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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一三章 暴走勇者と密林の男達

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そんなつもりは欠片もないが、見え方まではどうしようもない

 その後は軽く雑談などを交えつつ、ティアとの情報交換を終えた俺が次に向かったのは、ドナテラを監禁しているあの洞窟だ。


 女性達から隠れる目的で暮らしていたそこは当然ながら分かりづらい場所にあり、普通なら土地勘の無い俺が辿り着ける場所ではないのだが、俺には追放スキル「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」があるので問題ない。


「…………ん?」


 ギャアギャアと鳴く鳥の声を聞きながら洞窟前まで辿り着くと、そこは何とも静かだった。てっきりドナテラが大声でわめき散らしているとばかりに思っていた俺が警戒心を強めて洞窟の中に足を踏み入れると、そこには俺が閉じ込められていたのと同じ作りの牢屋があり、中ではドナテラが大人しく座っていた。


「エド? どうした?」


「ああ、ちょっとドナテラと話をしたいと思ってな。見張りは俺が代わっとくから、飯食ってこいよ」


「わかった。それじゃ後、頼む」


 見張りをしていた男とそんな会話を交わし、俺と入れ違いに男が外に出て行く。その後ろ姿を見届けると、俺は改めてドナテラのいる牢の前に腰を落とした。


「ようドナテラ。元気か?」


「……オマエ、これが元気に見えるか?」


 ギロリと睨んでくるドナテラに、しかし俺は怯むことなく笑みを浮かべる。


「ああ、見えるぜ? 別に何かされたわけじゃねーだろ?」


「薬嗅がされて、牢に入れられた。これが何もされてない思うのか?」


「俺だって何処かの誰かに強制召喚されたうえに、ろくに事情も説明されねーでいきなり牢にぶち込まれたぜ? ならその程度は『何もされてない』じゃねーの?」


「……チッ」


 冗談めかして言う俺に、ドナテラが面白くなさそうに顔を背ける。とは言えそれだけだ。牢に入ってはいるがそれ以上に拘束されていないのは、きっとドナテラが無駄に暴れなかったからだろう。


 何故大人しくしているのか、その理由までは知る由もないわけだが……この様子なら思ったよりもずっと話が通じそうで、俺としては嬉しい計算違いだ。


「なあドナテラ。そんだけ落ち着いてるなら話くらいできるだろ? なのになんで集落の男達を問答無用で全員追い出したりしたんだ? せめてその理由くらいは説明してもよかっただろうに」


「…………黒い星」


 問う俺に、ドナテラが静かにその口を開く。伏せがちの瞳には、何処か慚愧の念が感じられるような気がする。


「一〇年前、森の東に黒い星、落ちた。そこから漂う黒いもや、それに触ると生まれる黒い悪魔、集落を襲うようになった」


「らしいな。ハモキンから聞いた」


「男達、集落を守るために黒い悪魔と戦った。女達、そんな男を支えた。私もその一人。男達支えて集落守る、それ女の誇り。思ってた。


 でも違った! 五年前、光る星が私に真実、教えてくれた!」


「……真実?」


 空から降ってきた訳の分からないものに教えられる真実なんて、胡散臭いどころの話じゃないと思うんだが……思わず顔をしかめる俺に、ドナテラが熱の籠もった視線を向けてくる。


「そうだ! 真実! 男達の真実! 黒い星、女の姿してた! 胸ボインボイン、尻プリンプリン! 男達は皆それに釘付けになって、黒い星と戦えなかった!


 私達が応援してたの、ただの変態だった! 男最低! 男軟弱! 男害悪! 男役立たず!」


「お、おぅ? そうなの?」


 黒い星ってのがこの世界の魔王のはずだが、え、女なの? しかも男の視線を引きつけるってことは、人の形をしてるんだよな? そりゃジョンみたいなのがいるんだから、女の魔王がいたっておかしくはねーけど……うわぁ、何だろ? 見たいような見たくないような複雑な気分だ。


「っていうか、え? じゃあ男達を追い出したのって……?」


「男達、黒い星に見とれるばかりで役立たない! むしろ邪魔! だから私、男を追い出して女だけで黒い星、倒そうと思った。そのために光る星が教えてくれたあの日に勇者を喚ぶ儀式して……そしてやってきたのがルナリーティアと、オマエだ」


「なるほどなるほど、そう繋がるわけか……」


 相変わらず睨み続けてくるドナテラの視線を一旦忘れて、俺は自分の右手を見ながら考えを巡らせる。


 今も俺の中で抵抗を続けている白いナニカ……ドナテラに宿った光る星は、こうなると神の力だか意志だかの可能性がほぼ確定だ。何せ俺を異世界に送ってるのは神の力のはずだからな。


 勿論別の奴が横やりを入れているという可能性もなくはないが、そんな超越者ばっかりここにひしめいていると考えるよりは、神が世界に関して今までより積極的に干渉し始めたと考える方が妥当だろう。


 となると、気になるのは二つ。一つは後でハモキンにでも直接聞いてみればいいとして……


「おいドナテラ、ちょっと手を出せ」


「……嫌だ。オマエ私にエロいことするつもり」


「しねーよ! 何でそう思うんだよ!?」


「オマエ、さっきから私の体見回してる! ねっとり絡みつく視線、これ以上無いほどにエロい!」


「うぐっ!? いや、見てはいたけどそういうのじゃねーから!」


 俺がドナテラを見ていたのは、光る星とやらが体の何処に宿っているのかが気になったからだ。それ以上の意味は断じてない。


「ほら、いいから手を出せって!」


「嫌だ! オマエ、また私に無理矢理のしかかるか!? 男最低! 男最悪! どれだけオマエが私の体汚そうと、私の誇りは失われない!」


「なあエド、ドナテラ俺達の仲間。あんまり酷いことは……」


 ドナテラが大声で騒ぎ、それを聞きつけて戻ってきた男が俺の方に非難の視線を向けてくる。ならばこそ俺は声を大にしてそれを否定する。


「ちげーよ! そういうんじゃねーって言ってんだろ! ちょっと気になることがあるだけで……じゃあほら、お前がドナテラの手を取ってこっちに伸ばしてくれよ」


「む、それは……」


「オマエまさか、二人がかりか!? よってたかって私の体、貪るつもりか!? 男最低! そのなかでもオマエ最低の最低!」


「…………わかった。もういい」


 牢屋の中で後ずさりするドナテラに、俺は大きくため息をついて引き下がる……と見せかけて、一瞬だけ「追い風の足(ヘルメスダッシュ)」を起動。目にもとまらぬ速さで牢屋の横に回り込むと、そこから腕を突っ込んでドナテラの手を強引に掴んだ。


「あぐっ!? オマエ、いつのまに!?」


「……………………」


「何するつもりだ!? 気持ち悪い! 離せ!」


「……………………」


「くそっ、こうなったら……っ!」


「……っと、もういいぜ」


 怒りに燃えるドナテラの体からほのかに金色の光が立ち上り始めたところで、俺は慌てて手を離す。するとドナテラは俺が掴んでいた手を胸に抱えて小さく蹲ってしまい、一部始終を見ていた見張りの男が訝しげな目で俺を見てくる。


「おいエド、お前今何した?」


「ああ、ドナテラが変になった原因……光る星か? そいつをどうにかできないかと思ったんだが……上手くいかなかった」


「そう、なのか?」


「ああ。悪いな、上手くいってりゃ問題の大半は片付いたんだが……」


「いや、それは仕方ない。ドナテラ変わったのみんな知ってる。でも戻し方、誰にもわからない」


 実際に手を触れて意識を集中してみたが、ドナテラの中にあるという光る星は俺には感じ取ることができなかった。試しに俺の中にある白いナニカを送り出そうとしてみたり、逆にそれで引っ張れないかなどとやってみたが、どれもこれも無反応ではどうしようもない。


 まさかとは思うが、実は全部俺の勘違いで白いナニカと光る星は全く別の力だったりするのか? ぬぅ、わからん。ティアにも調べてもらえればいいんだが、ティアが近づくとまた精神操作の影響を受けちまうだろうしなぁ……割とマジで手詰まりだぞこれ。


(うーわ、どうしたもんかな……)


 ドナテラを治せなくても、俺の通常目標の達成……つまり魔王の討伐と「白い世界」への帰還にはそこまで大きな問題はない。が、新たに決めた大目標、全ての世界を最高の結末に導くという野望の達成には、ドナテラの治療だか解毒だかは必須だ。


(ったく、神が魔王(おれ)の邪魔するってのはまだわかるけど、ならせめて人は助けろよ)


 何とも融通の利かない存在に、俺は内心で悪態をついておいた。

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― 新着の感想 ―
そういえば魔王が女の姿してるって、男からは聞いてなかったような? あの対決の盛り上がり方からして男たちがそれはそれで盛り上がらないわけないよな…? 星が降ってくるまでずっと後方支援だったってことは多分…
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