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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一五章 熱血勇者と偽りの魔王

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その偶然は、世界の必然

「ここがシトロワ遺跡? 何て言うか……」


「超! 遺跡だな!」


「そのまんまじゃねーか。まあそうだけど」


 そこそこ定期的に人が来ているせいか、獣道より少しマシ程度の道を辿ってやってきたシトロワ遺跡は、実にそれらしい外観をしていた。蔦とこけが絡みついた石造りの建物は年代を感じさせ、あちらこちらが小さく欠けたりしているものの、致命的に大きな破損は見受けられない。


「随分古そうなのに、建物自体はしっかりしてるのね? 不思議……保存の魔術でもかかってるのかしら?」


「さあな。少なくとも倒壊の危険性がないってのは、中を調査する身としては助かるけど」


「んじゃ、早速入ろうぜ! 明かりを頼む!」


「はーい。今魔法を――」


「いや待てよ! 斥候は俺なんだから、俺が先導するって言ってんだろ! ティア、こっちに頼む」


「フフッ、わかったわ……はい、どうぞ」


 バーンを押しのけた俺の頭上に、ティアの精霊魔法で生み出された光る玉がふわりと浮かぶ。危険度の高い場所だとこんなものを浮かべたらいい的になってしまうが、内部の調査……という名の魔獣掃討が依頼なので、敵の方からこっちに向かってきてくれるのは今回に限ればむしろありがたい。


「野盗でも入り込んでなきゃ罠の類いはねーと思うけど、それでも一応注意してくれ。あとゴブリンだのは普通に住み着いてるはずだから、そっちの警戒もな」


「了解。後ろは任せて」


「超! 完璧だぜっ!」


「んじゃ、行くぞ」


 元気のいい返事を背に受けて、俺は遺跡の中へと入っていく。このシトロワ遺跡は一〇部屋ほどある地上部分と、ちょっとした食料庫になっている地下が一室あるだけのごく小規模な遺跡だ。構造は一周目でわかってるし、念のため「旅の足跡(オートマッピング)」も使っているので迷う要素はこれっぽっちもない。


 そして魔獣がいるという前提で動いていれば、不意を打たれることすらない。


「バーン、壁の向こうに二。入ったら不意打ちしてくると思う」


「了解。超任せろ!」


 俺の脇を抜け、バーンが勢いよく室内に駆け込む。すると不意打ちのはずのゴブリンの剣がスカッと空を切り、踵を返したバーンの剣がゴブリンの頭を飛ばす。


「室内、他に敵影は無いぜっ!」


「ティア?」


「挟撃も無し。この流れだと不意打ち以外はしてこないんじゃないかしら?」


「ま、指揮できる上位個体がいねーんだろうな。了解、じゃ、念のため室内を調べたら、次の部屋に行くか」


 油断なく危なげなく、俺達は遺跡内部の調査を終えていく。というか、そもそも俺とティアはあくまでも「この世界では」新人というだけで、実際には過酷な旅をこれでもかと乗り越えてきているわけだし、バーンにしても経験不足からくる見落としや失敗はあるにしても、純粋な実力はかなり高い。


 なので「本当の新人」が受けることを想定している依頼に苦戦などするはずもない。万が一の見落としすらないように丁寧に時間をかけてなお三時間ほどで地上部分の調査は終わり、残すは地下の食料庫のみ。


「ふぅ。後はこの下を見れば終わりか」


「超! 楽勝だったな!」


「あら、最後まで気を抜いたら駄目よ? しっかり警戒していきましょ」


 気楽なバーンとは対照的に、ティアはきっちりと緊張感を維持している。これはバーンがまだまだ駆け出しであることを除いても、ティアは俺の言葉からここで何かがあることを知っており、その何かがまだ起きていない……つまり何かあるならこの地下だと考えているからだろう。


 そして、実際それは正しい。ここに入れば……ほれ来た。


「うぉっ!? 何だ!?」


「えっ、魔法陣!?」


 二人が驚きの声をあげるなか、俺達の足下に突如として光り輝く魔法陣が出現する。それと同時に一瞬頭がくらりと揺れ、それが戻った時に目の前に広がっていたのは、一面の闇。


「な、何だ!? 超! 真っ暗だぜっ!?」


「転移で明かりがついてこられなかったんだろ。ティア、もう一回頼む」


「わかったわ」


 事前に知っていた俺は勿論、場数を踏んでいるティアは慌てることなく呪文を詠唱し、再び俺の頭上に光る玉が浮かぶ。それによって照らし出された光景は、周囲全てを壁に囲まれた閉鎖空間だ。


「何これ、閉じ込められた?」


「あそこに何かあるぞ!」


 訝しげな目でティアが状況を確認するなか、バーンが少し離れたところにあるそれ(・・)を見つけて声をあげる。俺達全員で何かの方に近づいていくと、そこにあったのは小さな石碑であった。


「石碑……? 何か書いてあるみたいだけど……読めない?」


「え、そうなのか? 俺は超! 読めるぜ?」


「え!? 何で……あっ」


 ハッとしたティアがこちらを見てきたので、俺は無言で頷いてみせる。そう、これはアレクシスと一緒に聖剣を取りに行ったときと同じ。勇者本人にしか反応せず、勇者本人でしか解除できない仕掛け。


 一周目の時は単にバーンの運がいいだけとか、文字が読めないのも俺がこの世界の人間じゃないからという理由で納得していたんだが……そうか、これ勇者専用の仕掛けだったんだなぁ。あの経験がなけりゃ気づけなかったところだ。


「で、バーン。俺にも読めねーんだけど、何て書いてあるんだ?」


「おう、えーっと…………ここに手を置けばいいのか? ふぁっ!?」


「バーン!?」


 バーンが右手の平を石碑の文字の部分に押しつけた瞬間、その体にバリバリと青白い稲妻が宿る。その衝撃の光景にティアが思わず腕を伸ばそうとしたので、俺が慌てて引き留める。


「エド!?」


「大丈夫だから、見てろ」


「……エドがそう言うなら」


 そうして待つこと、おおよそ一〇秒。光の収まったバーンが、呆けたように自分の手のひらを見つめている。


「おいバーン、どうした? 大丈夫か?」


「あ、ああ……」


「バーン? 本当に大丈夫?」


「……………………」


 未だうつろな顔つきのバーンが、徐に右手を前に伸ばし……その口元が小さく動く。


「『ライトニング』」


「きゃっ!?」


 バーンの右手から、一筋の稲妻が打ち出された。それは石造りの床の上でバチリと弾け……バーンの表情に熱が戻る。


「うぉぉぉぉ!? ま、魔術!? 俺が魔術を……しかも勇者しか使えない(・・・・・・・・)雷の魔術を!?」


「おい、バーン! 今のは?」


 答えは、もう知っている。だが俺はバーンが求めるその問いを投げかける。するとバーンの顔がゆっくりとこちらに向き、語り始める。


「なあエド。俺は子供の頃から、超! 強い英雄になりたかった。だが今、俺はそれをあっさりと越えちまった!


 今! この時! この瞬間! この俺、バーン・バニングスはっ!」


 俺達の周囲を囲むように、幾本もの稲妻が落ちる。青白い光と空気の焦げる臭いが漂うなか、バーンが大声で宣言する。


「勇者になったぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ハッハッハー!」


 まるで拍手のような稲妻の音に包まれ、バーンが哄笑をあげる。だがそんなバーンに近づく影がひとつ。


「もーっ! 嬉しくてはしゃぐのはわかるけど、そのくらいにしなさい!」


「あ、うん。すまん……超すまん……」


 ティアに怒られ、周囲から稲妻が消える。どうやら無敵の勇者様も、ティアには敵わないらしい。


「それで? 私達はどうやってここから出ればいいの?」


「それなら石碑の後ろに超! 脱出用の魔法陣が……これか?」


 バーンが床に手を当てると、光る魔法陣が出現する……っておい!?


「馬鹿! 俺達が乗る前に起動するやつがあるかよ!? ティア!」


「わ、わっ!? 待って!」


 俺は慌てて魔法陣の上に飛び乗り、駆け寄ってきたティアの手を掴んで引っ張る。するとギリギリで転移が間に合い、次の瞬間俺達はシトロワ遺跡の正面入り口前に立っていた。


「ふーっ、マジで焦ったぜ……おいバーン、お前ふざけんなよ!?」


「いや、ちがっ!? 俺も知らなくて――」


「勢いがあるのはいいことだけど、勢い任せばっかりじゃ駄目なのよ!?」


「そ、それは……」


「「バーン?」」


「……ちょ、超ごめんなさい」


 こうしてなりたての勇者の最初の仕事は、俺達の前に土下座して頭を下げることになるのだった。

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― 新着の感想 ―
>バーン・バニングス 島戦記のアシュラムじゃないほうの黒騎士だった。
ロードス島(PAーん)かと思ったら、黒騎士か!
[良い点] アホの子で可愛い勇者ですねーw
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