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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一六章 ずれた世界の異聞録

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自分にとって好都合なら、流されるのも悪くない

「では、ワシ等の数奇な出会いに、乾杯!」


「か、乾杯……」


「……………………」


「フンッ」


 連れてこられた酒場にて、笑顔でジョッキを掲げるゴンゾにおずおずと俺も追従する。だがアレクシスは無言で、ルージュはつまらなそうに鼻を鳴らすだけでジョッキを手に取ることすらしない。


 いやいや、四人中二人が無反応って……まあそう言う俺だって本心で乾杯してるわけじゃねーから、三対一で多数派に入ってはいるけれども。そしてそんな有様に、ゴンゾが不満げに口を尖らせる。


「何だ、のりが悪いな。まあいい。では小僧、改めて話を……っと、その前に自己紹介くらいはしておくべきか? ワシはゴンゾだ。見ての通り武僧……この辺で言う神官をやっておる。よろしくな」


「ゴンゾさんですね。よろしくお願いします……見ての通り?」


「ん?」


「あ、いえ、何でも無いです」


 禿げた頭と笑顔の眩しいゴンゾに、俺の目では神官要素が見当たらない。が、確かに回復系の神聖魔術を使っていたので、神官だという言葉を疑う余地はない。多分筋肉の神様とかを崇めてるんだろう。


「ではほれ、次はアレクシス、お主だ」


「……僕に自己紹介が必要だと? 僕を知らない奴なんて――」


「いないと思うか?」


 ゴンゾの目線がチラリとこちらに動き、それを見たアレクシスが小さくため息をつく。


「ハァ……アレクシスだ。まさかこの世界に勇者である僕を知らない人間がいるとは思わなかったよ」


「あはは……ど、どうも……」


 すみません、俺異世界から来たばっかりなんですよ……などと言えるはずもなく、俺は曖昧な笑みを浮かべて誤魔化す。実際もし相手が勇者だとわかっていたら、俺は初手で土下座したことだろう。強者で権力者で有名人、そこまで揃った相手に喧嘩を売るほど俺の反骨心はワイルドではないのだ。


「では、次は……」


「アタシは世界最強の大魔術師、ルージュ様よ。アンタには特別に『ルージュ様』と呼ばせてあげるわ」


「は、はぁ。それはどうも……?」


 どの辺が特別なのかは全くわからないが、俺は改めてルージュの姿を見る。身長は俺より頭一つ分くらい低く、見た目の印象からすると俺より年下っぽいんだが……


「あの、ルージュ……様?」


「何よ?」


「その、ルージュ様っておいくつなんでしょうか? ちなみに俺は二〇歳なんですけど」


「アンタの年齢なんて道に落ちてる石ころの数よりどうでもいい情報だけど、アタシは一八よ。それがどうかしたの?」


「あ、やっぱり年下なんですね」


「……何? アンタまさか、アタシよりただ長く生きてるってだけで下に見ようとか思ってるわけ?」


 ルージュのつり目がギロリと俺を睨み、俺は慌てて顔の前で手を振る。


「いえいえいえ、そんなつもりは! ただその若さで世界最強? なのは凄いなぁと」


「あら、そう? でもそんなのは当然よ。アンタみたいな凡人が一生かけてもできないことがあっという間にできるようになるからこそ天才なの。だからこそアタシとアンタじゃ時間の価値が違うってこと、理解できる?」


「あー、まあ。そうですね」


 たとえば凡人が一〇年かけて習得する技術を一年で習得できるのであれば、その一年には一〇倍の価値があると言えなくもない。そしてその差は時間の流れが万人に平等である以上、未来永劫埋まらないものだ。


「なるほど確かに。俺は魔術は全然ですから、俺の一生分でもルージュ様の一秒には届かないかも知れないですね」


「何よ、アンタわかってるじゃない! 自分が馬鹿だと理解してない馬鹿は大っ嫌いだけど、無能を自覚してる凡人は嫌いじゃないわ。


 いいわ、アンタには特別にアタシのことを『ルージュ様』と呼ばせてあげる」


「それはさっきまでと何の違いが……いえ、ありがとうございますルージュ様」


「フフーン!」


 色々と突っ込みたいことを飲み込んで礼を言う俺に、ルージュが満足げな顔でテーブルに並んでいた手羽先を囓る。ぱっと見お嬢様っぽい感じもするのに、手づかみなんだな……まあこんなところでナイフとフォークを要求するのは、それこそ空気の読めない馬鹿だけだろうけど。


「では、最後はお主だな。ほれ、自己紹介せよ」


「あ、はい。俺はエドです。えっと……単なる雑傭兵で、等級は四です」


 雑傭兵の等級は一から二〇まであり、数字がでかくなるほど上になる。なら四なんて糞雑魚じゃねーかと言われそうだが、そんなことはない。というのも、個人の強さであがるのは精々一〇までで、一一から上は軍団を指揮する能力が求められるからだ。


 つまり、大きな傭兵団を率いている団長なら個人として弱くても一五等級になったりするし、逆に最強の剣士だろうと個人だと一〇止まりになる。なので二〇歳で四等級というのは胸を張って自慢するほどのことではない反面、侮られるようなレベルでもないのだが……


「雑傭兵? 何だそれは?」


「へ!?」


 不審げな顔をするアレクシスに、俺は思わず間抜けな声をあげる。雑傭兵の存在なんて、それこそ一般常識だ。まさか知らないなんて……あっ!?


「等級なんてのがあるなら、それなりに大きな組織よね? ねえゴンゾ、ひょっとしてアンタの国の方の制度?」


「いや、ワシも知らんな。エド、お主一体何処の生まれなのだ?」


「えーっと…………」


 マズいマズいマズい。そうだ、ここは異世界だった。俺が勇者の存在を知らなかったように、この世界では雑傭兵が知られてない……というか存在してないのか! ど、どうする? どうやって誤魔化せば……


「あ…………う…………そ、その、俺の生まれたのは凄い山奥の田舎村で…………あー、あの、あれです。仲間内だけで使ってる肩書きを…………その、見栄を張ったというか、無意識に名乗ってしまったというか…………なので、その、む、無職です…………」


「……………………」


「アンタ……………………」


 しどろもどろに告げた俺に、アレクシスとルージュの冷たい視線が突き刺さる。ぐぅぅ、きつい。心が痛い……だがこの痛みは自業自得だ。こんなことならちゃんと設定を考えておくんだった。そんな暇も無く勇者に斬りかかられたわけだけれども!


「ほぅ、無職か」


 だがそんな二人とは裏腹に、ゴンゾだけは馬鹿にした様子も無くパンを千切ると、それに薄切りにした肉をのせて豪快にかぶりついてから言う。


「ならちょうどいい。なあお主、ワシ等のパーティに入るつもりはないか?」


「へっ!?」


 まさかの誘いに、俺はまたも間抜けな声をあげてしまう。だが俺より先に声をあげたのはアレクシスだ。


「おいゴンゾ、どういうつもりだ? 何故こんな奴を……」


「何故って、お主がそろそろ荷物持ちを雇いたいと言っていたのではないか! 道すがら聞いた話では、手加減していたとはいえ勇者であるお主の攻撃を止めたのであろう? ならばそこそこに自衛もできるはず。荷物持ちとしてちょうどいいのではないか?」


「む、それは…………」


 ゴンゾの言葉に、アレクシスが食事の手を止めて考え込む。するとその横で、ルージュがジョッキに注がれたワインから口を離して言う。


「アタシは別にいいわよ。荷物持ちなんて誰でもいいし、足を引っ張ったら適当に燃やせばいいだけだもの」


 こっわ!? 何それ怖い。まさか本当に燃やすわけではないと思うけど……違うよな? いやでも、アレクシスの行動を考えれば……えぇ、マジか?


「ふむ。アレクシスが保留でルージュとワシが賛成なら問題ないな。ということでどうだエド? 仕事が無いというのなら、ワシ等の荷物持ちとして同行してくれんか?」


「それは……」


 ニヤリと笑ったゴンゾが、その大きな手を俺に向かって差し出してくる。考えるようなそぶりを見せはしたものの、それに対する答えなどたった一つしか許されていない。


「……よろしくお願いします」


「うむ、決まりだ!」


「フンッ。精々頑張りなさい」


「この僕を失望させないようにしてくれよ?」


「あはは……頑張ります」


 こうして俺は、運命という大きな川に流される感じで勇者パーティへと加入することに成功するのだった。

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― 新着の感想 ―
そう言えば、エドって帰りたいという思いを作るために偽の20年の記憶を持たされているわけだけど、あの大雑把にしかならない神に真っ当に生きた人間の記憶なんて作れるのか? これもしかして世界の何処かにエドの…
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