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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第七章 聖女の勇者と終わりの道化師

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足りないのは当然困るが、有り余るのもやっぱり困る

「さ、それじゃ今度こそ『勇者顛末録(リザルトブック)』を読むか!」


「おー!」


 心機一転空気も変えて、俺はティアを引き連れテーブルの方に行く。そこにはちゃんと「勇者顛末録(リザルトブック)」が出現しており、いつも通りにそれを手に取りページを開く。


「あ、駄目! 読んじゃ駄目よエド!」


「へ!? 何だよいきなり?」


「乙女の秘密をこんな形で目にしたら駄目に決まってるでしょ! エドのエッチ!」


「えぇ……?」


 今回もまた勇者の来歴……リーエルの少女時代の話なんかを読んでいたら、突然ティアが俺の手から「勇者顛末録(リザルトブック)」を取り上げてしまった。戸惑う俺の顔の前では、ティアがピコピコと耳を揺らしながら鼻息を荒くしている。


「何だよ、レベッカの時は気にしなかったのに……」


「何か言った?」


「いやぁ? 何も?」


 じろりとティアに睨まれて、俺は慌ててそっぽを向いて口笛を吹く。そのまましばし気まずい時を過ごしていると、ようやくにしてティアが「勇者顛末録(リザルトブック)」をテーブルの上に戻してくれた。


「はい、ここからなら読んでいいわよ」


「一体何が書いてあったんだよ……」


「だーめ! こういうのは本人の口から聞かないと駄目なの! もし私に隠れてこっそり読んだりしたら、エドの背中に『エロスの化身』って落書きするわよ?」


「うっは、それは勘弁……わかった、前のページは読まないことにする」


 社会的に抹殺されるというとてつもなく恐ろしい刑罰に震えながら、俺は許可の出た部分に目をやる。そこはちょうど俺達が魔王を倒した直後であり、同時にこの「勇者顛末録(リザルトブック)」の最後の部分でもあった。





――第〇〇七世界『勇者顛末録(リザルトブック)』 終章 安寧と戦乱


 かくて魔王を打ち倒した勇者リーエルとその一行だったが、共に戦った二人の仲間は激しい魔王との戦いの末に帰らぬ人となっていた。そのことに世界中の人々は嘆き悲しみ、彼らは勇者にして聖女であるリーエルと共にアーレーン教の聖人として認定され、その姿と名は語り継がれていくことになる。


 なお、魔王という共通の敵を失うと共に魔王討伐のための大軍を所持していた大国がその後いくつかの戦争を始めたりもしたが、勇者リーエルの号令の下アーレーン教の教徒が団結。治安維持活動に従事したことで戦乱の規模は抑えられ、以後五〇年に渡って世界は緊張を裏に隠しながらも一応の安寧を得ることとなる。


 大量の血を流してようやく平和を勝ち取ると、人は自らそれを破るように他者の血を求めてしまう。そんな人の在り方に、晩年のリーエルは「これなら私の知っている魔王の方がよほど善良だ」と皮肉めいた言葉を口にしたという話があるが、その真相が当人から語られることはついぞ無かったという。





「あー、こいつは……」


 内容を読み終わり、俺はなんとも言えない渋顔になる。そうか、人類側を盛り立てすぎると、魔王を倒した後に軍事力が有り余って戦争になるのか……いやでも、だからって魔王を倒すには強い援軍はあった方がいいし、かといって魔王を倒した後に俺達が暗躍して軍をどうにかするってのも違うしなぁ。


「反省点はすぐに思いつくけど、どう反省していいのかがわからないわね」


「まあ、これはあれだろ? その世界に生きてる奴らの選択なんだから、そこまで俺達が責任取るって考える方が傲慢ってことでいいんじゃねーかな?」


「微妙にスッキリしないけど、そうよね……」


 俺達はあくまでよそ者で、俺達が去った後の世界情勢まで自分の責任として背負い込むのは思い上がりも甚だしい。が、これから先はこういうこともあるだろうというのを念頭に置いて、帰る前にちょっとした助言くらいは残したりしてもいいかも知れない。


「それじゃ、後は新しい能力を……って、そうよ! ねえエド、さっきの話だとエドの追放スキルって魔王の力なのよね? 何でそれとそっくりな力が私にも使えるの?」


「…………何でだろうな?」


 ふと振り返って問うティアに、俺もその場で首を傾げる。言われてみれば、どうしてティアが俺の追放スキル……取り戻した魔王の力に近いものを使えるのかはまるっきり理由が思い当たらない。


 魔王の力を振るうには、魔王の魂が必要だ。ならばこそ他の誰かに気軽に力を貸し与えるなんてことはできねーし、魂が一つしかない以上実質俺以外には使えないはずだ。


 ならば何故ティアがそれを使えるか? 可能性として最もあり得るのは……


「…………いやいや。いやいやいや。それはねーだろ。心当たりもねーし」


「何? 何か思いついたの?」


「うーん、思いついたって言うか、絶対に無い可能性が閃いたというか……」


「何よ? 教えて?」


「……………………魔王の力を使うには、魔王の魂が必要だ。で、生きてる状態の魂が混じることはない。混じる可能性があるのは魂が肉体から離れた時と、新たな肉体に魂が宿る時、つまりは死んだ時と生まれる時だな。


 で、俺達は二人とも生きてるんだから、必然可能性があるのは俺とティアの間で新しい命が生まれる場合だけってことになるんだが……」


「……っ!? エドのエッチ!」


「ぐはっ!?」


 顔を真っ赤にしたティアの鉄拳が、俺の鼻先に思い切り炸裂する。思わず目から火花が出る想いだったが、それでもティアの拳は止まらない。


「馬鹿! 変態! スケベ! まさか私が寝ている間に変なことをしたんじゃないでしょうね!?」


「痛い痛い! 違うから! ねーから! 思いつく可能性としてはこれしかねーけど、何もしてるはずがねーから違うなっていう矛盾というか、そういうのに気づいたって話だから!」


「……本当? 嘘だったら私、本気で怒るわよ?」


「本当だ本当! 誓ってもいい!」


 ポコポコと振るわれるティアの拳がその勢いを失い、ようやくにして俺の顔に平穏が戻る。


「……わかった。信じるわ。いえ、エドがそんなことするはず無いってわかってるけど、でも実際力が使えるわけだし……本当にどういうことなの?」


「さあなぁ? てか、いくら魔王としての記憶を少しばかり取り戻したからって、わかんねーことなんていくらでもあるぜ? 全部の力と記憶を取り戻せればまた違うのかも知れねーけど」


「そっか……じゃあこれからの行動方針は、行く先々の世界で魔王を倒して力と記憶を回収していくってことになるのかしら?」


「そうだな。とりあえずそうするつもりだ。勿論旅の途中で別のいい案が浮かべば都度方針転換も考えるし、要は高度の柔軟性を維持しつつその場の状況を鑑みて臨機応変に対応するって感じで」


「……? それは思いついたことを適当にやるのとは何か違うの?」


「違うだろ! 主にかっこよさとか説得力とかが!」


「……………………そうね」


 パッと手を置いた水晶玉を光らせたティアが、そのまま新しい扉の方へと歩いて行ってしまう。俺は慌ててその背を追うも、何となくティアの態度が冷たい気がする。


「え、何その塩対応。俺なんか変なこと言った?」


「べっつにー! ただ……フフ、エドはやっぱりエドだなーって思っただけよ」


「……それは褒められてるのか? もしくは馬鹿にされてる?」


「エドにしてるのよ」


「動詞!? 急に俺の名前を冠する造語が発生してる!?」


「大魔王なんだし、そのくらいあってもいいでしょ。ほら、早く行きましょ?」


「待てって! せめて師匠の剣の手入れくらいさせてくれよ! ほら、ティアさん! 取りだしてプリーズ!」


「えー、仕方ないわねぇ……はい、どーぞ」


「おぅ、ありがとな!」


 ティアの「共有財産(シングルバンク)」で取りだした「夜明けの剣(ドーンブレイカー)」を受け取り、俺はまだ大して使い込んでいない鍛冶場でしっかりと手入れをしていく。それにしても流石師匠の剣だ。ちゃんと魔王を斬れたし、刃こぼれなんかもしてない。


「よーしよしよし。じゃ、すぐ済ませるからちょっと待っててくれよな」


「急かしたのは私だけど、別に急がなくてもいいわよ。そういう作業を見てるの、嫌いじゃないしね」


 コロコロと表情を変えるティアが、今度は機嫌良さそうに俺の作業する姿を見つめてくる。はぁ、やっぱり女心はわかんねーなぁ。まあ機嫌がいい分には構わねーけど。


 剣の手入れは慣れたものだが、雑な手入れは剣士の名折れ。上機嫌なティアの鼻歌を聴きながら、俺はしっかりと「夜明けの剣(ドーンブレイカー)」を磨き上げ、その刀身に夜明けの輝きが戻ったのを確認してから、ティアと共に新たな世界の扉をくぐるのだった。

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― 新着の感想 ―
ティアが魔王の力を使えるのは魔王となったエドを倒すためだと思ったのだが、まさか子供の話が出てくるとは思わなかった。
恋愛感情あったとしても同意なく、しかも(多分)初めてならそりゃ怒る それだけ信じてるってことでもあるので将来的にはラブラブになってほしいところ! そういえばワッフルやドーベルも魔王としてのエドを見た…
ティアからの拒絶というよりも同意無しでそういう行為は許さないってことでしょう まだ希望はある…うん
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