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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一三章 暴走勇者と密林の男達

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それが一番いいというなら、卑劣な手段も厭わない

私事でありますが、本日からスクウェア・エニックス様のスマホアプリ「マンガUP!」にて拙作「威圧感◎ 戦闘系チート持ちの成り上がらない村人スローライフ」のコミカライズが始まっております。ゐぬゐ先生による素晴らしく可愛らしいミャルレントさんが見られますので、是非ともご一読いただければと思います。

 俺の人生において最も不毛だと思われる勝負を制したことで、俺はハモキンやガルガド達の信頼を勝ち得ることができた。その後は集まった代表達と作戦会議を行い……そして更に一週間後の夜、俺はドナテラのいる集落へと潜入していた。


「……………………」


 草むらの中、息を殺して周囲を伺う。俺の前では警備と思われる女性が二人並んで歩いており、だが彼女らはこちらに気づくことなく歩き去って行く。


「…………ふぅ。確かに大分警備が厳重だな」


 その背が見えなくなったところで、俺は短く息を吐いて呟く。久しぶりの単独行動はやはり緊張感が違う。なにせ失敗したらカバーしてくれる奴はいないわけだからな。


(次は右……いや、左から回る方がいいか?)


 周囲の敵配置は、「旅の足跡(オートマッピング)」と「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」の組み合わせで丸わかりだ。とは言え視線や移動の方向までわかるわけではないので、そこは慎重に行動しなければならない。なんせここでの失敗は、作戦全体の失敗だ。


 あの訳の分からん勝負で信頼を勝ち取り、そしてその後に普通に戦って実力を示したことで、俺は無事にドナテラを押さえる役を請け負うことができた。俺が戦闘を始めると同時に集落周辺に身を潜めた男達が、ここにいる女性陣を片っ端から攫っていく準備が既にできている。


 が、それはあくまで俺がドナテラをこっそり襲撃できればこそだ。ここで騒がれてドナテラが取り巻きと一緒に動いてしまったら、作戦失敗で解散することになっている。そうなればここまでの仕込みは全て無駄になるし、最悪ドナテラが寝るときすら取り巻きを控えさせるようになるかも知れない。


 それを避けるためにも、ここで俺が見つかるのは避けねばならないわけだが……


(つーか、この見通しの良さがきついんだよなぁ。視線を遮るものが全然ねーとか、潜入に優しくないぜ)


 大きな町や建物の内部と違って、この集落は建物同士の間隔が広く、一旦中に入り込んでしまうと身を隠せる場所が極端に少ない。そしてその少ない死角を潰すように見回りがいるのだから、確かに普通ならここに潜入してドナテラだけを襲うってのは相当難易度が高いだろう。


(見張りだけなら戦闘力は関係ないし、全部の見張りを定点じゃなく巡回にしてるのは、仮に倒されてもすぐに異変に気づくからか。チッ、自分たちが弱いってのをきっちり理解してやがる)


 腕に自信のある見張りなら、たとえば門番のように不動でその場に置くだけで機能する。が、それだと交代の時間にならなければ異変に気づけない。


 逆に巡回式だと死角からいきなり襲われたりすることがある反面、常に動いて短時間で何人もの他人とすれ違うため、異変が起きればすぐにわかる。これなら本人がどれだけ弱くても異変を察知する鳴子(・・)としての役割には十分だ。


(ティアがいてくれりゃ精霊魔法で眠らせたりできるんだがなぁ……それともリーエルか? あれだけの回復魔法が使えれば多少手荒に扱っても平気だしな)


 頼りになるがこの場にいない人物のことが、俺の脳裏にふとよぎる。ティアはともかくリーエルのことが浮かんだのは、間違いなくこの前人形を作ったからだろう。


 なお、あの人形は今も俺の「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」の中に眠っている。何人かに譲ってくれと頼まれたけど、流石に知り合いがエロい格好をした人形を渡すのは躊躇われたので断ったからだ。


(……駄目だ、一人だと思考がとっちらかるな。もっと集中しろ)


 ティアといることが当たり前になりすぎて、どうも一人で活動する時の勘が鈍っている気がする。別行動自体は今までだってちょこちょことあっただろうに……チッ、どうも勝手が狂うぜ。


「こっち、異常ない。そっちは?」


「こっちも異常ない」


 簡素な会話をやりとりして、俺の側を二人の女性が通り過ぎていく。すれ違った二人が背を向け合った瞬間、俺は大胆にもその隙間を通り抜ける。互いの体が壁となって影を作り、その闇を俺という侵入者が風の如く駆け抜ける。


「ん?」


「どうした?」


「……いや、何でもない」


(……よしっ!)


 最難関と思われたドナテラの家の正面の道。そこを通り抜けたことで、俺は思わず内心でガッツポーズを決める。さあ、ここまでくればあと少しだ。「旅の足跡(オートマッピング)」の感じだと俺が知ってる集落と建物の作りは変わってないみてーだし、なら寝室はこの奥にあるはず……っと、ここか。


「すぅ……すぅ……」


 音を立てないように静かに扉を開くと、簡素な寝台の上でドナテラが横になって寝息を立てている。俺が暗殺者ならこのまま刃を落とせば終わりだが、今回の目的はドナテラを可能な限り無傷で無力化することだ。


「……………………」


 故に俺は、腰の鞄からハモキン達が森で集めた材料で作った、吸い込むと一時的に意識を失う薬液を染みこませた布を取り出す。こいつを寝ているドナテラの顔に近づければ、後は呼吸で勝手に吸い込んでくれるって寸法だ。ということで俺は背後ならドナテラに近づき、布を持つ手をその顔の前に伸ばして……っ!?


「汚い手、近づけるな! 薄汚い男が!」


 伸ばした手首をがっちりと掴まれ、首だけで振り返ったドナテラがこっちを睨んでくる。


「チッ、やっぱり起きてたか」


「当たり前! 男近づく、気づかないわけない! フンッ!」


 そう言ってドナテラが寝ている姿勢から俺の腹に蹴りを放ってくる。手首を掴まれたままの状態でそれを交わす術はなく、太い足から繰り出される強烈な一撃は……しかし俺には通じない。


「何!?」


「へへへっ、悪いな。アンタの攻撃は効かないぜ……よっと!」


「うわっ!?」


 全く痛がるそぶりの無い俺に動揺するドナテラを、今度は俺が掴まれている腕を引っ張ってそのまま床の上に転がす。ドラゴンの牙だって通さない「不落の城壁(インビンシブル)」が蹴りの一発で破れるはずもないし、きちんと踏ん張れるなら寝っ転がってる相手を引き倒すなんて楽勝だ。


「さ、これで形勢逆転だな……いや、最初から俺が勝ってたか?」


「離せ! くそっ、オマエ何で離れない!?」


「そりゃ俺の方が強いからさ」


 仰向けに倒れたドナテラに上に乗っかり、その体をがっちりとホールドする。単純な筋力ならドナテラの方が強いんだが、俺をどかそうとする衝撃は全て「円環反響オービットリフレクター」で返してしまっているため、ドナテラがもがけばもがくほど強烈な反射でその体が痛めつけられる。


 なお、実は衝撃が出ない程度にゆっくりと押されると多分押し負けて逃げ出されるんだが、流石にそれに気づかれたりはしないだろう。


「んじゃ、悪いけど眠ってもらうぜ? なーに、悪いようにはしないって」


「ふざけるな! 強い奴エロい奴! オマエ私に何する気か!? 男変態! 男最低!」


「えぇ、その価値観こっちでも有効なの? いや、本当に何もしねーよ? ちょっとばかり素直になってもらうまで閉じ込めるくらいで……」


「男の思う通り、ならない! 私負けない! エロい男に屈しない! 誰か……むぐっ!?」


「大声出すなって! すぐ済むから!」


 俺はドナテラの口に、薬液を染みこませた布を強く押し当てる。体を押さえる腕が一本無くなったことでドナテラの抵抗が強くなったが、その分呼吸が荒くなったことでどんどんと薬液がドナテラの中に吸い込まれていく。


「うっ……ぐぅぅ…………」


「ほーら、もうすぐだから、大人しくしてろよ」


 必死に抵抗し、キッとこちらを睨むドナテラに対して俺はそんな声をかける。うーむ、この絵面だと完璧にこっちが悪役だな。でもこれが一番穏便な方法なんだし、後はドナテラが気絶したら運び出せば……っ!?


「そこまでよ!」


「ぐおっ!?」


 突如として、俺の体が強い衝撃で吹き飛ばされる。ゴロゴロと床に転がりながらも素早く姿勢を立て直して見上げると……


「か弱い女の子にこんな卑劣なことをするなんて! 本当に男って最低ね!」


「ティア……っ!?」


 そこには白銀に輝く剣の切っ先を俺に突きつけ、こちらを睨むティアの姿があった。

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― 新着の感想 ―
これさ、圧倒的悲痛絶望展開の人類滅亡世界を、 ドラクエとエロという2つのギャグの世界で挟んでるよね 鬱な雰囲気を和らげようと意図したものなのかな それとも両極端同士を隣り合わせにすることで、 悲痛とギ…
[気になる点] 人形が見つかった時どうなるか楽しみですね
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