表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一三章 暴走勇者と密林の男達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

216/552

一見些細な問題にこそ、突き詰めると致命が混じっている

「男なんてサイテーよ! エドのえっち!」


「えぇ……?」


 あまりに突然の出来事に、俺の意識がついてこない。よし、ここは冷静になって状況を整理してみよう。


 昨日の夜、俺はこの第〇三六世界にやってきた。すると清楚可憐な少女だったドナテラがムキムキマッチョな女戦士になっており、やたらと男を嫌うようになっていた。


 その流れで俺は牢屋に入れられ、そして今日。遅めの朝食を取っている俺の前にドナテラと一緒にティアがやってきて、突然俺に指を突きつけながらそう宣言してきたわけだが……うん、控えめに言って訳が分からん。


「えっと……ティア? 急にどうしたんだ?」


「急じゃないわよ! 口には出さなかったけど、ずっと前から思ってたの! エドはいっつもえっちな目で女の人を見てるって!」


「えぇ……?」


 いわれの無い糾弾に、俺はもう一度情けない声をあげる。昨日と違って断定的なその口調に加え、ティアの目にはあからさまな軽蔑が浮かんでいる。うーん、これは……?


「まあまあ、ティア。そんなに怒るなよ。ここは一つ握手でもして仲直りしようぜ」


 俺は軽く笑みを浮かべながら、牢からティアに向かって手を出す。が、ティアは怒った顔のままその手をペチンと叩いた。


「嫌よ! とにかく私は目覚めたの! もう特別扱いはしないから、覚悟しておくことね!


 さ、行きましょドナテラ。黒い星とどう戦うか、相談しなきゃ」


「うむ! 流石勇者、頼りになる! じゃあな男!」


「おお痛ぇ……ああ、またな」


 ドナテラとティアが、肩を並べて楽しそうに話しながら去って行く。俺はそれを牢の中で見送り、ふて寝するように見張りに背を向け地面に寝転がると静かに意識を切り替える。


(こいつは想像より数段ヤバいな)


 ティアの態度の豹変は明らかに異常だ。ならばこそ演技かも知れないと思い、俺は自然な形で「二人だけの秘密(ミッシングトーク)」が発動できる状況を作った。勿論長くは話せないだろうが、例えば「演技」とか「嘘」なんてたった一言伝えてくるだけでも、俺はティアの真意を理解して話を合わせただろう。


 が、ティアは俺の手をはたき落とし、力を使わなかった。つまり今のティアは本心であの言動をとっていた可能性が高い。次点でドナテラ本人、もしくは周囲の女性に人の心を読むような能力持ちがいて、それをカバーするために本気の演技(・・・・・)をしたってのもあるが、それならそもそも俺が泳がされてる理由がわからねーしな。


(思考誘導? いや、いっそ洗脳か? まさかこんなに即効性があるとは……)


 ハモキンの話から、ドナテラが同性に対するその手の能力を有しているのはわかっていた。が、たった一晩で会ったばかりのティアが染められるのは流石に予想外だ。


(条件は何だ? 女性のみってのはほぼ確定だろうが、経過時間、それとも接触とかか? 集落中の女に影響が及んでるのは、効果範囲が広い? それとも一端洗脳したら長期間持続するとかか?


 どっちにしろ効果に対して条件が緩すぎる。真っ当な力じゃねーはずだけど、本人に負荷がかかってる様子もねーんだよなぁ)


 精霊使いであるティアは、精神操作のような力には強い抵抗力がある。それをたった一晩で突破するとなれば相当強力な力のはずなんだが、ドナテラに代償を払っているような様子はなかった。


 つまるところは、いかさまだ。そしてその正体が件の光る星ってことだろう。


(本当に何なんだお前? ろくでもねーことしかしねーじゃねーか!)


 俺は指先に押し込められ、不満げに震えている白いナニカに悪態をつく。が、当然そんなことをしても白いナニカが応えることもなければ、問題が解決するわけでもない。


(のんびり情報収集しようかと思ってたけど、ティアがあの状態じゃ悠長なことは言ってられねーな。さっさと動いて対策を考えねーと)


 幸か不幸かガッツリ洗脳されてしまっている以上、ティアの身柄を心配する必要はほぼない。そう判断した俺は静かに体を起こすと、こっそりと「不可知の鏡面(ミラージュシフト)」を起動して牢から抜け出す。男を見るのも嫌だと見張りが背を向けているのが幸いし、そうして俺は誰に気づかれることもなくあっさりと脱獄を果たした。





「んー、この辺のはずだけど……」


 俺は「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」を頼りに、ハモキンの場所を探して歩く。ただ今は昼間ということもありハモキンも活動しているだろうから、なかなか合流することができない。


 勿論全力で走るとかすればすぐに捕捉できるだろうが、女連中から逃げている身としては森の中を全力疾走なんて目立つことはしたくない。それはハモキンも同じだろうから、時間をかけてでもこうして歩いて探しているのだ。


「お? いた」


 と、そんな感じで探し回っていると、ようやく少し先にハモキンの姿を見つけた。まっすぐ前を見ながら草葉の陰に身を潜めているので、おそらくは狩りをしているんだろう。


「獲物は……あれか」


 ハモキンの視線から、その先にいるイノシシを狙っているのだと分かる。ならば狩るまで待っていてもいいんだが……ふむ。


「フッ!」


 俺は「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」からナイフを取り出すと、「追い風の足(ヘルメスダッシュ)」で一気にイノシシの側へと近づく。野生を生き抜く獣とて、歴戦の戦士すら見失う俺の高速移動に反応できるはずがない。


「よっ!」


 突然現れた人影にイノシシが驚きで動きを止めているなか、俺の振り下ろしたナイフがイノシシの首を正確に切り裂く。明らかな致命傷を負いながらも最後の力でイノシシが俺に突っ込んできたが、俺は焦らず「円環反響オービットリフレクター」を起動して手をかざす。


 片手で受け止めた体当たりの衝撃はそのままイノシシの脳を揺らす反響となり、ぐらりと倒れたイノシシはそのままビクビクと数度痙攣してからその命を終えた。


「ま、こんなとこか。おーい、ハモキン!」


「エド? オマエ、どうしてここにいる?」


 俺が声をかけると、草むらからハモキンが出てくる。周囲のみならず俺に対しても一定の警戒心を維持している辺り、なかなか優秀な戦士のようだ。


「ちょいと事情があってな。逃げ出してきた。あ、このイノシシはハモキンにやるよ」


「いいのか? エドが仕留めた獲物だぞ?」


「いいって。ハモキンを待つのが面倒だったから仕留めただけだしな。どうしてもって言うなら、こいつを手土産にそっちの集団と合流させて欲しい」


「わかった。強い戦士、俺達歓迎する。でもその前に、獲物捌きたい」


「おう、手伝うよ」


 心臓が動いている間に血抜きを済ませないと肉が臭くなるし、下手に内臓を傷つけたりしたらそもそも食えなくなっちまう。俺はハモキンを手伝って手早くイノシシを処理すると、肉を担いだハモキンに連れられて森の中を歩いていった。


「それにしても、エド何処にいた? 俺全然気づかなかった」


「へっへっへ、俺はこう見えて割と強いんだよ。まあ純粋な力比べとかだと大したことねーんだけどな」


「力無いのに強い? むぅ、よくわからない」


「力だけが強さじゃねーってことさ」


 何故か腰蓑しか身につけていないハモキンの上半身は、引き締まった筋肉に覆われている。俺の体も別にたるんでいるわけじゃないが、新たな世界に来たばかりなので正直大した筋肉はついていない。


「俺からすると何でハモキンが服着てねーのかの方が不思議なんだが……何でだ?」


「俺達の体、森で採れる特別な草や果汁を生まれた時から擦り付けてる。おかげで虫よってこないし、小さな怪我すぐ治る。


 服を編んで同じ事できるけど、服はすぐ破れる。大きさ変わると着られなくなる。手間かける割に合わない」


「あー、なるほど。そりゃまあそうだな」


 確かに生身の体ならすり切れてボロくなることもなけりゃ、サイズが合わなくなることもない。この森で生まれ、ここで生きることに特化した人達の知恵ってところか。


 と、そんな雑談をしながら歩き進むと、程なくして少し開けた場所に出た。正面が広く切り開かれ、奥には大きめの洞窟。集落と言うにはいささか寂しい感じではあるが、間違いなく何人もの人が暮らしている痕跡がある。


「ここが俺達の拠点。さあ、入ってくれ」


 いい笑顔を浮かべたハモキンに招かれ、俺は洞窟の中へと足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最悪な伝染病来たな笑 ティアまで「目覚め」てしまって……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ