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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一七章 翼の剣と魔王狩り

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世界は巡り運命は周り、辿り着くのは同じ場所

「オラオラオラオラ! 削れっちまえ!」


「FOOOOOOOO!」


 バシュンバシュンと四つの円盤が炸裂し、霧の魔王の周囲に四つの氷塊が出現する。色々試してみたが、やはり凍らせるのが一番効率がいいようだ。あと毒は駄目だ。雑傭兵たるもの正々堂々の精神を忘れてはいけないのだ。


「ハッハー! どうだ! クロヌリ魔王の時(あのとき)とは違うんだぜ!」


 やっていることは近いが、しょぼい火炎壺やら水袋やらと軍用兵器じゃ物が違う。削りに削れた霧の魔王はもはや俺と同じくらいの大きさしか残っていない。まあ顔だけで俺の全身と同じっていうんだからでかいと言えばでかいが。


「……どうやら大丈夫みてーだな」


 そしてそんな魔王の様子に、俺は密かにホッと胸を撫で下ろす。一番の懸念事項は、周囲の霧を吸収することで魔王の体が復活するかどうかということだった。もしそうであったなら世界中に満ちる霧の全てが魔王ということになり、相当に分の悪い勝負をせざるを得なかっただろう。


 だが幸いにも、魔王は最初の瞬間以外、周囲の霧を吸収するということはなかった。おそらく自分の体としての霧と、世界を埋め尽くしている霧は別物なんだろう。ならば後は残った本体を最後まで削りきるのみ!


「FOOOOOOOO!」


「曲がれ! で、敵に突っ込め!」


『オーダー受領』


 船の舵輪を蹴り飛ばし、小さくなった霧の魔王の吐息(ブレス)をかわしてから、俺はまっすぐに魔王に向かって突っ込んでいく。


「FOOOOOOOO!」


「食らわねーよ!」


 再度吹き付けられる吐息に、正面から円盤を投擲。赤い突起のついたそれは俺と魔王の中間で炸裂し、魔王の吐息が激しい炎で相殺される。そしてそんな炎の中を、俺はそのまま突っ込んでいく。


「FOOOOOOOO!」


「ふーアチぃ! だがこの程度!」


 氷塊で相殺すれば、落下する氷を避けるため進路変更を余儀なくされていた。だが火傷を負うのを厭わず炎を抜けたことで、俺と魔王の相対距離は残り二〇メートル。次もまた赤い突起の円盤を投げつけると、霧の魔王の下半身が蒸発して消える。


「FOOOOOOOO!」


「甘い!」


 わずかに残った霧は、もう普通の人間の頭と同じくらいの大きさしかない。悪あがきのように放たれた白い閃光をくいっと首を動かしてかわすと、お返しとばかりに青い突起の円盤を魔王目がけて投げつける。


「FOO――」


「……っと」


 ビキンと氷結し、最後の霧が氷となって落ちてくる。その直下を船で走り抜け、俺の腕のなかに魔王入りの氷が収まった。


「はは、霧を晴らせる『灯火の剣』が使える勇者がいりゃ、もっと楽勝で勝てたんだろうなぁ……まあいいさ。大分消耗させられたが……これで終わりだ」


 そうして最後に手に力を込めれば、バキッと音を立てて氷が砕け散った。その瞬間魔王の力が流れ込んできて、周囲に立ちこめる霧がゆっくりと消えていく。


「あー、こっちもやっぱりすぐ消えるのか? こりゃ大開拓時代の幕開けかな?」


 霧が深すぎて誰も入ることのできなかった海。その霧が晴れるとなれば、世界中で大騒ぎになるのは想像に難くない。自分の船持ちで権力に縛られていない海賊であるレベッカやピエールなら、我先にと未知の世界とお宝を目指して船を漕ぎ出すことだろう。


「ま、そっちは頑張ってくれって話だな。んじゃ俺は俺のするべきことをしますかね」


 俺は「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」で一番近い陸地を探し、そっちに向かって船を走らせる。既に周囲の霧は大分晴れてきており、視界は良好、天気は快晴。快調に海を飛ばせば、一時間ほどで小さな島に辿り着いた。


 ずっと霧に沈んでいたであろうその島には地面に苔のようなものがびっしりと生えている以外には植物はなく、フナムシみたいな小さな生き物を除けば動物や魔獣なんかはいないっぽい。とはいえ俺が欲しかったのは地面のある場所ってだけなので、これで十分だ。


「エンジン停止。上陸する」


『ご利用ありがとうございました。お客様に定期メンテナンスのご提案を――』


 また何か言おうとした船をサクッと「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」にしまい込み、俺は島に降り立つと少しだけ海から離れ、改めて足場の感触を確かめる。微妙にフカッとした地面をしっかりと踏み固めると、取り出したるは銀色に輝く希望の剣。


「……よし、いけるな」


 銀翼の剣を構え、自分の中に満ちる力を確認して俺は独りごちる。九が一〇になっただけではあるが、一桁と二桁には結構な違いがあるらしい。今の俺なら……やれる!


「すぅぅぅぅ…………ふぅぅぅぅ…………」


 まずは深く息を吸ってから、細く静かに吐く。目を閉じ意識を集中させ、魔王の力を全身に行き渡らせていく。


 本来、一割も力を取り戻したならば世界の壁くらい自力でどうにでもできる。が、今の俺の体は神が作った脆弱な器でしかない。たった一割とはいえ魔王の力を全力で発揮してしまったら、あっさりと器は砕け散ることだろう。


 無論、それで俺が死ぬわけじゃない。その場合は「魔王エンドロール」としての俺が復活し、あとは適当に世界を渡りながら残りの力を回収していって、最後は完全復活した終焉の魔王が閉じた世界をぶち破って終わりだ。


 だが、俺はそれを望まない。俺はまだまだティアと一緒に旅をしたいし、そのためにはこの脆弱な「人の器」が必要不可欠。ならばこそ俺は慎重に自らの力を引き出さなければならない。


 必要な分を必要な場所に必要なだけ。ゆっくりと剣を振り上げ……目を開くのと同時にそれを振り下ろす。


「羽ばたけ、銀翼の剣!」


 今までとは違い、ギリッと硬い手応え。振り下ろしたはずの剣が何も無い空間に食い込み、それ以上進まない。


 それこそが世界の抵抗。同じ世界の過去に行くなら余裕で、同じ世界軸の横側に移動するなら十分だったが……螺旋世界の一つ下(・・・)に行くというのは、文字通りこれまでとは次元の違う移動なのだ。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 銀翼の剣に残った最後の羽が、ジリジリと先端から燃え尽きるように消えていく。それに焦りを覚えつつも、剣先は少しずつ空間を切り裂いていき……


ビシッ


 嫌な音を立てて、銀翼の剣にヒビが入る。これが物理的な傷ならば「見様見真似の熟練工(マスタースミス)」での修復も可能だろうが、俺が振るっているこれは「世界を越える」という概念が剣の形を成したものだ。剣に見えても剣じゃないのだから、修復なんてできるはずもない。


「あと……少し……っ!」


 力と技、願いと想いを込めて、銀翼の剣が世界を切り開いていく。だが今までの半分ほどの切れ目が入ったところで、遂に羽が燃え尽き、銀翼の剣がへし折れる。


パキィィィィィィン


「チッ、だが――」


 不完全に開いた溝に、俺は頭から飛び込んでいった。隙間が閉じる直前でなんとか体を通し終えると、次に俺を襲ったのは強烈な落下感。


「世界の狭間か……っ!」


 横に並ぶ世界の壁を破る概念でしかなかった「銀翼の剣」では、縦に重なる世界の底を破るには力不足だったのだろう。このままいけば俺はこの上も下もない暗黒の空間で、時の流れがすり切れるまで永遠に何処かに向かって落ち続けることになる。


 が、俺に焦りはない。羽を無くし半ばから刀身のへし折れた銀翼の剣に、俺はもう一度呼びかける。


「最後の仕事だ! 頼むぜ相棒!」


 その声に応えるかのように、銀翼の剣が銀色に光る粒子に変わっていく。それは俺の背中に集まり、やがて左片翼だけの翼の骨格が形成された。


 勿論、骨格だけでは飛べないだろう。だが問題ない。必要な羽は、最初から俺の内にある!


「羽ばたけ、『連理を駆ける(フェイトオブ)翡翠の比翼(ジェイド)』!」


 全ての「追放スキル」は、俺に戻った魔王の力の片鱗。ならばこそこれは、俺が持つ唯一の追放スキルではない力。俺に会うために世界を越えてやってきたエルフが携えていた羽が、今白銀の骨格に宿り俺の背に翡翠の羽を産み出す。


 そいつをバサリと動かせば、俺が落ちる速度は一気に加速した。そう、落下だ。片方だけの翼で自由に飛ぶことなどできるはずもない。永遠に変わることのないたった一つの目標に向かい、真っ逆さまに落ちるのみ。


 星のように輝く無数の世界を置き去りにし、俺は暗黒を切り裂く翡翠の流星となる。その眼前に待ち受けているのは、俺が下手を打ったあの世界。


「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」


 一切減速すること無く、俺はその世界に突撃した。眩いばかりの閃光に目がくらみ、意識が戻ると同時に俺はその身をよじって必殺の一撃を受け止める。


「えっ!?」


「悪いな、そいつは二度目(・・・)だ」


 驚きに目を見開くバーンを前に、俺は聖剣を素手で掴んで止めながらニヤリと笑った。

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[気になる点] >「羽ばたけ、『|連理を駆ける翡翠の比翼フェイトオブジェイド』!」 [一言] 2つめの
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