿げている。


 どうすればいいかわかっているのだから、私自身が積極的に動いて、よりよい未来を引き寄せればいい。いいのだけれど……それこそが問題だった。。


「この(とし)じゃ、何もできない……」


 如何に王女とはいえ、五歳の少女の告発なんて、誰もまともに取り合ってくれない。おまけに失言や悪事を働く場所は何パターンかあるため、見た、聞いたことにして見当違いな指摘をしてしまったら、相手に強く警戒されてしまう。それで悪事が止まるならばいいけれど、大抵の場合はより深くに潜んでしまい、手遅れになるまで表に出てくることはなくなってしまうことだろう。


 つまり、信頼できる人物と一緒に、現場を押さえなければならない。だが護衛騎士であるエルザは、当然自分を危ない場所へは近づかせてくれない。ならばどうすればいいか?


「うーん、ミトルナ姉様と仲良くできればいいんだけど……」


 自分一人で城内を自由に歩き回るのは難しいが、誰かと一緒に「遊ぶ」のであれば、その条件は大きく緩和される。だが一番年が近いミトルナとの仲はこの段階ではあまりよろしくないため、全力で懐柔してもそこまで仲良くなるには三年はかかってしまう。


 そして、それでは駄目だ。小さな火種なら一吹きで容易く消せても、燃え上がった大火は大雨ですら消せない。三年も問題を先延ばしにしては、もう私の手が及ばないところまで問題が大きくなってしまう。


「誰か適当な……私の言うことを何でも聞いてくれて、こっちの事情に一切干渉してこないような、そんな相手がいれば……」


 ベッドの上で、私はしばし考え込む。と、そこで私は、とある冒険者のことを思い出した。五歳になってしばらくすると町の外に外出する機会があり、私はそこで若い冒険者の男性を助けたことがあるのだ。


 妙に媚びへつらってくるというか、泣いて縋って「一緒に居させてくれ」と頼まれ、私は彼を城へ連れて行き、雑用として使っていたことがある。まあ半年ほど経つと急に態度が悪くなったのでそのまま追い出したわけだが……もしあの男性が、毎回同じ場所で魔獣に襲われ死にかけているのなら?


「……使えるかも知れないわね」


 子供らしからぬ笑みを浮かべ、私は今回の世界では外出することを決意する。そうして冒険者の男性……エドを利用する計画は、予想以上に上手くいった。


「さあエド! 次は向こうよ!」


「わ、ワン!」


 エドを引き連れ、私は普通なら立ち入ることのない場所を歩き回る。得体の知れない人物を側に置く条件として、エドといるには常にエルザも一緒にいなければならないが、それも私には好都合だ。


 護衛騎士であるエルザは自分の領分を超えるようなことは口にしないが、求められれば答える。そしてその発言の信頼度は、幼い私よりもずっと高い。エドを引き連れエルザを引き連れ、人気のない場所に「たまたま」遊びに行った結果失言や失態を目にする。


 後はそれをさりげなく信頼できる相手に告げればいい。それをエルザが肯定すれば、あとは周囲の大人達が勝手に対処してくれる。惜しむらくはどうしてもエドに理不尽な扱いを強いてしまうため、やはり半年と少しで態度が悪くなる……おそらく命の御礼として我慢できる範囲を超えるためだろう……エドを放逐せざるを得ないことだが、それでもエドがいない頃に比べて、城内の清掃活動(・・・・)は格段に効率をあげた。


(これならもう何度かやれば、きっと魔王の復活だって阻止できる!)


 確かな手応えを感じながら、私はもう何度目かわからない五歳の朝を迎える。そうして今回もエドを助けにいくと……そこで私は、今までにない事態に驚愕させられた。


「だ、誰!?」


 初めて見るエルフの女性が、エドの仲間として一緒にいる。ここに来ての予想外に戸惑ったものの、その後の流れは何とか修正できた。今回も問題のある人物は放逐できたし、ギュネヴの後釜にケルヴ卿がついてくれた。候補は他にも何人かいたが、今までの経験からすると最良の人選だ。彼が大臣になったなら、この後に起こるはずの襲撃に大きな助けとなる。


 そう、襲撃……王太子であるアンダルト兄様が王位を継いだその年に、「緋眼の涙」と名乗る邪教集団が引き起こす、城の襲撃事件。遙か高空から襲撃してくるドラゴンはとんでもない脅威だが、ケルヴ卿により財政が健全化されていれば城の防備も騎士達の装備も万全となり、最小限の被害でそれを打倒することができるのだ。


 しかも、今回は事前に「緋眼の涙」の存在をケルヴ卿に伝えることすらできた。ならばひょっとしたら、ドラゴンの襲撃そのものがなくなる可能性だってある。


 いける。この流れなら、今までで一番いいところまで……魔王の復活の阻止は無理でも、その秘密や出所を突き止めるくらいまでいけるかも知れない。無論まだまだ先は長く、やらなければならないことは多いが、それでも「今度こそ」という思いにその胸を熱くさせていたというのに……





「…………何で」


 空を舞う威容に、私は思わずそう呟く。約束された襲撃者が、どうして七年も前倒しして襲ってきたのか?


「何で!? 何でアイツが今ここに来るのよ!?」


 わからない。何もわからない。まだ私の知らない分岐が……ひょっとしてあのエルフがエドの仲間になってることと関係が? それともケルヴ卿に「緋眼の涙」の存在を伝えたせいで、襲撃が一気に早まった? その原因を知りたいけれど、今の私にはもう何もできない。だって……


「アンタが襲ってくるのは、まだ七年も先の話でしょうが!」


 最後の捨て台詞に、ドラゴンの目がギロリとこちらを睨んだ。その瞬間私を助けようとしてくれたエルザがその場に崩れ落ちてしまう。


 でも、それを責めることなんてできるはずもない。何度も何度も死を繰り返し、それに慣れてしまった私の方が異常なだけで、決してエルザが弱いわけじゃない。


「ひめ、さま……お、にげ…………」


(ああ、悔しいなぁ。せっかくここまできたのに……)


 だから私に浮かんだのは、そんな気持ちだった。必死に手を伸ばし呼びかけてくれるエルザには労いの視線を、今回の私に死を運んできたドラゴンに抵抗の目を向ける。


 ドラゴンの口がカパリと開き、そこから巨大な火の玉が解き放たれる。城の壁すら壊すそれは、きっと私を一瞬のうちに焼き尽くしてしまうだろう。でも……


「私の心は燃え尽きたりしない! いつか必ず、その先に――」


「おっと、そいつは聞き捨てならねーな」


「…………え?」


 終わりを約束していた火球が、目の前で二つに割れる。飄々とした声でそう告げるのは、いつもヘラヘラと笑うばかりで、私のような小娘にいいように扱われていた冒険者。


「いつかと言わず、今行こうぜ。みんな揃ってな」


「……エド?」


 ニヤリと笑ったその顔は変わらぬしょぼくれ顔だったけれど……まるで夜明けの太陽のように輝いて見えた。

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― 新着の感想 ―
何度も失敗してループしていた中で颯爽と現れ解決してくれたらもう惚れてまう
[良い点] ループしていたからこそ、有り得ないものを持ってたんですね……。
[一言] かっけぇやん
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