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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第二五章 石の向こうに夢を視る

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スポンサーからの無茶ぶりも、悪いことばかりじゃない

「お見事! いや、本当に大したもんだ」


「凄い! 格好よかったわよアネモ!」


「えへへ……」


 パチパチと拍手で迎える俺達に、アネモがはにかんだ笑みを浮かべる。だがすぐに真面目な顔になると、改めてその口を開いた。


「コホン。では、お二人には必要ないかも知れませんけど、一応先程の戦いの解説をしておきますね。


 エンカウンターとの戦いで最も重要なのは、武器の使用を最低限に抑えることです。例えばさっきの戦いであれば、ボール……あの小型の奴ですね。アイツらはともかく、トールマン……おっきい方です。あっちはもう一本くらい手や足を奪っておいた方が格段に倒しやすくなりますが、私はそれをしませんでした」


「つまり、安全性を高めるより武器の温存を選んだと?」


 俺の問いに、アネモが大きく頷く。


「そうです。勿論十分に制圧できるという判断があったからですが、一回斬るのと二回斬るのでは戦える回数が倍変わりますし、これが九回を一〇回にするのでも同じです。温存した一回があれば倒せる敵、とれる戦術、それらが大きく変わりますので、実力に合わせて武器の使用回数を温存するのは鉄則です」


「じゃあ、荷物を背負ったまま戦ったのは? 別にここに置いても平気だったでしょ?」


「それは、この荷物が私の命そのものだからですね。ダンジョンには稀に小さな水場が存在しているので、飲用水の優先度はほどほどです。が、見ての通り敵も通路も石だらけですから、食料の確保はとても困難です。町以外で補給できるとは基本考えないでください。


 なので、戦っている間に別のエンカウンターに荷物を奪われたり駄目にされたりすると、そこが食事抜きで町に帰れる距離でなかった場合、そのまま死を意味します。帰れる距離であってもお腹が空けばあらゆる能力が低下しますから、やはり生き残れる可能性が著しく低下します。


 つまり、荷物を捨てなければ確実に死ぬという状況でもなければ荷物は手放すべきではないし、そもそも荷物を背負っていて勝てないような相手とは戦わないことが大切なのです。ちなみに私はソロの探索者(シーカー)なので、このリュックは寝る時でも下ろしません」


「ほえー。あれ? でも、そんな大事な荷物なのに、さっきの戦闘では敵の攻撃を受けてなかった?」


 続くティアの問いに、アネモがニヤリと笑みを浮かべる。


「フフフ、そうです。さっきも言いましたが、荷物は命……体の一部と言っても過言ではありません。ならばそれは庇うべき弱点ではなく、活用すべき武器であり防具です。特に対衝撃性は重要で、それをどう生かすかが荷物を詰め込む技術の神髄ですね。これに関してはお二人よりずっと凄いと自負しております!」


「だろうなぁ」


 得意げな顔をするアネモに、俺もまた深く同意する。俺だって長いこと勇者パーティの荷物持ちをしていただけに、荷物の詰め方には一家言あると思っていた。が、アネモのそれはレベルが違う。空間拡張でもされてるんじゃないかって勢いで大量の物資が吸い込まれていくし、背負ったときの重量バランスや、今言った対衝撃性とやらも考えに考えられているんだろう。


 うん、これはマジで真似できない。俺自身もまた剣や鍛冶の技術を磨いてきただけに、こういうところにこそ研鑽が現れるというのはよくわかってるからな。


 とまあ、そんな感じで戦闘は終わり、その後は戦闘もなく俺達は無事に町まで帰還することができた。町中が薄暗くなるなか、光に満ちた酒場にて俺達は初めての探索の成功を祝って乾杯する。


「プハーッ! こいつは癖になる喉越しだな」


「むぅ、私はやっぱり、ちょっと苦手だわ」


「あはは、好みが分かれるお酒ですからね」


 俺が飲んでいるのは、泡立つというか弾けるというか、そういう感じの不思議な酒だ。酒精が強いわけではないのだが、喉にガツンとくる感じがなかなかに爽快で気に入っている。


 ただ、ティアには刺激が強すぎるらしい。今もチビチビと口にしては微妙な表情をしているが、残念ながらこの町には酒はこれしかないらしい。


 そして、酒以外には水しかない。流石に水で乾杯は嫌だということで、やむなくティアもシュワシュワした酒を飲んでいるわけだ。


「にしても、地下なのに明るくて、でも夜になると暗くなるっていうのはやっぱり不思議ね」


「本来のダンジョンは、ずっと明るいですからね。町の中央にある魔導具でダンジョンの魔力を集めているから、一時的に暗くなるんだそうです」


「で、その魔力で浄水設備だの何だのを動かしてるわけか。上手くできてるよなぁ、本当に」


 人が人らしく生きるなら、朝起きて昼仕事をし、夜に寝るのは基本だ。だがダンジョンは常に明るく、太陽や月のように時間の経過をわかりやすく示してくれるものもない。


 だからこそ、必要な魔力を補充しつつ擬似的に夜を生み出すという魔導具の有用性は計り知れない。これを考えて作りだした奴は、正しく本物の天才だ。流石に夕焼けなんかは再現されてないが、そこに拘るのは浪漫の域だしな。


 と、そんな雑談を交わしつつ、俺達は食事を楽しみ酒を飲む。正直楽しめるほど多彩な食料があるわけじゃないのはこの際置いておくとして……食事を始めて一時間。ほどよく頬が赤味を増してきたアネモが、徐に俺に話しかけてきた。


「そーだエドさん! 実は私、考えていたことがあるんですが、どうでしょう?」


「どうって、まずは何を考えてたのか教えてくれなきゃ、何も言いようがねーんだが」


「あー、それもそうですね! 実はですね……私って、ほら、探索者じゃないですか!」


「まあ、そうだな。実はでも何でもねーけど」


「それでですね……探索者って、実は遺跡とかを探索したりするんですよ! ほら、探索者ですから!」


「そうだな。うん、そうだろうな」


「ねえ、アネモ? 割と酔っ払ってる感じだけど、大丈夫?」


「だいじょーぶですよぉ、ティアしゃん!」


「それ絶対大丈夫じゃない人のやつでしょ!?」


「もー、ティアしゃんはしんぱいしょーですねぇ……で、エドさん。ここからは真面目な話なんですが」


「あれ? やっぱり酔ってない!?」


 パッと表情が切り替わったアネモに、ティアがもの凄い困惑顔になる。うーん、これはからかわれてるのか、それとも素なのか……いや、それならそれでやっぱり酔っ払ってるんじゃねーか? まあいいけど。


「ここから少し離れたところに、未探索の遺跡があるんです。そこは大量のエンカウンターに占拠されていて、私一人ではどうやっても探索することができませんでした。


 ですが、今日のお二人の戦いぶりをみて、エドさんとティアさんのお二人に協力してもらえれば、その遺跡が探索できるんじゃないかと思ったんです。探索者になりたての方にするようなお願いではないんですが……もしよければ、私に協力してもらえませんか?」


「ふむん? 話はわかったけど、その場合俺達がアネモにした依頼はどうなるんだ?」


「依頼……あっ!?」


 俺の問いに首を傾げたアネモが、すぐにそのことに気づいて声をあげる。


「そ、そうでした! うっかりしてましたが、私はお二人から指導の依頼を受けていたんでした……ごめんなさい。今の話は忘れてください」


 そう言って、アネモがしょんぼりと肩を落とす。そりゃ普通に考えれば、金をもらって指導している相手を、自分の仕事に巻き込むなんてのが許されるはずがない。


 が、それはあくまで「普通なら」だ。依頼主が俺達なのだから、何が正しいかを決めるのは当然俺達の意思一つ。


「なあアネモ。今日で戦闘力の確認は終わったから、次は遺跡調査のやり方を教えてくれるんだったよな?」


「え? ええ、そうです。価値あるものはありませんが、比較的近くで手頃な遺跡があるので、そちらで実地検分を交えつつお教えしようかと思ってますが」


「なら、その行き先をちょいと変えてもらうってことはできねーかな? なあティア?」


「……ああ! ええ、そうね。そんな何もなさそうな場所より、もっと刺激的で人の手の入ってない場所の方が私達向きだと思うの」


「え? エドさん? ティアさん?」


「だよなぁ! でも残念ながら、俺達は記憶がねーから、そういう場所に心当たりとかなくてさ。あー、何処かに未探索の遺跡とかねーかなー?」


「エンカウンターが沢山いるような場所なら、確実に何かありそうよね。私の魔法とエドの剣があればいくらでも倒せるし。ねえアネモ、そういう場所に心当たりはない?」


「お二人とも…………」


 笑う俺とティアの顔に、アネモが驚きで目を丸くする。だがすぐにその表情が崩れ……パチパチと音を立てるジョッキの中身を、アネモが一気に飲み干す。


「プハァーッ! わかりました! なら私が、責任をもってお二人をちょうどいい遺跡にご案内します! あと、この場は私の奢りです! 何せ今の私は、ちょっとした小金持ちですからね!」


「おお、太っ腹だな!」


「フフッ、ご馳走になるわね」


 互いに余計なことなど言わない。ガチンと薄い金属でできたジョッキを打ち付け合い、ただ笑顔を交わすのみ。


 こうして俺達の次の目標は、アネモお勧めの未探索遺跡の調査に決定した。

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