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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第二〇章 水の勇者と深淵の王

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間章:神との語らい その一

私事ではありますが、本日は拙作「威圧感◎」のコミカライズ版1巻の発売日となっております! ページ下部の方に表紙も載せておりますので、是非とも手に取っていただけると嬉しいです。

「おーい、まだかー?」


 フワフワと暗闇の中に漂いながら、俺は大声で「誰か」を呼ぶ。実時間がどれだけ経っているのかはわからねーが、こんな何も無いところで何もせずに待つというのはなかなか以上に苦痛だ。


 にも拘わらず大人しく待っているのは、ここに俺を呼んだのがおそらくヌオーと呼ばれる神だろうからだ。俺の力の欠片と意思を交わし、願いを叶えてくれた存在。敬意には敬意で答えるのは当然だが……それにしたって限界はある。


「あー…………どうすっかな」


 俺が終焉の魔王としての力を振るえば、多分ここから出ることはできる。が、その場合もう一度ここに来られるかはわからねーし、何よりそれはヌオーへの明確な敵対行為と取られかねない。ならばこそじっと待ち、次いで呼びかけているわけだが……その次の手段が世界を終わらせて脱出するしかないってのは、我が事ながら頭を抱えてしまう。


 もっとこう、穏便というか、中間的な対処法が欲しい。家の隅々まで届く大声を出すとか、伝言を残して帰るとか、そういう感じのが。呼ばれて来たけど相手が出ないからって家をまるごとぶっ壊して帰るとか、何処の傲慢貴族だよって感じだし……でもなぁ……


「――おお、ここにいたのか」


 と、俺が切実だがアホみたいな悩みに頭をひねらせていると、漸くにして誰かの声がその場に届いた。姿は見えず声は周囲の空間全てを震わせるようで場所の特定はできねーが、会話が成り立つなら十分だ。


「いきなり呼びつけたのはそっちだろ? まったく、待ちくたびれちまったぜ」


「ふぁっふぁっ、すまぬ。お主があまりに小さかったので、見つけるのに手間取ってしまったのだ」


「何だよそれ……まあいいけどさ」


 神と呼ばれるような存在からすれば、確かに俺なんてちっぽけなもんだろう。思わず肩をすくめると、再び空間を震わす声が響き渡る。


「にしても、そうか、お主が本体か……まずは儂の世界を救ってくれたことに、礼を言おう。ありがとう、魔王エンドロールよ」


「いいさ、俺が好きでやったことだしな。あといちいち魔王とか面倒だから、俺の事はエドでいいぜ。あんたは……ヌオー様でいいのか?」


「儂のこともヌオーで構わぬよ。様をつけられるほど偉い存在ではない」


「そうなのか? でもあの世界を創った神様なんだろ?」


 首を傾げる俺に、まるでため息でもついたように前方から振動が押し寄せてくる。


「違うな、儂は世界など創っていない。ただ大きくなった儂の体に世界が産まれただけのこと。何も無いところに世界を創るなど、アレにしかできぬ所業よ」


「あれ?」


「そうだ。あの白き破壊者の大本……そしてお主の魂を縛り上げる存在よ。アレに比べれば、儂など取るに足らぬ存在に過ぎない」


「へぇ……?」


 どうやら神にも序列というか、力関係があるらしい。そして俺がぶん殴りたい相手は、随分と上の方にいるようだ。


「ふむ、よい機会であるし、聞いておこう。なあエドよ、お主はアレをどうしたいのだ?」


「ん? どう、か……とりあえず会ったらぶん殴ろうとは思ってるけど」


「…………それだけか?」


「実際に会ったらどう思うかはわかんねーけど、とりあえず今のところはな」


「…………本気か?」


「えぇ? そりゃ今の俺は元魔王の人間モドキなんだろうけど、神を害するのが不敬だなんて信仰心は持ち合わせちゃいねーぜ? そりゃ殴るくらいするさ」


 戸惑うようなヌオーの声に、俺は眉をひそめて言う。すると何かを確かめるように、ヌオーの声の響きが強くなる。


「逆だ。お主はあれだけの目に遭わされて、それでも殴るだけで済まそうというのか?」


「それは…………」


「お主の力の欠片だという者を、儂はよく知っている。そしてお主が儂の世界で活動している間のことを、儂はずっと見ていた。ならばこそ儂はお主が自由奔放ではあっても、傍若無人な破壊者ではないと信じることができる。お主がそうあり続ける限り、儂にとってお主は友だ。


 だが、アレは違う。アレにとってお主は、自分を唯一害することのできる存在だ。故にお主がどのような性質を持っているかに拘わらず、ただひたすらにお主を排除することを考えた。


 その結果が今のお主だ。その力はバラバラに砕かれて異なる世界に封じられ、その魂すらも縛り付けられ永劫の時の牢獄に捉えられた。偽りの記憶と目的を与えられ、幾万、幾億、幾兆回と救われることのない人生を送らされ、嘆きと絶望を重ねて辿り着いた結末すら『無かったこと』にされて最初からやり直す。


 それだけのことをされてなお、お主はアレを『ぶん殴る』程度で許そうというのか?」


「…………そう言われると、確かに相当ヒデー扱いされてるよなぁ、俺」


 改めて羅列されてみると、ヌオーの語る内容は確かに酷いもんだ。だが俺としては「苦しんだ」という記憶すら毎回丁寧に消されるので、正直あまり実感がない。魔王の力と記憶の幾ばくかを取り戻した今であっても、俺がはっきりと覚えているのはあくまで一周目の……それこそ「追放スキル」が身につくことで、それまでとは比べものにならないほど楽のできた日々だけなのだ。


 勿論、それでも辛いこと、苦しい事は幾らでもあった。二周目に入って多少挽回できたとはいえ、仲間を見捨て、仲間に見捨てられたことは今でも一つとして忘れることはできない。それに神によって滅茶苦茶にされた世界やそこに生きた人々のことを思い出せば、はらわたが煮えくり返るほどの怒りを覚えることだってある。だが……


「でもさ、俺はティアに出会ったんだ。いや、ティアだけじゃない。色んな奴と出会って、辛く苦しいだけじゃなく、嬉しいことも楽しいことも沢山あって……そういう体験ができたのは、ある意味この状況に落とされたからだろ?


 だからまあ……何て言えばいいんだろうな。あれだ、今がスゲー楽しくて幸せだから、昔のことは割とどうでもよくなってる感じ? 正直世界に……つーか俺達に余計なちょっかいをかけてこなかったら、最低でもティアが生きて存在してる間は神なんざ何とも思わなかったと思うぜ」


 それは俺の、偽らざる本心。だってそうだろ? 今の幸せを放りだして復讐に走るとか、勿体ないにも程がある。そんなどうでもいいことに時間を使うくらいなら、俺はティアと一秒でも長く楽しい冒険を続けたい。それが、それだけが、俺が望む唯一のことだ。


 それに、酷い目に遭った人々の怒りは、その人達のものだ。俺なんかが勝手に代弁して拳を振り上げていいものじゃない。そういう意味でも、俺の神に対する怒りは「ぶん殴る」くらいなのだ。


 そんな俺の本心を曝け出すと、またも周囲の空間が震える。それは今までで一番大きな震えで……泣いているのか笑っているのか、とにかく強い感情を感じさせるそれが、闇に浮かぶ俺の全身を締め付けるように強く響いてくる。


「ぐおっ!? おい、ちょっと抑えろよ! 苦しいって!」


「おっと、すまぬ。思わず感情が高ぶってしまったのだ。そうか、それがお主か。なるほど確かに、今を楽しむというのは正しいのだろう。儂やお主のような存在からすれば、それは刹那にすら満たぬわずかな時でしかないのだからな」


「……………………」


「だが、時を楽しみに費やすというのなら、アレを殴るという目標は果てしなく遠いぞ? 何せ今のお主では、アレに対峙することすらできんからな」


「そうなのか?」


 ヌオーの言葉に、しかし俺は首を傾げる。ぶん殴る予定の神のイメージが全く具体的ではないため、今ひとつ己の立ち位置というか、彼我の差というのが想像できないのだ。


「うむ。そうだな、アレをお主と同じ大きさと定義した場合、今のお主は、精々羽虫だな」


「羽虫って……そこまでか?」


「むしろアレに認識される時点で、お主の存在は相当に大きいのだぞ? 儂とてアレからすれば、足下に跳ねる小魚に過ぎぬからな」


「へー。って、小魚? ヌオーは魚なのか?」


「然り。何だ、儂の姿が気になるか?」


「そりゃなるさ。せっかくこうして話してるんだし、なら顔を見ながらの方がいいだろ?」


「ふむ? あの世界にいたときから、儂はずっとお主と対峙しているのだが…………よかろう、そういうことなら…………」


 ヌオーの言葉が途切れ、空間の震えが俺の前方に収束していく。するとそこにグニョグニョと肉的な何かが蠢き膨らんでいき……


ポンッ!


「これでどうだ?」


「え、あんたがヌオーなのか?」


「そうだ。何かおかしいか?」


「いや、おかしくはねーけど……ちょっと意外というか……」


 目の前に現れたヌオーは四〇センチほどの体長で、その辺の川で普通に泳いでいそうな、何の変哲も無い魚の姿をしていた。

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― 新着の感想 ―
サンショウウオみたいなイメージだった
「逆だ。お主はあれだけの目に遭わされて、それでも殴るだけで済まそうというのか?」 よくぞ言った!!!! ヌオー様バンザイ!!!! てっきり大きすぎて姿が見えない、クジラとかのイメージだったけど、意…
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