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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一五章 熱血勇者と偽りの魔王

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どんな与太話だろうと、確たる証拠があれば認められないはずがない

「超! 勇者になったぜっ!」


「はぁ……………………?」


 依頼達成の報告に冒険者ギルドに戻った俺達だったが、バーンの発した第一声に受付嬢が阿呆を見る目でバーンを見てから、俺の方に視線を動かしてくる。となれば俺のすることは一つだ。


「いや、スゲー胡散臭いとは思いますけど、本当なんですよ。順を追って説明しますね」


 そう言って俺はシトロワ遺跡の内部であったことを説明する。だが受付嬢の表情は晴れるどころか、話が進めば進むほど眉間の皺が深くなっていくのがわかる。


「……という感じなんですけど」


「えぇ……? いやでも、シトロワ遺跡は今まで数え切れない程の冒険者の方が探索してますし、そんな報告は一度もあがってないんですけど」


「それは俺に言われても。俺は単に起きたことを話しただけで、どうしてそうなったのかなんてわかりようがないですし」


「確かにそうですよね。でもそうなると……」


 考え込む受付嬢に、隣に立つバーンが痺れを切らしているのが感じられる。一周目だとここでバーンが「そんなに疑うなら超! 証拠を見せてやるぜっ!」といきなり雷の魔術を放ってギルド内にボヤが発生し、いくつかの騒ぎが起こった結果城に呼ばれるという流れだったんだが……


「いいぜ、そんなに疑うってんなら――」


「いいじゃねぇか!」


 その再現になる直前、バーンの言葉を遮るように背後から粗野な声が響く。振り向いてみれば、そこではひげ面の男がにやけた顔をしてこちらを見ている。


「おう小僧……バーンっつったか? お前が本当に勇者だって言うなら、その腕前を証明してみる気はねーか?」


「……誰だアンタ?」


「誰だって……昨日も今日も声かけてるだろうが! え、まさか覚えてねぇのか?」


「いや、それは知ってるけど、アンタが俺に名乗ったことも、俺がアンタに名乗ったことも無いはずだぜ?」


「ハッ! そう言やぁそうか。なら改めて名乗ろう」


 むくりと椅子から立ち上がったガジルは、俺よりも頭一つ分は高い身長とガッシリした体格を持ち、強者の威圧を存分に放っている。


「俺はガジル。ここのギルドマスターだ」


「えっ!? マジで!?」


 その名乗りに、俺は思わず驚きの声をあげてしまう。単なる面倒見のいい男だとばっかり思ってたのに、まさかギルマスだったとは。


 ここで声をかけられるってことは……最初の糸綿花の依頼を失敗しなかったから、評価が上がってた? 理由はわかんねーが、とりあえず悪い流れでは無さそうだ。


「ガジルさんか。俺はバーン! 超! 最強の勇者だ!」


「バーンか。で、どうする? 俺と模擬戦やってみるか?」


「勿論! 超! 望むところだぜ!」


「いい返事だ! おいガーネット、準備頼む」


「はぁ……わかりました。えっと、すみませんエドさん、ルナリーティアさん。決してお二人を無視したわけではないと思うんですけど、ガジルさんはあんな感じの大雑把な人なんで……」


「はは、気にしないでください」


「そうよ。それに私達もついていっていいんでしょ?」


「勿論です。では準備がありますので、一旦失礼しますね」


 ぺこりと頭を下げた受付嬢……ガーネットが俺達の前から姿を消し、程なくして案内されたのは道を一つ挟んだ大きな訓練場だ。そこには俺達の他にも騒ぎを聞きつけた野次馬冒険者達がまばらに集まっており、訓練場の中央ではガジルが堂々たる態度で立っている。


「ここなら存分に暴れられるだろ! さあバーン、いつでも来やがれ」


「へー、いいぜ。超! やってやる! エド、ティア、そこで見ててくれ」


「おう。頑張ってな」


「頑張ってね」


 俺達の声援を背に受けながら、バーンがガジルの前へと歩み出る。そうしてゆっくり練習用に刃を潰した剣を構えると、ガジルに向かって噛み付くような笑みを浮かべた。


「超! いく――ぜっ!」


 ダンッという足音を響かせ、バーンがガジルに切り込んでいく。刃が潰された練習用の剣とはいえ金属製には間違いない。当たれば大怪我をすることだってあるだろうが……


ガァン!


「おう、いい切り込みだ。だがまだまだ!」


「チッ! ならこれで――どうだっ!」


 正面からの切り下ろしをガジルの持つ大剣で悠々と受け止められ、一歩引いたバーンが縦、横、斜めと勢いよく剣を振り回す。だがガジルはその全てを余裕の笑みを浮かべながら受け止め、受け流してしまう。


「うわ、あの人強いわね」


「そうだな。まあバーンが弱いってのもあるけど」


「えっ、バーンって弱いの!?」


 そんな二人の戦いを見ながら漏らした俺の感想に、ティアが小さく驚いて俺の方を見てくる。


「でも、ゴブリンを凄い勢いで斬ってたわよ?」


「それとは別の話さ。魔獣相手なら大分いけるだろうけど、ちゃんとした訓練を積んだ剣士相手にゃ分が悪いって感じかな」


「へー、そうなんだ」


「ほらほら、どうした小僧! 勇者ってのは俺みたいなオッサンすら倒せねぇのか?」


「くっそ! 何で当たんねーんだよ!?」


 俺とティアが暢気な会話をしている間にも、ガジルとバーンの戦いは続いている。だがバーンの攻撃は全く有効打にならず、その全てがガジルに防がれている。


「なあバーン。お前その剣は我流か?」


「そうだ! 俺の超! 最強流だっ!」


「だからか。力は強ぇし勢いも申し分ねぇ。だってぇのに……技術がねぇ!」


「うわっ!?」


 ガジルの大剣に器用に巻き上げられ、バーンの長剣が宙を舞う。逆ならともかく取り回しの悪い大剣でこんなことができるのは、バーンが未熟であることを差し引いてもガジルの腕がかなりのものであるからだろう。


「ってか、さっきから剣しか使ってねぇじゃねぇか! お前勇者の力はどうしたんだよ!?」


「はっ!? そう言やそうだ。超! 忘れてたぜっ!」


「忘れてたってお前……」


「ってことで、食らえ! 『ライトニング』っ!」


「うおっと!」


 前に突き出したバーンの指先から、バリッと稲妻がほとばしる。それに目を見開くガジルだったが、それでもひょいと体を動かして回避することに成功した。


「避けるのかよっ!? 雷だぜっ!? 超! 速いんだぜっ!?」


「いくら速いったって、そこまでわかりやすく狙われたらそりゃ避けるさ。にしても雷の魔術……まさか本当に勇者だってのか?」


「そう言ってるじゃねーか! む、でもただ撃ち出すだけじゃ避けられる……なら……」


 一瞬だけ考え込んだバーンの顔が、すぐにニヤリと笑みに変わる。その後は雷でガジルを牽制して、飛ばされた剣を回収して構える。


「さあ行くぜガジルさん! これが俺の超! 究極奥義!」


「奥義? お前が勇者になったのはついさっきなんだろ?」


「そうだ! だから今考えたっ!」


「奥義の扱い軽ぃな……まあいい。受けてやるからかかってこい!」


「うぉぉぉぉぉぉ!!! 超! メッチャ斬り!」


 そう叫び、バーンがその場で剣を振り回し始める。意味の分からない行動にガジルが訝しげな表情を浮かべるなか……バーンがそれを口にする。


「『ラ』っ! 『イ』っ! 『ト』っ! 『ニ』っ! 『ン』っ! 『グ』ぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


「何だと!?」


 バーンの振り回す斬撃全てから、青白い稲妻の刃が飛び出す。見た目の印象としてはアレクシスが使った「月光剣(ムーンスクレイパー)」を乱射するような感じだろうか? 咄嗟に剣を構えたガジルだったが、相手は稲妻……つまり魔術攻撃。青い刃が幾本もガジルの体を通り過ぎていき……


「……ん? それほどでもねぇぞ?」


「はぁ、はぁ…………あ、あれ?」


「あーっと…………ていっ!」


「ぎゃふんっ!?」


 互いに不思議そうな顔をする二人だったが、息を切らせるバーンにガジルが普通に歩み寄り、その脳天に剣を叩き込むことでバーンが大地に沈む。その無様な姿を数秒観察してから、ガジルの体からフッと力が抜けた。


「今の攻撃って……ひょっとして見た目だけ?」


「だろうなぁ。行き当たりばったりの奥義なんてそんなもんだろ」


「終わりか。何ともまぁ、最後はしまりのねぇ結末になっちまったが……その若さでこれだけやれるなら、先が楽しみってもんだ。そうだろ? 勇者様(・・・)よぉ?」


 感想を口にする俺達の前で、ガジルがニヤリと笑いながら地べたに倒れるバーンを見下ろして言う。バーン本人は聞いていないが、これがこの世界で久しぶりに勇者の存在が公に認められる瞬間となった。

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― 新着の感想 ―
勢いはあるもののまだまだ空回りまくりの若者勇者かぁ。 ここから師匠を得たりして成長していくのかなー
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