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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第二五章 石の向こうに夢を視る

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見た目通りの能力持ちに、文句を言うのは流石に違う

「では、この子の名前はシェルカーに決まりです!」


「おー!」


「キュキュー!」


「……………………」


 仲良くなるならまず名前から、ということで、ティアの考えた「スノウ」と、アネモの考えた「シェルカー」の決選投票の結果、見事アネモが白トカゲの名付け親となった。


 まあ、うん。そもそもアネモが連れ歩くのだから、アネモが名付けることには何の不満もない。ましてや俺の考えた「トカゲリオン」が考慮すらされなかったことなど、問題にもならない……格好いいと思うんだがなぁ、トカゲリオン。


「じゃ、名前も決まったことだし、早速帰り道でシェルカーちゃんの力を試してみましょうか」


「そうだな」


 割と話し込んでしまったが、ここはまだまだ町から遠い場所だ。普通に敵に襲われる可能性があるので、俺達は改めて歩き出す。シェルカーはどうもアネモの肩が気に入ったらしくご機嫌に揺られているが、アネモの方はまだまだ緊張しているようだ。


「えーっと……ねえ、シェルカー? お腹空いてます? 空いてないですよね? もし空いてたら、ちょっとしたおやつ感覚で私の魔力を食べたりとかは……」


「キュー?」


「しないから平気よ。あ、でも、本当に凄くお腹が空いていたら、アネモ以外の人の魔力は食べちゃうかも知れないから、気をつけてね」


「ひえっ!? え、それ普通に危ないですよね!?」


「それはそうだけど、意図的に閉じ込めでもしなかったらそんな事にはならないわよ。どのみち町の中には入れられないでしょうから、私達が探索に出られない日だって自分で勝手に食事するでしょうし」


「……それ、その時に私達以外の探索者(シーカー)と出会ったら、魔力を食べちゃうんじゃ?」


「あー、それはあるかも。なら『人間の魔力は食べちゃ駄目』って、しっかり言い含めておかないとね。飢えるほど他の餌がないならともかく、エンカウンターの方が圧倒的に多いんだから、そのくらいの融通は利かせてくれると思うわ」


「それでも心配……ってか目を離すのが怖いってことなら、懐に中にでもしまって町中に連れ込むのも手ではあるぞ? あるいは普通に『懐きました』って説明してもいいし。


 つーか、あれだ。ティアがさっきやったあれ、ティアにしか使えない魔法なのか?」


 俺の素朴な疑問に、ティアが軽く首を傾げて答えてくれる。


「え? そんなことないわよ。決められた手順を覚えて、あとは魔法が使えれば……ああ、でもそれがこの世界の人には厳しいのよね」


「消費する魔力の量にもよると思いますけど、もしシェルカーが対エンカウンターの切り札になるほどの魔力を吸収できるなら、やりたいと思う人はいるかも知れません」


「んー、なら隠すより情報公開して、検証するのもありかもな。その辺はアネモの判断に任せるよ」


「わかりました。ちょっと考えてみますね」


 そう言って考え込むことでいい感じに恐怖が薄れているであろうアネモを中衛に、俺が先頭、ティアが殿で俺達は帰路を進んでいく。すると当然エンカウンターに遭遇し、そして当然俺の手によってさっくりと倒されるわけだが……


「さあ、出番だぞ」


「頑張ってね」


「うぅぅ……じゃあシェルカー。あのエンカウンターの残骸から、魔力を食べちゃってください!」


「キューッ!」


 アネモの言葉に、シェルカーがスルスルとアネモの体を這い下りると、そのまま魔力の残った残骸の方へと近づいていく。一瞬立ち止まって警戒するも、もう動かないと判断するや残骸の上にペタリと乗って……しかし特に何も起こらない。


「……あれ? どうなってんだ?」


「うーん……ねえアネモ、何か変わった気分っていうか、そういうのはない?」


「へ? えーっと……そうですね。ほんのちょっとこう、お腹のところが温かくなったような気が……?」


「ならシェルカーはちゃんと魔力を食べてくれたってことね。どうする? 一応確認してみる?」


「はい。じゃあ念のため」


 言って、アネモが鞄から取りだした「抜き水」を、シェルカーが食べ終えたであろう残骸にかける。すると「抜き水」は何の反応も示さず、ただ石塊を濡らすだけで終わった。


「反応なし……本当に魔力が抜けてるみたいですね」


「おぉぅ、そうなのか。でも、『抜き水』をかけたときの反応と違うのは何でだ?」


「魔力を抜くのと食べるのの違いじゃない? そもそも野生の動物がわかりやすい(・・・・・・)食事なんてするわけないんだし」


「……そりゃそうだな」


 呆れたようなティアの言葉に、俺は納得するしかない。人間が使う道具ならわかりやすさが重要だが、野生の獣が「自分は今、食事中で無防備ですよ-」と全力で主張するようなことをするはずがないのだから、見てわからないのはむしろ納得だ。


「なら、俺達的にはアネモの感覚を頼ればいいわけか。あるいはシェルカーに『お腹いっぱいで食べきれなかったら教えてくれ』とでも指示しておくか?」


「そうね。ということだから、アネモ、ちゃんとシェルカーにお願いしておいてね」


「あ、はい……って、それでいいんですか!?」


「いいだろ。別に疑う必要もねーし」


 見ず知らずの第三者であれば、誰が見てもわかる証拠がなければ証明たり得ないだろう。が、俺達だけならそれでいい。というかいちいち「抜き水」を使って確認するんじゃ、今までとそんなに変わらなくなっちまうしな。


「よっし、なら次だ次! シェルカーに今日は食い放題だって言っとけよ?」


「はい! シェルカー、今日はたっくさん魔力をご馳走するからね?」


「キュッキュキューッ!」


「うひゃっ!? ああ、ごめんね」


 シェルカーに飛びつかれ、やはりアネモが声をあげる。だがすぐに謝ると、その小さな頭を指先で撫でる。


「キュー……」


「ふふっ……嘘みたい。まさか死神トカゲとこんなに仲良くなれるなんて……本当に、エドさん達と知り合ってからは未知の連続です」


「何だ、驚きすぎて疲れたか?」


「まさか! ドキドキしっぱなしで、毎日楽しいです!」


 ニヤリと笑って言う俺に、アネモが目を輝かせて元気に答える。この心から探索を楽しんでいる感じは……正直、ちょっとだけ眩しい。


 その後、俺達は町に帰り着くまでに三度ほど戦闘を行い、シェルカーは二度目に倒したエンカウンターの魔力を途中まで食べたところで満腹になったようだった。とは言えそれだけで全てが判明したなどと考える拙速な考えの持ち主は俺達にはおらず、以後三日ほどかけて調べた結果、シェルカーが一日に食べられる魔力量は、「抜き水」に換算しておおよそ二〇本分くらいだということが判明した。


 正直、思ったよりも少ない。実はあの額の宝石に無尽蔵に魔力を貯め込めるんじゃないかと期待したんだが、普通に体相応であるらしい。


「何かすみません。せっかく期待していただいたのに……」


「キュー……」


「いやいや、アネモもシェルカーも悪くねーって。そうだよな、シェルカーがアネモみたいに大食いだったら、生きていくのは大変だもんなぁ」


「私は別に大食いじゃありませんよ!? 鉱人族は大体みんなこのくらい食べるんです! というか、むしろ私は小食なくらいですからね!」


「そうよエド! 女の子にそんなこと言っちゃ駄目でしょ!」


「うぐっ!? だから悪かったって!」


 二人の女性に詰め寄られ、俺は思わず後ずさる。あとアネモの肩からジャンプしたシェルカーが俺の顔面に張り付いて、抗議するように尻尾をペチペチ打ち付けてくる。くそっ、たった三日なのにもう仲良くなりやがって!


「キューッ! キューッ!」


「わかった! わかったから! そんなに怒るなよ!」


「どうしたのシェルカー? え? それは……いや、でも…………」


「……? 何だ? 俺への愚痴以外に何か言ってるのか?」


「それがその…………」


 俺の顔から飛び退き、アネモの肩に戻ったシェルカーの鳴き声に、アネモが微妙に渋いというか、困ったような表情になる。


「シェルカーが、『そんなに食べ物が余ってるなら、仲間を呼ぼうか?』と……」


「……仲間?」


 こいつはどうやら、もう一騒動ありそうだ。

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