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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一一章 不器用勇者は壺を割る

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省略してもいいと言われても、全部見ないのは落ち着かない

 その後、俺達は結構な時間をかけて平原の迷路を抜けることに成功した。といっても結局道から押し出されるような罠や魔獣の類いは存在しなかったので、時間さえかければ誰でも抜けられるようにできていたようだが。


 とはいえ、時間をかけるということは体力と集中力を消費するということだ。特に長時間「旅の足跡(オートマッピング)」とにらめっこをしていた俺は、頭痛とは言わないまでも軽い頭の重さを感じつつも迷路の先にあった一本道を歩き……そして遂にその最奥へと辿り着く。


「……え? 何これ?」


「台座、か?」


 俺達の前に現れたのは、俺の胸の高さくらいまである石製の台座だ。斜めに切り出された表面には手のひらほどの大きさの出っ張りがあり、ここを押してくれと激しく主張している。


「他に何も無いし……押すしかないわよね?」


「いや、待てルナリーティア」


 ボタンに手を伸ばすティアを止め、ゴウが台座の背後に回り込む。それに合わせて俺も覗き込むと、そこにはこっそりと壺が置かれていた。


「フフフ、やはり壺があったか!」


「うわ、良くわかりましたね」


「まあ、そこは長年の勘というやつだ。どれ……」


 ニヤリと笑ったゴウが、壺を手に取り地面に叩きつける。するとパリーンという小気味よい音が鳴り響き、破片の中から輝くメダルが飛び出した。


「お! これはいいものだ」


「あー、それ前にも出てましたよね。それって何なんですか?」


 ゴウが手にしているそれは一見すると金貨のようだが、通常の金貨とは意匠が違う。だがこれまでの旅の間で何度かゴウが同じものを手に入れているのを見ているため、世界中に同じものがあるらしいというのはわかっている。


「これか? 俺にもよくわからんが、これを集めて城に持っていくと、便利な魔導具なんかと交換してもらえるのだ」


「? 王様が集めてるの?」


「そうだとも言えるし、そうでないとも言える。世界中どの国の城に行っても交換してくれるから、特定の誰かが集めているというよりは、王家が集めているという感じなのだろうか? それ以上のことはわからんし、考えたこともない」


「ふーん。王様の間で流行ってる美術品みたいなものなのかしら?」


 拾ったメダルを鞄にしまい込むゴウに、ティアが軽く首を傾げながら言う。


「かもな。さ、そのメダルも気になるけど、それより今は……」


「あ、そうよ! ほらゴウさん、ボタン押して!」


「うむ、そうだな」


 俺達が改めて気を引き締めるなか、ゴウがゆっくりと大きなボタンに手をかけ、押し込んでいく。すると石製のボタンはズズッという音を立ててへこんでいき、完全に押し込まれた瞬間。


「うおっ!?」


「これは……っ!?」


 不意に目の前の景色が歪み、次の瞬間には目の前から台座が消えていた。俺が慌てて「旅の足跡(オートマッピング)」を調べると、どうやら一番最初の主道から脇道に入った場所へと戻ってきたようだ。


「どうやら最初の道に戻ってきたみたいですね」


「よかったー。ならあの迷路を引き返さなくて済んだってことね」


「だな。それに分岐を全て調査し終えているから、もう一度入る必要もない」


「え、それもし最短経路で進んでたら、もう一回あの迷路に入るつもりだったってこと?」


「そうだが?」


 心底嫌そうな顔をするティアに、ゴウがさも当然と言わんばかりの表情でそう答える。その場合はここに戻ってくるまでの時間がずっと短かっただろうから、トータルでは大した差はないはずだが……いや、あのボタンが一度しか押せないなら、二度目は徒歩で戻らないといけないのか? だったら確かに最初に全部回るのが正解だったんだろうけど……


「……ま、まあそうならなかったんだからいいわ。でも、そうなるとあのボタンって何の意味があったのかしら?」


「多分だけど、あの突き当たりにあった木の柵が消えるとかじゃねーの?」


「うわ、ありそう! でもあの柵、確か二つあったわよね? ということは……」


「最低でもあと一つ、同じボタンが脇道のどれかの先にあるんだろうな」


 この主道から分岐していた分かれ道は、全部で七つ。いきなり当たりを引いたとなると、次で突端はなかなか厳しそうだが……


「ガッハッハ! 二人とも何を言っている! たとえ次の分岐の先にボタンがあろうとも、どうせ全部回るんだから同じではないか!」


「……ですよねぇ」


 まあ、うん。ゴウならそう言うとわかっていた。じゃなかったら何も無いのが見えてる迷路を完全踏破なんてしないだろうし。


「とは言え、先ほどの約束通り話は聞くぞ? 俺はそうしたいと思っているが、二人はどう思う?」


「脇道が七つだったから、四つまで調べて完全に何もなかったらそのまま先に進みたいわね。そのくらいが妥協点かしら?」


「俺としては、全部調べる価値もあると思う。どう見ても特殊な場所だから、もう一回入れる保証は無いってか、多分入れないと思うんだよ。なら食料とか回復薬とかの消耗品がヤバくならない範囲で調べ尽くすのもいいんじゃねーかな」


「そうか。俺はさっきから言っている通り、最初から全部を調べるつもりでいた。ならばまずは全員の総意である四つ目の脇道までは完全に調べ、そこでまた話し合うのはどうだろうか?」


「私はそれでいいわ」


「俺も大丈夫です」


「よし、ではそうしよう! ふふふ……仲間と方針を話し合うというのはいいな」


 こっそりと、だが嬉しそうに笑うゴウに、俺とティアも顔を見合わせ笑う。そうして俺達一行は、残りの脇道へと次々に突入していった。


 水位を調整することで浮かぶ木の橋を渡る道や、光を当てる方向を変えることで動いた影が道になって進めるようになる道など、分岐の先はどれもこれも手間がかかる……だが時間さえかければ危険ということもなく突破できるような試練。


 俺達はそれを次々に突破し、四つめで見事ボタンのある終点を引き当てはしたが、これだけ手の込んだ仕掛けがあるなら何かあるかも知れないと言うことで、結局俺達は全ての脇道を完全に踏破し尽くした。


「長かったわね…………割と面白かったけど」


「だな。最初はあんなに面倒そうにしてたのに、途中から率先して謎解きしてたもんなぁ」


「むーっ! そういう意地悪なこと言わないの!」


 ペシッとティアにおでこをひっぱたかれながら、俺は通ってきた道のことを考える。


 諦めなければいつか必ず突破できる道。それは振り落とすための試験ではなく、乗り越えさせるための試練。なるほど確かにこれは「試練の山」だ。目立った危険もなかったし、もし一般開放されてたら普通に親子連れが遊びに来たりするかも知れない。


「ただまあ、全部道を外れるだけでスゲー簡単に達成できるって状況だったのが気になったけどな。道から出たら結局どうなるんだろうな?」


 水辺の脇を大きく迂回してしまえば仕掛けそのものを完全無視できるし、影の道だって別に影が無くても地面が消えるわけじゃねーから、そのまま歩けば普通に進めた。どれもこれも「道を通る」ということにこだわったからこそ苦労したわけで、ただ進むだけなら散歩と言えるようなものでしかなかっただろう。


「ガッハッハ! それを気にしたところで意味がないだろう。どのみち俺は道を外れたりしないからな! それに……」


 心底上機嫌なゴウの前には、一つの壺が置かれている。木の柵が消えたそこに手を伸ばすことに何の支障も無く、ゴウがゆっくりとこの「試練の山」で最後だと思われる壺を手に取る。


「さあ、これで終わりだ!」


 高々と掲げた壺を地面に叩きつけると、今回もまたパリーンといういい音が当たりに響く。するとその中から「真の勇者の証」が――出てこない。


「あれ?」


「あ、見て! 道が!」


 首を傾げるゴウの前で、行き止まりだった道に先ができる。


「何か、まだ終わりじゃないみたいですね」


「そ、そうだな……ゴホンゴホン。では改めて行くか!」


「ええ!」


「はい」


 何ともばつが悪そうな顔で咳払いをするゴウに続いて、俺達は今度こそ最後の試練が待っていそうな道を進んでいった。

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― 新着の感想 ―
ち・い・さ・な・メ・ダ・ル!!!
[良い点] 魔法が使えない勇者で、ルーラもないから、小さなメダルを集めてるのがメダル好きの王様ではなく、王族なんですねー。この作品独自の設定がいいですね。
[一言] 子供の忍耐力を養うには良いと思いますが 親御さんが途中で諦めそうですね
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